恐竜国取合戦 決戦編16
2023/06/10 誤字修正受け付けました。
いつもありがとうございます。
ナコはバスの攻撃を回避しながら木材を集めてある物を作っていた。
現実では不可能な行為が出来るのはゲームならではというものであろう。
そして作ったもの……木のスロープをあちこちに仕掛けていく。
「ナコ先輩、何してはるんですか?
動きを阻害するなら柱や壁の方がええんとちゃいますか」
「上手くいけばいいかなって程度の考えっスからね」
「何を考えてるか分からへん時は気にせずにガンガン攻めるだけやわ」
そう言って再びカルボネミスを操作してナコを追い詰めるように動く。
木材を集める余裕も無くなったナコは全速力で逃げる。
それを見たバスは通常速度からスタミナを消費するダッシュ移動に切り替える。
あと少しで追いつくという所でナコは設置しておいた木のスロープの陰に隠れた。
只でさえ高速移動するカルボネミスがダッシュ移動に切り替えては小回りが効かない為、バスは木のスロープから飛び降りて振り返ろうと考えてそのまま真っ直ぐに突き進む……それこそがナコが思い描いていた展開だとは気付かずに。
スロープを登り切ってカルボネミスの足が宙を蹴ったその時、バスとカルボネミスは射出された。
そう……超高速で動いていたカルボネミスはバスの予想を遥かに超えた高さへと駆け上がっていった。
その姿は正に射出としか言いようが無いほどの勢いである。
「あっはーーーーーーーー!!」
とてつも無い飛距離を出して飛んでいくバス。
更に高さも出ている為に飛んでいった先が水場でも無い限りはカルボネミスは落下ダメージを喰らって死亡するだろう。
そうなると彼女は足を失った状態で見知らぬ森の中に放り出されることになる。
戦いが決着へと向かっている現状でバスの戦線復帰は絶望的であろう。
「これも勝負だから恨まないでほしいっスね」
ナコはそう言うと攻められているであろう自軍拠点へと駆け出した。
♢ ♢ ♢
マオが必死で防衛ラインを守っているが現状は芳しくない。
ティラノサウルスをスナイパーライフルで撃ちつづけるも大きな効果が得られていないからである。
それでもユウを信じて必死に防衛するマオに救援が現れた。
それはプロコプトドンに乗って戻ってきていたハニーである。
門への攻撃を修羅に任せて周辺を警戒していた富国はハニーに対していち早く気付く。
「助っ人外国人が来たようだな。
弟子も姿を現さなくて退屈していたところだ。
ここは俺に任せてもらおう」
富国はそう言うとこちらに向かっていたハニーの前に立ち塞がる。
「助っ人外国人よ!
俺と勝負をしないか?」
「お〜勝負ですカ?
今から戦うのも勝負だと思いますが」
「お互いにガチンコで勝負して時間をかけたくないだろう?」
「それはそのとーりでーす」
「ならばお互いに防具を捨てて素手の殴り合いで決着をつけようでは無いか!!」
「リアリィ!?」
「もちろん大真面目だとも。
お互いに死んで復活地点に戻られても面倒だろう?
だからお互いに気絶するまで拳で殴り合おうでは無いか」
ゲームの仕様上死んだキャラクターは復活地点に戻されて復活する。
ペナルティは持っていた装備、アイテムのロストである。
それらのアイテムは死んだ場所に戻り自分の死体から回収出来るのだが、これは自分以外のプレイヤーも行えるので、このようなPVPの場合は敵に回収されて全ロスする事も珍しくは無い。
これらの事は痛手ではあるが、言ってみれば物資を失うだけで自分たちの拠点にワープする事が出来るのだ。
そして、拠点に多数の物資を保管している現状では装備を失うと言う事は殆ど大した痛手では無い。
お互いに本拠地を攻めている以上、互いを殺して拠点で復活されるのは都合が悪かったのである。
「オーケー!
ナックルファイトで勝負ヨ!!」
そこまで読み切ったハニーは勝負を受け、ここに素手と素手をぶつけ合う熱い戦いの幕があがったのであった。