#ASMT配信 ゲストはダンディなおじさま 3
「アマの新撰組愛が強いのは分かったんですけど、これ毎回このレベルの話を持ってきますの?」
「いや、正直へぇ〜と言える程度の知識でも良かったのじゃが」
「ああ、それなら安心しましたわ。
折角ですので私は江戸時代のお酒の話をしようかと思います。
知っての通り、江戸時代には外国のお酒はほぼほぼ入ってきておりません。
幕末の黒船来航による貿易の解禁からビールが入ってきてはいるようですが、町民の殆どは日本酒でした」
「時代劇などでも大半は日本酒……それも燗酒を飲んでいるイメージじゃのう」
「この時代のお酒はとにかく燗だったようですね。
今のように冷蔵庫がある訳ではないので冷やすとしても井戸水が限界だったのでしょう。
そして、夏になると井戸水で冷やしていた焼酎が暑気払いとして飲まれていそうですわ。
当時の焼酎はアルコールが強く飲みにくい酒として認識されており、飲むのは夏の時期。
それも焼酎と本みりんを半々に割った本直しというお酒が飲まれていたようです」
・みりんと割るの?
・今で言うとみりんサワーってことか
・甘味料代わりだったのかね
「よくご存知ですね。
焼酎はアルコール度数が高くて飲みにくかったのでみりんと割って手直しするという意味で本直しと呼ばれていたそうですよ」
「あら、そうなんですのね。
焼酎は本みりんで割られていましたが日本酒は混ぜて販売していた店子があるようですね。
と言ってもこちらは良い意味ではなく悪い意味ですが。
お酒を文字通りに水増しする為に水を混ぜて販売している悪質な酒屋があったそうです」
「あらあら、日本酒に水を混ぜて販売するとは冒涜的なお店ですわね」
「この時代には様々な居酒屋があったのでそういう輩が出るのも仕方なかったことかもしれませんわね。
これで私のうんちくは終わりにしておきますが次は誰が?」
・パチパチパチパチ
・勉強になった
・なるほどね
「蝶子ママは既に知識を披露したようなものじゃから妾がいかせてもらおう。
居酒屋の話があったので江戸時代の食文化についてじゃな。
実は江戸時代後期には今海外で人気の日本料理の殆どが出来上がっていたのじゃな。
天麩羅、寿司はその代表と言って良いのう。
天麩羅は安土桃山時代が起源とされておるが、油が出回るようになって庶民に食べられ始めたのが江戸時代という訳じゃな」
「江戸時代の寿司は今よりも大きかったと言うわね」
「今の倍くらいの大きさだったようじゃの。
屋台で出しており、当時は割り箸も無かったので素手で食べていたようじゃな。
湯呑みも今より遥かに大きく、寿司を素手で食べてお茶を飲み、余ったお茶で手を洗い最後に暖簾で手を拭いていく。
この為に汚れた暖簾であるほど人気店であると言う目安になっていようじゃな」
・汚れている方がいい店なんだ
・ドリンク兼フィンガーボールって感じかね
「先の日本酒もそうであるが、米が安定して供給されていたので江戸では白米を食べるのが一般的であったそうじゃな。
そのせいで脚気が流行り江戸患いという江戸の民しかかからぬ病気として恐れられていたようじゃが。
米がどれだけ安定して供給されていたかと言うと貨幣の代わりになっていたようじゃのう。
経済学に詳しければ分かると思うのじゃが貨幣とは一種類のみではその価値を示すことは出来ぬ。
現在は世界各国の貨幣と照らし合わせることが出来るのじゃが鎖国していた日本ではそうはいかぬ。
その為に米相場と照らし合わせていた訳じゃな」
「補足させて頂くと現代日本では分かりづらいですが、貨幣の価値とは何を幾ら出せば買えるか?
という問いに対する答えです。
その点で江戸時代では幾らのお金を出せば米がどれだけ買える?
という基準から貨幣の価値を決めていたと言えます。
しかし、米相場は変動するので江戸幕府は飲食店での相場を定額に固定していたという話もありますね。
例えばですが、かけ蕎麦は一杯16文だったそうですよ」
「さ、さすが学術に長けた師弟ね」
「ちょっと私たちとはレベルが違いますわ」
「これ雑学って言うよりは社会の勉強ですよね……面白い話ですけど」
・たしかに
・面白いのは間違いない
・勉強になるな