恐竜国取合戦 決戦編14
このゲームは本来PVPとして敵対する事は推奨していない。
何故ならば各地に協力して攻略すべきダンジョンがあり、そのダンジョンで手に入る報酬で挑める高難易度なボス戦があるからだ。
そうして苦労してボスを撃破して手に入るのは近未来の武器、防具、建築物のレシピである。
そのどれもが他とは一線を画す程に強力であるが、無制限に作れるようになるのではなく、このボス戦で得られる素材が必要であった。
そのために高天ヶ原では限られた資源で最硬の建築物を作って復活地点を守った。
NNSはボスに挑む労力を捨てて得た時間で物資の増強とゴーレム、ティタノサウルスの入手に当てた。
新生魔王軍が選んだのは武器や防具、建築物では無い第四の選択肢……乗り物であった。
このサイボーグ蜥蜴には他の生物に無い二つの特徴があった。
一つはヤモリのように壁に張り付き、垂直どころかネズミ返しのような場所でも易々と登る事。
もう一つが現在ユウがNNS拠点を目指して駆使している次元跳躍。
いわゆるワープというものである。
ワープは目視範囲内しか出来ず、サイボーグ蜥蜴のレベルに応じてストックされる回数しか使用できない。
使用回数は短時間で復活するものの戦闘において連発は出来ないという代物である。
ユウはこのワープをダッシュ代わりに使うことで短時間でNNSの本拠地へとやってきた。
「表側は……これは要塞だね。
これを打ち破るにはティタノサウルスかギガノトくらいは無いと駄目かな」
そのまま蜥蜴を操作しながら近くの山に登ってNNSの全体像を観察する。
表側の門は非常に強固であり突破は難しい。
そこで裏側を覗いてみたのだが、裏は崖になっている上に高射砲が置いてあり飛行生物で近づこうものなら蜂の巣にされるだろう。
「そんな事だろうとコイツを持ってきて良かったよ」
ユウは蜥蜴をポンポンと叩くと裏の崖の方に向かっていった。
♢ ♢ ♢
一方で新生魔王軍の本拠地では決戦が始まろうとしていた。
修羅が2人の部下を率いて目と鼻の先まで距離を詰めていたのだ。
「このまま一息に潰してしまいましょう!
……1人足りない気がするのですが?」
「バスは道に迷いました」
「か、亀ですから仕方ありませんね。
この戦力でも問題ないでしょう」
「弟子よ!遂に直接対決の時間だ!!」
「さぁ、サッサと潰して勝利の美酒で祝うことにしましょう」
♢ ♢ ♢
気づかれないように奇襲しようと考えていたナコは恐竜を使わずに自力で高天ヶ原の拠点に来ていた。
その為にプロコプトドンに乗ったハニーが先行して帰還し、ナコは自力でという方法を選択した為に1人森の中を走っていた。
そして……出会った。
高速で走る亀に乗った少女に。
「な……カルボネミスの脚にステ振りする人がいたんスか?」
「ん〜ナコ先輩やないですか。
おおきに〜」
高速で動くカルボネミスの上でのんびり挨拶するバス。
「こうして絡むのは初めましてっスね。
……先輩を立てて見逃してもらったりは?」
「何言うてはるんですか?
せっかく出会ったんだから楽しまない駄目やないですか」
「そうっスよね。
相手になるっスよ」
こうして全く関係ない位置でも熱い戦いが始まろうとしていた。
夏休み長編シリーズが夏休み終わっても続いておりますが、もうすぐ終われると思います。