担当絵師との出会いと素性〜過去編9〜
ユウ、マオ、唯の3人が事務所内でのんびり話していると里中が1人の男を連れて入ってきた。
「3人とも待たせちゃって悪かったわね。
この人が貴女達のモデルを作ってくれる田中リーブさんよ」
「田中リーブです。
よろしくお願いします」
里中と同じ30代半ばといった見た目をしている田中リーブ。
髪は短く切りそろえられておりヒゲもなく、私服ではあるものの清潔感があり初対面から受ける印象としては中々に良いものだろう。
「こんにちは、ユウです!
よろしくお願いします」
「妾はマオじゃ。
今回はよろしくお願いしますぞ」
「2人のマネージャーをしている里中唯です。
よろしくお願いします」
3人は各々、挨拶をする。
「挨拶も終わったみたいだから説明するわよ。
田中さんはメジャーデビューはしてないけど漫画家さんなの。
腕は私が保証するから安心していいわよ」
「里中さんとは昔からの付き合いですからね。
満足いくものが出来るように頑張りますよ!」
里中の言葉にユウは目を輝かせた。
「漫画家さんなんだ!
僕、こっちに来てから始めて漫画読んだけどとっても面白くてすごく好きになっちゃんだ。
どんな漫画を描いているんですか?」
「うむ、妾も読んでいるが様々なジャンルがあって良いものじゃ。
どのような物を描いているか気になるのう」
「確かに漫画家の先生とお会いする機会なんて中々無いですからね。
どんな作品を描いているのか気になります」
3人は其々に興味を示していた。
「うーん、漫画はちょっと事情があって見せられないかな。
でも、自分の描いたイラストならこのタブレットにデータが入ってるから見せてあげるよ」
リーブはそう言うと手に持っていたタブレットを操作して3人に見せた。
「わぁ、すごーい!
僕もこんな風に絵を描いてみたいな!!」
「本当に可愛らしいイラストですね。
素人の意見ですけど色の使い方とかも良く見えて素晴らしいと思います」
ユウと唯の2人は揃ってリーブのイラストを褒めるがマオはそれを見て首を傾げた。
「あら、マオちゃんは気に入らないかしら?」
「いや、良く出来ておると思うぞ。
そうではなくて最近この絵を見たような気が・・・何処じゃったかな?」
マオがそう言うとリーブの顔色が少しずつ悪くなっていく。
「い、いや〜君みたいな小さな子が自分の作品を見たことは無いんじゃないかな?
商業デビューはしてないし」
リーブが誤魔化すためにそう話したのが裏目に出てしまった。
マオはその言葉を聞いてポンと手を打つ。
「商業デビューしていないで思い出したぞ!
お主、エロ同人作家の田中リーブ先生じゃな!!」
マオがビシッと指差すとリーブは手で顔を覆った。
「こんな小さな子に見抜かれるとは・・・女の子に対する仕事だからあんまりバレたくなかったのに」
今までニヤニヤしながら一連の流れを見ていた里中はリーブの肩にポンっと手を置いた。
「まぁ、いいじゃないの。
隠し事して一緒に仕事するよりは全部バラしちゃった方が気が楽よ。
彼は確かにその方面の作品を描いているけど、その世界で大成功している超一流の漫画家よ。
私がとても信頼している人物なの。
偏見は捨てて任せてみてくれないかしら?」
里中が2人に聞くとユウもマオも頷く。
「僕は全然構わないよ。
こんなに綺麗な絵を描く人だもん。
エロドージンっていうのもよく分からないしね!」
「妾はもちろん異論はないぞ。
かの有名な田中リーブ先生に担当して貰えるなら願ったり叶ったりという奴じゃ。
よろしく頼むぞ」
リーブの素性にも特に偏見を持たない2人を見てリーブのやる気にも火がついたのだろう。
彼は改めて里中に向き合うと
「里中さん、この仕事必ず満足のいくものに仕上げてみせますよ!」
と、自信満々に答えるのであった。
マオはこの世界に驚くべきスピードで順応しております。