表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

306/1560

とある務所帰りの男の話 2

ヤスがオヤジがいるという部屋の扉を開いたので中に入る。


俺はすぐに頭を下げた。


「オヤジ!いま務めあげて戻って参りました!!」


頭を直角に下げているので今の俺には床しか見えていない。


オヤジは一体どんな顔で出迎えてくれるのか……しかし、いくら待てども親父から返事はなかった。


「あの……兄貴。

すいませんがオヤジはいま防音室に入ってるみたいで聞こえてないみたいっスね」


ヤスが横から声をかけてきたので顔を上げるとそこにはオヤジの姿は無く、部屋の中に小さな部屋があった。


「防音室ってあれか?」


「そうです……あの中に入ると中でどれだけ騒いでも音漏れしないから便利なんすよね。

ワンフロア借りきっているとは言え、音漏れは気になりますから」


「あん?歌だと???

オヤジはあの中で歌を歌ってるってのか?」


「今日は配信の予定なかったんで急に決まったんでしょうね……ちょっと待ってください。

……ああ、アポ無しの逆凸みたいですね。

うわっ!?また地獄のようなコラボ場所に突っ込んでるなぁ」


「お前は何を言ってるんだ?

というか、その小さい機械でオヤジが何やってるのか分かるのか?」


「分かるんですけど……段階を追って説明したほうがいいかと。

多分、もう終わりそうなんで」


「……ああ、分かったよ。

オヤジはあの中で何をやってるんだ?」


「簡単に説明すると今のシノギっすね。

せっかくだからそこのソファにでも座っててくださいよ」


そう言ってヤスが指差したソファは何というか……緑色のふわふわしたオシャレな雰囲気のソファであった。


そこで気が付いたのだが、この部屋にある家具はどれもオシャレで可愛い。


俺が刑務所で作らされていた質素でシンプルなものとは大違いだ。


「アニキ、コーヒー淹れたんで良かったらどうぞ」


そう言ってヤスが渡してきたコーヒーのカップは何かファンシーなキャラクターが描いてある。


コーヒーの香りを嗅いだ時にふと気がつく。


そういえばこの部屋に入ってからずっと花の良い香りがしてある。


辺りを見渡すとあちこちにセンスの良い花が飾ってあるのが分かる。


「なぁ……ヤス。

ここはオヤジの愛人が住んでいた部屋とかか?」


「何を言ってるんですか?

ここは年前に引っ越してきたばかりでずっとこの部屋に一人で住んでますよ」


「じゃあ、ここにある家具やら何やらは全部オヤジの趣味ってことか?」


「そうですよ……オヤジ良いセンスしてますよね。

今のシノギを始めてから益々そのセンスに磨きがかかったというか」


「さっきから話してるがオヤジのシノギって……」


そう聞こうとした所で防音室の扉が開く。


俺はその音で反射的に背筋を正して立ち上がると直角に頭を下げた。


「お久しぶりです!

長い務めを終えていま帰ってまいりました!!」


そう言った俺の上から先程とは違いしっかり声をかけられる。


だが、それは俺が尊敬してやまないオヤジの低くて渋い声では無かった。


「あっ、ヒロくーん久しぶり!

長い間お勤めご苦労様だったね。

こんなに頑張れるなんて本当に凄いよ!!」


そこから聞こえてきたのはオヤジの声とは似つかない高い女性の声であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ