その頃の異世界
「魔国の様子はどうなっておるのじゃ!
勇者からは何の連絡もないのか!!」
王は叫び当たり散らす。
周りの家臣達は顔をしかめて目を逸らした。
勇者が魔王城に突入したと言う連絡を受けて半年が経過しようとしていた。
その間に勇者からの連絡はない。
そして魔国は何故か急に防御を固め初めてスパイの1人も紛れ込ませることが出来ない。
それ故に王は焦っていた。
勇者がただ負けて死んだのであればそれで良い。
これまでと何も変わらないのだから。
しかし、勇者が魔王城に突入したと途端に魔国の様子が変わったのだ。
最悪なのは勇者が裏切って魔王側についてしまった場合だ。
王にとってはただ強いだけの平民である。
しかし民からしてみれば伝説の勇者であり、それが裏切ったと知られれば人類の士気は一気に落ちる事だろう。
それなのに何一つとして情報が入ってこないのだ。
自分はどうすれば良い?
何をすれば今後生き残れる?
王は追い詰められていた。
魔国では魔王が勇者と一騎打ちをし、そして行方不明になったことで大騒ぎになっていた。
しかし、魔王は自分がいなくなった時のことを考えており、魔王の秘書を務めていた魔族が代理として場を納めていた。
ただちに魔王の計画が発動され魔国は徹底的に防御を固めた。
人間のスパイが入り込まないように国の境目に結界を張り侵入したものが即座に分かるように手を打ったのだ。
「ふぅ、何とか魔王様の計画を遂行することが出来ましたね」
「うむ、このような事態招きたくはなかったが魔王様には感謝しかないわ」
「俺たちは魔王様が変えてくれたこの国を守る必要があるからな」
「前のような無法地帯になれば人間族に食い荒らされるだけですからね。
何としてもこの状態を維持しましょう」
現在、魔国では4人の魔族が中心に内政を回していた。
彼らは政治的な頭の良さもそうだが、魔王から伝えられた限界を超える方法により魔王に続く実力の持ち主であり、四天王と呼ばれていた。
「とにかく情報を集めましょう。
情報こそは全ての行動の指針となると魔王様は仰られていました。
人間の国の情報を集めてそこから対応策を考え抜いていくのです」
人類と魔族の緊張感は確実に高まっていた。