2人のお出かけ 行きがけの会話
「恐竜ショー?」
「今やっているそうじゃから一緒に見に行かぬか?」
ある日、マオが2枚のチケットを持ってユウを遊びに誘った。
ユウは男の子が好きそうなものが好きな傾向にある為にこれも好きなのではと思っての行動だったのだが……
「うーん、恐竜かぁ」
「あまり乗り気じゃなさそうじゃが好みでは無かったかの?」
「好きは好きなんだけどね……ほら、前の世界でそれに近い魔物って沢山いたじゃん?
僕、そういうの生で見て戦ってきたからさ」
「そ、そう言えばそうじゃった。
妾の部下にたくさんおったし、よくよく考えればドラゴンなぞ恐竜の中におってもおかしくないのう」
「ティラノに翼が生えたようなものって考えるとね」
「それじゃ、せっかくじゃがこの誘いは……」
「待った!
行かないとは言ってないよ。
リアルにこう言うの見たことあるねって話したかっただけで誘ってくれたのは嬉しかったから。
だから一緒に行こう」
「……お主、実は面倒な性格しておるのう」
こんなやり取りがあってからのお出かけであったが、何処かに出かけると言うのは久しぶりなので2人とも機嫌は上々であった。
だが、暫く歩いていると街の様子がいつも違うことに気付く。
「なんか警察の人多くない?」
「それは仕方ないじゃろう。
オリンピックが開催されておるからのう。
この時期を狙った犯罪が増える可能性があるじゃろうからな」
「この時は増員とかして緊急態勢敷いてるのかな?」
「そうかもしれんのう……こうして安全を守ってくれると言うので足を向けては寝られぬわ」
「そう言えばハニーも言ってたよね。
日本は世界でもトップクラスに安全だって」
「日本に来て初めて夜中に1人で出歩くという行為が出来たと言っておったの。
夜の散歩やジョギングはこちらでは当たり前じゃからな。
海外では男性でも1人出歩くのは避けた方が良いじゃろうて」
「そう考えると僕たちがこの世界に流れ着いた時に日本に来たのはラッキーだよね」
「そうじゃな。
くじよじでVの活動をやれたのもラッキーじゃったが、妾達のような者に異常な程に理解が深い国民性を持っている日本という国に流れ着いたのは本当に幸運じゃったよ」
「確かに!
勇者と魔王の服装で街中歩いててもコスプレしてるだけだと思ってくれそうだよね」
「良い意味で懐が深いと言うか……なんでも受け入れてくれるのは国民性なのじゃろうな」
「こういう平和な空気が僕たちが求めてたものだったからね」
「この平和がずっと続くといいのう」
「続くさ……きっとね」
穏やかな風が吹く中で2人は目的地に着くまで会話を楽しんだのだった。