ユウとマオのデート 2
ユウとマオは駅前のホテルまでやってきた。
駅から直接歩道橋で繋がっており、2階のレストランに直接向かえる仕様になっているのは親切でありがたい。
「いらっしゃいませ」
受付の女性が深い礼を持って2人を出迎える。
ぱっと見は小学生と高校生にしか見えない2人だが、そんな人物を相手にしても全く態度が変わらないのはプロの仕事と言えるかもしれない。
「田中2名で予約しておったものじゃが席は取れておるかの?」
ユウではなくマオの方が対応した事に若干表情が動くが表には出さない。
「ええ、お待ちしておりました。
お客様を42番テーブルまで案内してください」
受付はレストランフロアの男性に声をかけ、彼は笑顔で
「こちらでございます」
と言って2人を案内する。
レストラン内でも2人が通るとそれまで楽しいそうに会話していた人達の声がピタリと止まる。
健康的でボーイッシュな美少女とゴスロリ服に身を包み眼帯を付けた銀髪の美少女。
相反する性質を持った2人の出現には致し方なしと言えるかもしれない。
「当店は初めてでいらっしゃいますか?」
席まで案内してくれたスタッフは2人が着席をしたのを確認して尋ねる。
「うむ、初めてなのじゃ」
「初めてだよ」
「それでは当店のルールを説明させていただきます。
当店のランチはビュッフェ形式となっております。
和洋中の料理と様々なドリンク、デザートを心ゆくまでご堪能ください。
こちらは有料のドリンクです。
お酒だけでなくノンアルコールのカクテルもございますので、ご希望でしたらスタッフまでお声がけ下さい。
ランチタイムが終わる15時まで時間無制限ですのでごゆっくりお楽しみ下さい。
それでは先に水をご用意させて頂きます」
スタッフはそう言うと右手でボトルの底を持ち、左手に持った綺麗な布巾で注ぎ口を軽く拭く。
そして、ボトルを少しずつ傾けてゆっくりと水を注いでいった。
十分に水が注がれたのを確認したらボトルを捻るように持ち上げながら注ぎ口を再び布巾で拭いていく。
その綺麗な所作に2人はついついジッと見てしまった。
「これは素晴らしいものじゃな。
洗練された動きじゃ」
「ボトルの水ってこんな風にして注ぐんだね。
初めて見たよ」
「ワインの注ぎ方がこのような形じゃな。
最初に注ぎ口を拭くのはカビを拭き取るため。
注ぎ終わってから捻ったのはグラスに水が落ちるのを防ぐためじゃな」
「よくご存知で。
それでは時間までごゆっくりとお楽しみ下さい。
何かあればスタッフが待機しておりますのでお声がけ下さい」
スタッフはそう言ってテーブルから離れると店内を見渡せる位置に立ち待機し始めた。
「さて、それでは料理を楽しもうではないか」
「そうだね!
もうお腹ペコペコだよ」