恐竜国取合戦 決戦編17
2023/06/10 誤字修正受け付けました。
いつもありがとうございます。
真正面から新生魔王軍の陣地を攻撃する修羅とは別にモニカは裏を調べに行っていた。
表と同じように金属で出来た頑強な城壁は隙が無いように見えた。
「やっぱり設計ミスで何処か抜けてるとかは無いよね……って、あれ?」
何処かに見落としは無いかと丹念に探っていると城壁下の部分に僅かな隙間を見つけた。
「これってもしかして匍匐前進なら入れる?」
モニカは自分の考えが正しいか確かめる為に地面に這いつくばって隙間に身体を捻じ込んだ。
「あ、これイケるっぽ……」
上半身が隙間に収まった時であった。
ガチャン!
と大きな音を立ててモニカの身体はトラバサミに挟まれて動けなくなった。
「え?嘘でしょ?」
現実では匍匐前進で進む程度の高さしかない場所ではトラバサミというものは作動しないだろう。
だが、ゲームならではの仕様のお陰で隙間の天井を無視して作動したトラバサミに困惑するモニカ。
彼女の不幸はこれだけでは済まない。
「とにかく解除を……って、這いつくばってるからトラバサミにコマンドを仕掛けられない!?」
通常、トラバサミに引っかかった時は慌てずにしゃがんでアクションを起こし時間をかけて解除する事で動ける事が出来るようになる。
しかし、現在這いつくばっているモニカの視点は動かずトラバサミを視認する事が出来ない。
当然ながらこれでは解除することも出来なかった。
更に追い討ちをかける事に彼女は気付いてしまった。
「あれ?私っていま下半身だけ外に出ている状態ですよね?
こんなエロ同人みたいな状況やだーーー!
屈強な恐竜達が来るに違いないよーーー!!」
NNSの仲間達に救助のコールを送るが返答はない。
それもその筈……仲間達は誰一人として余裕のある状況ではないのだから。
♢ ♢ ♢
三国教授が玉から取り出した恐竜はスピノサウルスだった。
ステゴサウルスのように背中に帆のようなヒレがある恐竜だが大人しいステゴサウルスとは似ても似つかない程に獰猛な大型肉食恐竜である。
個体によってはティラノサウルスにも勝ち得るだろう。
一方でユウはサイボーグ蜥蜴を降りる気は無かった。
持ってきているもう一つの秘密兵器を使えば確実に勝てるし拠点も壊せる……だが、ユウの中でこれはルールで禁止されていないだけの反則技という意識があった。
強さもそうだが……何よりも世界観が違う。
サイボーグ蜥蜴とその辺りはユウの中でかなり際どいラインではあったのだが、まだ蜥蜴の格好をしているのとワープは別であるが壁に張り付いて登れるというのは非常に面白い能力だった。
見た目が蜥蜴なので納得もできる。
そんな思いからユウは元々は輸送用として作られたというサイボーグ蜥蜴に乗って戦う事を決意する。
「そのままで良いみたいですね。
それでは行きますよ」
三国教授はスピノサウルスの手綱を握ると猛スピードで突進してくる。
普段知的なイメージからじっくり攻めてくると考えていたユウは、慌てて右斜め前にワープしてその突進を回避する。
「ふむ……完全に虚を突いたつもりでしたが。
やはりプレイヤースキルの差というものは如何ともし難いものですね」
「相手が僕じゃ無かったら……乗ってるのがこの子じゃなかったら……どちらが欠けていたら普通に押し込まれて不利になっていたと思うよ。
戦いでこんなに恐ろしいと思ったのは久しぶりだ」
「貴女にそう言われると重みが違って嬉しくなりますね。
こと戦いに関してはユウさんは大先輩です。
胸を借りるつもりで行きますので宜しくお願いしますね」
三国教授はそう言って再びスピノサウルスの手綱を強く握った。