秋葉原の有名な通りを行く2人
秋葉原で散々買い物を楽しんだミコと別れた二人は、フラッと立ち寄った喫茶店で話し合っていた。
「まだ配信の予定時間にはまだまだ余裕があるんだよね」
「今日はどのくらいの時間になるか分からずに遅めに設定しておったからのう」
二人は頼んだドリンクを飲みながらダラダラと会話している。
最近は買い物以外での外出が少なかったので、この時間が終わるのを惜しんでいるのかもしれない。
「そうじゃ!
せっかく秋葉原の来たのじゃ。
あの通りを見てみぬか?」
「あの通り?」
「ここの名物とも言える通りじゃよ」
♢ ♢ ♢
マオに言われて案内された通りには様々なコスプレをした女性がチラシを持って呼び込みしている道であった。
この通りは秋葉原でも屈指の呼び込みスポットとなっており、日夜ライバル達が凌ぎを削っている場所である。
「うわ!?何ここ?
凄いね!」
「噂には聞いておったのじゃが凄い場所じゃのう」
パッと見て多いのはメイドさんである。
しかし、普通のメイドカフェの呼び込みから耳掻き屋、マッサージなど業種は様々あるようだ。
その他にも軍服を着た女性、クノイチ装束などコスプレカフェの呼び込みは多種多様である。
「何処か入ってみる?」
「せっかく来たのじゃから行ってみるかの。
のう、お主ちょっと良いかの?」
「はい、何でしょうか?」
マオが声をかけたのは近くにいるクノイチ装束の女性であった。
「お主のところはカフェなのかのう?」
「そうですよ!
忍びをコンセプトにしたカフェです。
メニューはこちらにある通りに和菓子中心ですね。
良かったらお姉さん達遊びに来てみませんか?」
秋葉原の大人のコーナーを回るという事で現在のマオの姿は大人バージョンである。
「ふむ、せっかくじゃから行ってみようかの」
「お姉さん、案内お願いね」
「はーい!お姫様方2名ご案内させて頂きます」
呼び込みは二人を案内しつつ飽きさせないように話題を振ることにした。
「お二人は姉妹ですか?」
「いや、そうではないが……まぁ、家族のようなものじゃな」
「一緒に暮らしてるしそうとしか言いようがないよね」
「ほ…ほほう。
今日は秋葉原には遊びに来られたのですか?」
「実はもう一人連れがおったのじゃが別の人間と待ち合わせをしておっての。
その者の希望でこちらに来たのじゃが、別れた後に久しぶりに2人で出かけたからもう少し遊んでいくかとなったわけじゃな」
「いつも一緒にいるけど出掛けることって少ないからね。
偶にはこうしてデートするのも良いかもしれないってね」
「そうなんですねぇ。
今日はお姫様達のために私たちもがんばってお持てなしさせて頂きますね。
あ、ここです。
ちょっと失礼して……はい。
姫さまお二人を案内して……はい。
いまお店に連絡入れて席を用意してくれたようなのでどうぞ」
「うむ、ここまでありがとうなのじゃ」
「ありがとね、お姉さん」
2人は呼び込みにお礼を言って中に入っていった。
笑顔で手を振りながら扉が閉まるのを待っていた女性だが、扉が完全に閉まったのを確認するとがっくりと膝に手をついて大きく息を吐き出した。
「は〜尊死するかと思った。
スタイル抜群のじゃ喋りのお姉さんと元気いっぱいな可愛い女の子のカップルって、実際に目の当たりにするとこんな破壊力なの?
よく耐えて案内出来たわ、私」
2人のてぇてぇ空間を見せつけられるたびに何度顔を手で覆って空を見上げかけたことか。
彼女は自分を褒め称えたい気持ちでいっぱいだった。
同時に店の中のこれからの惨状を考えて少し同情的な気分にもなる。
「店のスタッフや他のお客さんは耐えられるのだろうか……無理だろうなぁ。
まぁ、頑張れ!
頑張ってあとで話を聞かせてくれ」
彼女はそう言いつつ今来た道を戻る。
今日、この時間に呼び込みをしていたことに感謝しながら。