ユウとマオのお出かけ 3
たこ焼きを食べた後は大きな歩道橋を通って進む。
隣には上に有名な球体のあるテレビ局を通っていた。
「わぁ、ここ有名なテレビ局だ!
中に芸能人とかいるのかな?」
「収録はしておるだろうからおるんじゃろう。
まぁ、妾達もアンダーグラウンドの世界では芸能人なのかもしれぬぞ」
「たしかに!
でも僕たちは堂々と顔を出してるわけじゃないからね。
細々とやっていこうよ」
「そうじゃな。
おお、ここじゃな」
2人は目的地であるダイバーシティにたどり着く。
「この中を通っていくんだね」
「楽しみじゃのう」
2人はエスカレーターを登り真っ直ぐ進んでいく。
フードコートに入ったら左に進み外に出ると目的のものが見つかる。
「うわ〜これが等身大のロボットなんだ!」
「とても大きいのう。
こんなものが動いてきたらとてつもない戦力じゃろうな」
「ゴーレム技術とか使えないのかな?」
「あれはコアで制御できる大きさが決まっておるからのう。
各部位をコアで制御していっても回路が複雑になりすぎて無理じゃろうな」
2人で散々騒いで写真を撮っていく。
ついでに帰り道で最上階まで行きプラモデルとニッパーを買っていく。
配信ネタ用に使うためであった。
「どっちが早く作れるかの競争ということで」
「うむ、いい配信ネタになりそうじゃ」
ダイバーシティを外に出て再び歩道橋を渡る。
最後の目的地はヴィーナスフォートだ。
大型のショッピングモールなのだが、2人の目的は違った。
途中で連絡通路らしいのだが車の飾ってある場所を通っていった。
「わぁ、なんか格好良い車がいっぱい飾ってある!
唯さん達が使ってるものとは全然違うね」
「これは海外のレースに出るための車じゃな。
通常に使うものとは違う特別仕様の車らしいぞ。
詳しく見たわけではないがの」
「へぇ〜そうなんだ」
2人は雑談しながら先に進むと目的の観覧車が見えてきた。
「普通の方でいいよね?」
「透明観覧車などごめんじゃ。
普通の観覧車にして欲しいのう」
2人は入場券を二枚買っていく。
大人と子供を一枚ずつ買ったのは内緒の話だ。
「うわ〜少しずつ動いているよ!」
「周りの景色が見えるのはいいのう」
半分ほどの高さまで来た時に丁度陽が沈み始めていた。
「夕陽、綺麗だね」
「海と合わせても幻想的じゃのう。
向こうではこのように日を眺める事もなかったからのう」
「・・・僕は向こうのことをマオに色々と聞かされても嫌いになったわけじゃないんだ。
汚い大人がいて、利用する人たちがいたのも分かる。
でも、旅をしている人達の中にもいい人はいっぱい居た。
だけど帰りたいとは思わないんだ。
のんびりとしたマオとの日々を失いたくない。
向こうに戻ってまた担ぎ上げてマオと引き裂かれたくない。
それだけの理由なんだけどね」
「妾とて同じことよ。
向こうに置いてきた部下達の事は気になる。
戻ってアドバイス出来るならしてやりたい気持ちもある。
でも、それはまたこちらにすぐに戻ってユウとの生活を続けられることが条件じゃよ。
それこそ今日のお台場のように、日帰りで帰れることじゃな。
その保証が確実にされない限りは妾とて怖くてこの世界から動けんよ」
2人は向かい合わせに座っていたがユウが動いてマオの隣にくる。
「こ、これ。
あまり動くと揺れてしまうではないか」
「じゃあ、降りるまでこのままだね。
マオ、ずっと一緒だよ」
「うむ、ずっとずっと一緒じゃ」
そのまま2人は肩を寄せ合ったままだったが、やがてゴンドラは下に到達した。
2人は照れ臭そうにしながらも手を繋いで観覧車を降りていく。
なんだか係員のお兄さんがいい笑顔をしているのは気のせいだろうか?
「今日はたくさん歩いて疲れちゃったね」
「最後に夜景を見て帰ろうかのう」
2人はまた歩道橋を渡ってアクアシティのデッキに来た。
昼間と違って完全に陽が落ちているが、夜の灯りが夜景を美しく彩っていた。
「綺麗だね、本当に綺麗」
「うむ、夜でも美しいのじゃな」
こうして十分にお台場を堪能した2人は帰路についていった。
この日の体験は後の配信に活かされることであろう。
しかし、それ以上に大切な思い出を2人は手にしたのだった。