ユウとマオのデート 5
「おっけ〜!ありがとう!!」
満面の笑みで2人にお礼を言うカミュちゃん。
一方のユウとマオは疲労困憊と言った有様であった。
「まさか宣材写真を撮るのがここまで大変であったとは」
「何処からともなく小物を持ってきては色んなポーズをさせられたからね」
「いや〜私としてはまだまだ撮りたりないんだけど服の分としてはこれくらいかな?
また何か欲しかったらこの条件で交換してあげるよ」
ユウマオの2人とは違い、何故か撮影前よりも肌が艶々して元気になったカミュちゃん。
そんな彼女に呆れながらも先程撮った写真を見ていく。
「ふむ……苦労した甲斐はあるのう。
どれも映画の一幕のような写真ばかりじゃ」
「これ貰えたりしないかな?」
「バックアップは取ったからメモリ毎持っていっていいよ」
「感謝するぞ、カミュちゃん」
「ありがとう!」
「またいつでも遊びに来てくれたまえ」
2人はお礼を言ってカミュちゃんの店を後にする。
「今からどうする?」
「折角じゃからあちこち回ってみるかのう」
そう言って街を散策し始めた2人だったが、コスプレ撮影スタジオがあるような街の一角である。
通りのあちこちにはメイドや軍服や果ては忍者の格好をしている者達など様々なコンセプトカフェの呼び込みが立っていた。
そこに銀髪のゴスロリお嬢様と男装の執事が現れた訳である。
当然、周りは騒ぎ出すことは無かったが内心では大パニックになっていた。
「え?初めて見たけどあれ何処の店の子?」
「レベル高すぎじゃない?
あんな2人に呼び込みされたら商売にならないんですけど」
「というか私が行きたーい!!
あの執事君に給仕してほしい」
ザワザワとしだし周囲を気にすることなく歩く2人に1人の勇気ある者……勇者というべき男が声をかける。
「あ、あのう……すいません」
「うん……僕たち?」
「何の用じゃ?
妾達はデート中なので手短に頼むぞ」
2人の言葉を聞いた周囲がいっそう騒ぎ出す。
「僕っ子?妾??
は……好きなんだが???」
「デート……デートって言った!?」
「のじゃロリって実在するものなの???」
そんなざわめきを他所に男は勇気を振り絞って会話を続けた。
「デートって事はお姉さん達は何かのお店の人じゃ無いんですか?
もしお店の呼び込みだったら遊びに行きたいと思ったんですが」
「ああ、そういう事か。
ごめんね、僕たちお店とは関係のないプライベートなんだ」
「勘違いさせてしまって申し訳ないのじゃ。
ふむ……この御仁が遊べるお店を探しておるそうじゃが誰か案内する者はおらぬか?」
マオが周囲に声をかけると周りのざわめきが大きくなる。
暫くするとマオと同じようなゴスロリ服に身を包んだ少女が前に出てくる。
「私のお店がコンセプトに近いと思うのですが如何ですか?」
「そ、それじゃお願いしようかな」
「ありがとうございます。
それでは案内しますね……2人にもありがとうございます」
「全然気にしないで」
「しっかり楽しんでくるのじゃぞ」
そう言って去っていく呼び込みと男の後ろ姿を見送った2人だったが彼女達は知らない。
呼び込みに現れた女性の店のコンセプトがゴスロリメイドが教える水煙草の店であったことを。
そして男がある種倒錯したこの世界のコンセプトにズブズブとハマっていくことを。