スタジオ収録前に
ここはくじよじが所有するスタジオ。
この場所では個人では所有が難しい機材の数々があり、専用のスタッフもいる為に大型オフコラボや、くじよじが主催する番組収録で使用される場所である。
他にも販売用の歌やボイスの収録にも使われるため使われない日の方が珍しいかもしれない。
そんなスタジオに集まったのはユウ、マオのコンビと姫花の3人……そこから少し離れた場所でビクビクしている新人のメルであった。
「メルは何故に距離を取っておるのじゃ?」
そんなメルの様子を見たマオが当然とも言える疑問を投げかけた。
「わ、私のような新人が大先輩の3人の横に並ぶのは恐れ多いですよ」
「それを言うと私もそこまで大差ないんだけど。
ユウ先輩もマオ先輩も優しいから気にせずにこっちに来なさいよ」
「そうだよ〜僕たちは怖くないからこっちにおいでよ」
「う……わ、分かりました。
よろしくお願いします」
そう言ってメルは3人の輪の中に入る。
だが、それでも彼女は落ち着かない様子であった。
「そんなに固くならんでもよかろうに。
その調子では収録もままならぬぞ」
「ひええええ、そうなんですけど無理なんですううう。
私、誰かと過ごすってことが殆どなくて……モニカやバスちゃんともやっと打ち解けてきたぐらいで」
「でも、一緒に今から仕事する仲間なんだからもう少し何とかならないかな?
その調子じゃ最後まで持たないよ?」
「うう……そうですよね。
何とか頑張ります」
「そうそう!
この仕事してたらこんな機会はたくさん来るだろうから今のうちに慣れておきなさいよ」
3人がフォローして宥めることでメルの緊張もややほぐれてきたようだ。
さて……今回4人が呼ばれたのはゲーム会社の方から自分達の作った新作ゲームをプレイして欲しいという依頼があったからである。
これは案件と呼ばれる企業からのお金が発生する立派な仕事である。
このような案件が来るというのはお金以上に宣伝効果のあるタレントとして認識されるという点で非常に大きな意味を持つ。
この案件に新人のメルが呼ばれたのは所謂バーターと言うオマケ扱いであるが、今回紹介するゲームに適性を持っていると里中が判断して推した結果であった。
そうして選ばれた4人が今回遊ぶゲームとは……
『ミュージカル侍???』
スタッフから手渡されたゲームのタイトルを見て全員が疑問符を浮かべる。
タイトルからは全く内容が想像できないゲームである。
「簡単に説明するとVRの音ゲーです。
こちらのスティック型専用コントーローラーを装備して遊びます。
曲が始まるとリズムに合わせて前方から敵が襲いかかってくるのですが、その敵に斬る場所と方向の指示が出ますので、その指示に合わせて敵を斬ります。
その時に出るSEが曲のリズムとなっていますので、襲いかかってくる敵をテンポよく斬り倒していく……ジャンルとしては体感型リズムゲームですね」
「それすっごく面白そう!
収録前に試しに遊んでみていい?」
身体を動かすのが好きなユウが早速食いつく。
こうして収録前に4人で試しに遊んでいる内にいよいよ本番の時間となった。




