恐竜国取合戦 1
8/1 20:20 誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
「こんユウ!
今日はくしよじでサーバー立てて流行ってるオンラインゲームをやっていくよ。
そこでいつもと違うところなんだけど、色んな人と交流したりするから今回は申し訳ないけどコメントは非表示で読めないようにしてる。
いないとは思うけど、他の同僚と争いになった時に鳩を飛ばされても困るからね」
鳩を飛ばすとは同じ時間帯の配信している別の配信者に対して○○さんがアレやってましたよ!
とか、○○さんがこういう風に言ってましたよという所謂告げ口と呼ばれる行為である。
この鳩を飛ばす、もしくは伝書鳩を縮めて鳩と呼ばれる行為は配信者、リスナーの両方から嫌がられる行為であり、配信世界ではネタバレコメントと並んで重大なマナー違反と呼ばれる行為である。
くじよじ所属のライバーが同時接続するこのゲームにおいて、この行為を行うものがいる可能性が僅かでもある以上はやむを得ない処置と言えるだろう。
自らのアバターを作成したユウは恐竜の世界に降り立つ。
自分の視点から始まるこのゲームを起動して最初に目に飛び込んできたのは白い砂浜と青い海であった。
「うわあああ、綺麗だな。
マオはもう来てるのかな?」
ユウは辺りを見回すが自分以外は誰も見当たらない。
じっと待っていても仕方ないのでその辺りにある素材を集め始めた。
他のライバーのプレイを予め視聴していたユウは地面に落ちている石を拾い、木を叩いて木材を集め、近くの植物から繊維やベリーを集めていく。
このゲームは空腹と喉の渇きが存在しており、暫くはベリーと近くを流れる川で飢えを凌いでいかねばならない。
そんな風にサバイバルをし始めて1時間程経過したところで突然ボイスチャットで叫び声が聞こえてきた。
「ぬわあああああ!
いきなり襲ってくるとは何事じゃ!?」
聞こえてきたのはマオの叫び声だった。
ユウは慌てて作成した棍棒と秘密兵器を持って辺りを捜索する。
すると向こうのほうからラプトルに襲われた女性キャラが逃げてきていた。
「うぬぬぬぬぬぬ」
マオの叫びと連動している事から、このキャラがマオのアバターなのだろう。
ユウは慌てずに手にした秘密兵器……ボーラをぶんぶんと回し始める。
ボーラとはロープの両端に丸石を括り付けたものであり、相手の足に投げる事と重みで自動的に絡まって動きを阻害する投擲武器である。
このゲームでは小型〜中型の恐竜に投げつける事で一定時間動きを止める効果があるのだ。
マオが自分の横を通り過ぎたタイミングでラプトルに向かってボーラを投げる。
見事に命中したボーラはラプトルの足に絡まって動けなくしてしまった。
動けなくなったラプトルに対して棍棒を持って何度も殴りつける。
するとラプトルは死なずに気絶をしてしまった。
すかさず気絶したラプトルの口に生肉を入れるユウ。
この生肉はマオを待っている間に近くをうろついていたドードーから採取したものであった。
暫くするとラプトルがガバッと起き上がる。
「ひ、ひいいいい!
まだ死んではおらぬのか!?」
再び動き出したラプトルに恐怖するマオであったが、そんなマオの心配とは裏腹に、ラプトルはユウの隣にピタッと張り付いて襲ってくる気配は無い。
「もう大丈夫だよ。
このラプトルは僕がペットにしちゃったから」
「そ、そう言えば恐竜をペットにできると言っておったのう。
どうやったのじゃ?」
「気絶させた恐竜に好みの餌を与えればこうしてペットに出来るんだよ。
それよりも始まった早々に災難だったね」
「うむ……全くじゃ。
1時間かけて作ったアバターが一瞬で殺されるところじゃったわ」
「ああ、だからこんなに遅かったんだ。
待っている間に簡単な家を作っちゃったよ」
ユウが話す通りに近くには木で建てられた小さな小屋があった。
合流した2人はとりあえず今後の事を決める為に小屋の中に入っていった。