神界の事情と音楽講師
6/9 2:20 15話の誤字報告受けて修正しました。
報告ありがとうございます。
「うーん、私が知ってる音楽関係の人当たってみたんだけど皆仕事が立て込んでるみたいね。
かなり先の方にならないとスケジュール空かないみたい」
プロジェクトが立ち上がってまでは良かったが早速難航していた。
というのもVの世界は横の繋がりが非常に強い世界である。
それ故にイラストやサムネ作り、動画に切り抜き作成などの職人は多くの人達で共有している状況であった。
その為に仕事を頼んでもスケジュールが空いておらず、数ヶ月待たされることも少なくない。
トップVの中にはそんな状況を嫌って専属として抱えこむ者もいるくらいである。
そしてユウとマオの2人も例外に漏れず、音楽関係の職人のスケジュールを押さえられないでいた。
こうなると大人しく待つか新しく探してくるかとなるのだが、Vに理解があるのか?から始まり、価値観の共通や人間として信頼できるかなど時間を積み重ね場とても仕事を任せられない。
結局のところは同じくらいに時間がかかってしまうというわけだ。
「何やらお困りのようですね!」
パーーーん!!と勢いよく扉が開けられて現れたのはルーナとサングラスをかけた女性であった。
その女性はツカツカとヒールの音を立てながらユウ達に近づいてくる。
目の前まで来るとサングラスを外して2人をジッと見つめたのちに、
「オーケー、引き受ける」
と答えた。
「ちょっと待ってちょうだい。
貴女は何者なの?
そして彼女達の音楽関係の仕事ぜんぶひきうけてくれるの?」
「ええ、約束するわ。
それで私が何者かという話だけど……ルーナ嬢、代わりに説明してくれたまえ」
「彼女は弁財天……いわゆるこっち側の知り合いです」
そう言ってルーナは上を指差した。
もちろん天井ではなくその更に上の世界の話であろう。
「音楽のことなら私に任せてほしい」
「弁財天……確か仏教に帰依する前はサラスヴァディー。
学問や招福に音楽の神様だったはずよね」
里中が信じられないものでも見たという表情を向ける。
「相変わらずお詳しいですね。
弁財天様はユウとマオのファンでして、今回の話を是非にと」
「それは助かるけどこの場合の報酬ってどうしたら良いのかしら?」
「あ、それはちゃんと口座をお持ちですのでこちらに振り込んでくだされば大丈夫だそうですよ」
里中とルーナの間でとんとん拍子に話が進んでいく。
「何故かルーナが弁財天様のマネージャーのようになっておるのう」
「ああ、知らなかったかしら?
あの子、異世界とはいえあの子は神様だから配信の収入は宗教法人になってるから税金かからないのよ。
坊主丸儲けってやつね」
「え〜それ何かズルくない?」
「その代わりにあの子は私たち日本にいる神様に上納金としてお金を納めてるからあまり変わらないわよ。
その納めるお金を管理するための口座をあの子が管理してるってわけね」
「え?神様も金銭が必要なのかえ?」
「偶には人里に降臨して遊びたくなるのよ。
その場合は神ではなく人側のルールに従うことになっているから遊ぶにはお金がいるのよ。
あの子のお陰で皆遊びやすくなったって喜んでるわ」
「そうだったんだ。
神様も色々と事情があるんだね」
「今の時代、特に日本で神様の奇跡なんて必要ないでしょ?
あくまで精神の拠り所、信仰の対象として存在すれば良いというのが神界の意見ね……あら、話がまとまったみたいよ」
弁財天の言葉に里中とルーナの方を見ると2人は固く握手をしていた。
「ユウちゃん、マオちゃん。
話がまとまったから今後は弁財天様から音楽のレッスンを受けてちょうだい」
こうして2人は弁財天様から歌の手解きを受けることになった。
後にこの事がキッカケで弁財天様がくじよじの専属講師となるのはまた別の話である。