リーブ先生がデビューを決めた日〜過去編11〜
「リーブ先生が状況を理解した上で了承してくれてよかったわ。
それじゃ、二人はこれに着替えてね」
そう言って里中が渡してきたのは2人がこの世界に来て最初に着ていた服装だった。
ユウは黄色いシャツとズボンに青い衣を上から着て、更に黄色のマントを着けていた。
マオは黒く格式高いドレスという装いである。
「これでどうかしら?」
里中がリーブに尋ねると彼は既に絵を描き始めていた。
「いや〜里中さんズルいですよ。
こんなのそのまま絵にすれば良いんだから誰にでも出来る仕事じゃないですか」
「でも、動かすところまで全部1人で出来る子は珍しいでしょ?
貴方この前自慢してたじゃない。
自分の理想を詰め込んだVを作るために一から全部勉強したって」
「言いましたし実際作ってみて上手くできたんですけどね。
一つだけ問題が起こったんですよ」
「あらぁ、何かしら?」
リーブの言葉に里中は興味深げに尋ねる。
「中に入る子が確保できていないんですよ。
何処かにいないですかね?
萌え声でVやってくれる女の子」
「うーん、真面目な話をすると知り合いじゃなくて一から探すってなると大変よ。
その子の事なんて実際に企画が動いてみないと分からないわけだし、デビューまでは猫かぶってて大暴走なんてされたら、その娘だけじゃなく貴方までこの業界で仕事出来なくなるわよ」
里中の真面目な回答にリーブはため息を吐く。
「は〜そうですよね。
何処かに信頼できる子いないかなぁ?」
「私が知る限り、リーブ先生が信頼できる人は1人いるわね」
「え、誰ですかそれ?」
リーブが問いかけると里中は意地の悪い笑みを浮かべた。
「それは貴方よ。
自分自身なら一番信じられるし意味不明な行動も起こさなそうじゃない。
貴方トークも上手いし」
「た・・・確かに一理ありますけど。
でもボイチェン使うのもなぁ」
「あら、そのままの声でやれば良いんじゃないの?」
「自分の理想からおっさん声するのを許容しろと?」
「案外新しい世界が広がるかもしれないわよ。
やってみたら」
「・・・考えておきます」
結局のところ、この時試しにと描いた絵が2人そのままの姿が採用されてデビューの話が動き出すことになった。
余談であるがこの時の里中との言葉が心に強く残ったリーブは本当に自分自身が中に入ってデビューしたという。
最初は可愛い見た目とおじさんの声という矛盾が気持ち悪がられて敬遠されていたが、1時間も見ると慣れるらしく軽快なトークも合わさって個人勢ではかなりの人気者になるのであった。