ユウと修羅のデート〜キックボクシング編〜
「折角ですし親睦を兼ねて遊びに行きましょうか!」
修羅はナイスアイデアと言った感じでユウを誘う。
「えーっと、僕は行ってみたいけど大丈夫かな?」
ユウが里中の方を向くと彼も唯も頷いた。
「修羅ちゃんはウチの中では比較的常識人だから安心しなさいな」
「ぶっ飛んだ人多いですからね〜修羅さんは面倒見がとても良い方なので楽しんでくるといいよ」
「えーっと、それじゃよろしくお願いします!」
「ええ、もちろん。
それと無理して敬語なんて使わなくていいわよ。
ユウちゃんの魅力は天真爛漫な所なんだから」
「うん、分かったよ!
よろしくね、修羅さん」
ユウがニッコリ笑ってそう言うと
「ホントにギャン可愛か子ね〜さぁお姉さんとデートしましょう!」
と張り切って手を取って歩き始めた。
「もうそこまでいくと修羅国語じゃなくて隣のガバい国語じゃない」
その後ろ姿を見ながら里中はポツリと呟いた。
修羅は自分の車にユウを乗せると発進させる。
「ユウちゃんはどこか行きたい所ある?」
「うーん、最近身体を動かしてないから思いっきり動かしたいかな?」
「それじゃ私が通ってるキックボクシングのジムに行きましょうか」
そのまま慣れた様子で車を運転してボクシングジムの場所に到着した。
「おや、いらっしゃい。
今日は来る予定ではなかったよね?
どうしたんだい?」
トレーナーの男の人が話しかけてくる。
「今日は後輩が身体動かしたいって言うから来たの。
良かったら一日体験させてあげて。
私は適当に運動してるから」
「よろしくお願いします!」
ユウがトレーナーのお兄さんに頭を下げて挨拶する。
「おお、元気がいいね。
こちらこそよろしく。
まずは着替えてもらうんだけど」
とトレーナーが言ったところで修羅はその頭を掴んで壁に寄せる。
「こんジムで販売しとー練習着あるでしよ?
うちがお金払うけんそれば渡してくれん」
「あ、ああ。分かったがどうしんだ?」
「あん娘に気ば使わしぇたくなかと。
頼むばい」
「ふむ、相当なお気に入りみたいだな。
任せておいてくれ」
トレーナーは倉庫に行って適当に見繕った服をユウに渡す。
「これが練習着だから着替えてくるといいよ。
ふりーさいずだから問題なく着れるはずさ」
「ありがとう、お兄さん!」
「あそこが女性用の更衣室だからね」
「うん、行ってきます!」
「あ、私も一緒にいくわ」
修羅とユウは2人で更衣室に向かっていった。
しばらくすると2人が着替えて戻ってきた。
「それじゃあ、先ずはストレッチをしましょうか。
僕がやるのを真似てください」
「はーい」
トレーナーに言われた通りに身体を動かす。
「ん?君は何か運動をやっていたのかい?
身体がとても柔らかいね」
座った状態で開脚し前に身体を落としていくストレッチなのだが、普通の女性はほぼほぼ動かないので後ろから押してあげたりと補助が必要になる。
しかし、ユウはそんな補助もなしにべたっと床に顔が付いていた。
「まぁ、この娘は色々と特別なのよ。
そこら辺はあんまり気にしないであげて」
同じようにベタッと床に顔がつくほどに曲げた修羅が答える。
「そうですか。
では、次はシャドーボクシングをしてみましょう。
鏡の前でこのようにパンチを出してみてください」
「はい!」
ユウがパンチを繰り出すとしっかりと腰の入った拳が突き出される。
それでいて身体のバランスは崩れずガードが解ける事もない。
トレーナー自身がこの直後に攻撃を仕掛けても完璧に防がれる未来しか見えなかった。
ジャブ、ストレート、フックから始まりローキック、ミドルキック、果ては頭の位置を狙うようなハイキックまで教えていくがその全てにおいてバランスが一切崩れずに隙を見せることが全くない。
また打ち終わった時に普通の女性ならば気を抜く所であるが、ユウはそこにまだ敵がいる事を想定して決して構えを解く事なく次の攻撃を出せるように重心を保っている。
それは剣道で言うところの残心と呼ばれる行為を思い起こさせた。
「悪い、詮索するなと言われていたがマジでどういう娘なんだ?
間違いなく実戦を経験しているものの動きだぞ」
「はぁ〜しょうがなかね。
こん娘はうち達とは別ん世界に住んどったようなもんと。
今はこれで納得しいね」
「分かった分かった。
それじゃ次のプログラムに行くか」