#とんでも危機一髪 1
急に冷え込んで冬の季節を感じるようになったある日のこと……ユウとマオは社長である里中に呼び出されていた。
「こちらは準備ができたぞ。
ユウの調子はどうじゃ?」
「へへーん、僕も準備完了だよ!」
マオは子供用のダッフルコートに身を包み、それだけで十分に暖かそうな格好をしている。
一方のユウはスカジャンにミニスカート、黒のタイツを履いた甘辛コーデとなっている。
「ふむ、やはりユウはそのような格好がよく似合うのう」
「こっちの世界にはお洒落な服がいっぱいあるからね。
折角来たんだから色々と試してみないと」
「そうじゃな……妾の場合はもっぱら子供服ばかりじゃが、それも種類が豊富にあるから助かるのう」
「寧ろ子供服の方が色々種類ありそうまであるよね。
この時期でないと着れない服も多いだろうし」
「多少いき過ぎた服でも子供だからで済ませてもらえるのは特権じゃのう」
「そうだね。
それじゃ、もうそろそろ出ようか。
お喋りは向かいながらでも出来るしね」
「うむうむ。
カイロも鞄に入れたから寒くなったら言うのじゃぞ」
「耐性を通常に戻したら要らないんだけどね」
「それではこの国の四季を完全に楽しめぬから仕方ないのう。
それにあまり人間離れした行いも良くないであろうからな」
「そうだねぇ。
まぁ、耐性はいつでも戻せるし今はこの寒さを楽しむとしますか」
こうして2人は仲良く手を繋いでくじよじの事務所に向かった。
♢ ♢ ♢
「社長、来たよ!」
「一体何の用なのじゃ?」
そう言いながら扉を開けると里中が満面の笑みで立っていた。
「いらっしゃい2人とも。
遂に思い出のアイテムが入手できたから2人に真っ先に知らせて遊んでもらおうと思ったの」
「え?何かのゲーム」
「そうよ〜とりあえずスタジオの方にいきましょ」
里中の先導によってスタジオに移動する2人。
そうして辿り着いたスタジオの中央には一台のアーケードゲーム機が置かれていた。
「あれが見せたいもの?
っていうか、社長アーケードの筐体買ったの?」
「流石に長期間置くことは難しいから見つけたのをレンタルしてきただけよ。
このゲームはね……私の青春なの」
「そんなに思い入れのゲームなんじゃな」
「そうよ……一家の大黒柱が頑張って家に帰宅する超大作よ」
「え……急にショボく見えてきたんだけど」
「本当にそんなものが思い入れのあるゲームなのかえ?」
「もちろんよ。
かなり面白いゲームだからやり込んでしまったわぁ……ワンコインでクリアーできるくらいに」
「それはやり込みすぎでは?」
「ゲームセンターも商売あがったりじゃな」
「まぁまぁ、気にしない。
それより2人も楽しんでちょうだいな。
配信しながら」




