責任と太陽
7/23 14:25 誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
配信を終えたユウは同じくソロ配信を終えたマオと合流して夕食を取ることにした。
「うーん」
「どうしたのじゃ?
さっきから唸っておるが」
配信を終えたユウはずっとある事について考えていた。
「今日やったゲームが凄く面白かったんだけど……同時に色々考えさせられちゃって」
「ああ、あの都市建設シミュレーションじゃな。
実は妾も面白そうじゃと思っていて実況動画見ておったが、とてつもなく過酷な状況を生き延びるというのは惹かれたのう。
クリアーは出来たのかえ?」
「うん……何とかね」
「それは凄いのう。
確か最後は難民が押し寄せてきた上にマイナス150度まで気温が下がった気がするのじゃが」
「そうなんだよ。
それで結局病人達は見捨てて健康な人達だけで頑張ったんだけど……それがねぇ」
「元勇者として人を見捨てるのは心が痛んだかの?」
「それは少しだけ……今は勇者じゃないし、言ってしまえばゲームだから。
でも、マオが魔王をやっていた時ってこれ以上の命を預かった上で決断してたのかなって」
「なんじゃ……そんなことか」
ようやくユウが何を思い悩んでいたのか察したマオがため息をつく。
ユウはマオが魔王という魔族のリーダーをやっていて、リアルに何度も決断を下してきたのかと思うと心が重くなっていた。
仮想世界でこれだけ民を見捨てて心が痛んだのだ。
魔王をやっていた頃のマオの心はどれほど傷ついた事だろうか。
そう考えていたのだが……マオの返事は意外に素っ気ないものであった。
「残念じゃがユウが考えておるほどに責任は感じておらんぞ。
強さこそ全ての魔族の世界を変えたかった妾じゃが……そのために弱きものを守る為に強きものに犠牲を強いた。
しかし、魔族の強きものは人間とは比べ物にならないほどに差があるからの。
その強きものも妾が力で黙らせれば付き従ったので大した苦労はしておらぬ」
「あ、そうなんだ。
確かに人間の世界と比べても仕方ないのかな?」
「そうじゃよ。
それに弱きものを守っておったとはいえ魔族は個人主義じゃ。
そこまでして死んでしまうなら仕方ないじゃろと割り切っておった。
そうじゃのう……違いを挙げるとすれば妾は命を預かっておったという感覚は一切無かったのじゃ。
施しはするが後は個人で何とかするのじゃな……と言ったところかの?」
「ああ、だから苦労はしていないと」
マオの言葉がユウの胸の中にストンと落ちた。
ユウはゲームの中とはいえ市民の命に責任を感じていた。
だが、マオはその命に責任は持っていなかったというのだ。
「そういう訳で誰が死んだところで悲しいとか悔しいとかそんな気持ちは一切起きなかった訳じゃ」
「そっか……あれ?
それって今も?」
「何をバカなことを言っておるのじゃ。
妾達は一心同体……お主の命に対して責任を持っておるに決まっておるじゃろう」
「そっか……そうだよね。
僕もマオの命に責任持ってるから死んじゃ嫌だよ」
「うむ……可能な限り一緒に。
お互いの命を諦めないことを改めてここに誓うのじゃ」
「僕も誓うよ!」
この日、ユウは夢を見た。
極寒の地で猛吹雪に身を震わせている夢だった。
もうダメかと思った時に目の前にマオが現れた。
彼女がユウの身体を抱きしめると今までの寒さが嘘のように暖かくなった。
いつしか吹雪は止み雪は溶けて光が辺りを照らしていた。
太陽……ユウにとってマオとはそのような存在なのだろう事が分かる夢だった。