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異世界の歴史事情

ユウ達の放送が異世界に配信されることが日常的になった異世界では、彼女達が紹介する文化を真似する事もあった。


最近では三国教授の歴史講座の配信を聞いた各国の学者達が歴史の編集に没頭するようになったという。


というのも今までは各国が其々の国の歴史を保管し、必要な時に過去の事例を参照するという程度の話であった。


また、基本的には今までの王の偉大なる活動が納められているのみであり、それらを読んで褒め称える事こそが大事であると考えられていた。


しかし、三国教授の三国志講座にマオが出演してその講義を聞く内に学者達に疑問が浮かんだのだ。


果たしてこんないい加減な歴史の納め方で良いのだろうか?と。


そうして、各国の学者達はあらゆる手段を用いて互いのネットワークを形成する事から始めた。


そうして自分達の国の歴史を擦り合わせていったのだが、その効果は絶大であった。


例えばA国では領土を広げて民達を豊かにした名君と呼ばれる王が、B国では奇襲を仕掛けて領土を一方的に奪いその土地に住む者達を皆殺しにした暴君として語り継がれていた。


C国で戦いの最中に行方不明になった将軍がいた。


その少し後よりD国を大国へとのし上げて指揮官から王へと成り上がり治世を治めた王がいた。


この王は出自不明とされていたのだが、C国の資料と照らし合わせると特徴や戦い方の癖が一致しており、ほぼ同一人物であろうと言うことが分かった。


このように一方的な立場ではなくあらゆる面から多角的に物事を見る事で様々なものが見えてくる事から、この件は大々的に発表するべきだと言うことで意見が固まった。


しかし、素直に其々の国の王に陳情しようとも自分の国が不利になるかもしれない事を受け入れるだろうか?


過去の名君を侮辱したという罪で投獄される可能性もある。


そこまで考えた学者達はこの成果を教会を通じて民達に教える事にしたのだ。


女神の使徒たる魔王の配信に着想を得て行った研究成果であり、この成果は女神の慈悲によるものであるという一文をつけて。


その効果は絶大であり民達は新しい歴史と考え方を受け入れていった。


更に各豪商や貴族からも自身に伝わる歴史の提供が行われ、人間界の正しい歴史を解き明かすのに一役買っていた。


国としても女神の齎した正しい歴史として発表されれば手の付けようが無かった。


その為に仕方なく放置していたのだが、彼らにも全く考えの及ばないもの嬉しい誤算があったのだ。


それは優秀な人材が育成されてきたという事である。


多角的に物事を捉える事で一つのことに拘らず様々な効率の良い方法を生み出すもの。


歴史を学ぶことで過去の愚かさを知り、人々が道徳心を向上させたことで安全性が増したこと。


そもそも、歴史の授業が民達に良い教材となり識字率が上がったこと。


正しき歴史というものが伝わっただけでこれだけの効果を世界に及ぼしたのであった。


これは正しく女神からの賜り物と言える成果であった。


こうしてまた一つ異世界に新しい


「正しい歴史を学ぶ」


という文化が生まれたのである。


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