二人の絆〜過去編1〜
この作品は基本的にネット配信と過去編を交互に繰り返します。
ネット配信では二人の会話とメンバー達の投稿というスタンスです。
過去編は第三者視点で2人の過去を追っていく話です。
特殊な形になりますがお楽しみいただければと思います。
それはこの世界に2人がやってくる前の話だった。
2人の戦いの激しさは次元に穴を開け、勇者と魔王を異界の彼方へと連れ去ってしまった。
よく分からない空間に閉じ込められた2人は途方に暮れていた。
「くそ、これもお前の仕業か!」
「知らぬ知らぬ。
ただ、お主との力が拮抗した結果次元に穴を開けてしまったという所じゃろう。
どこか裂け目を探して脱出せんとずっとここに閉じ込められるぞ」
「ふん、それならば魔王を永遠に封じ込めておけるということだな!
勇者としてそれは本望だ!」
魔王の言葉に勇者が高らかに宣言する。
そんな勇者を前に魔王は大きくため息をついた。
「よく分かっておらんようじゃから教えるが此処は時間が止まっておる。
妾達はここでは腹が減ることも無ければ眠ることもない。
死ぬことすら出来ぬ。
それがどういうことか分かるか?」
「えっ・・・うーん。
一生魔王と2人ってこと?」
「死ぬことが許されん以上未来永劫な。
しかも、何かの事故で片方だけが脱出出来たらどうする?
こんな何もない場所で永遠に暮らすのか?
妾はそんなの嫌じゃよ」
「ええ・・・それは僕も嫌だ。
分かったよ、一緒に出口を探そう」
こうして勇者と魔王の出口を探す旅が始まった。
彼女達はその道中で色んな話をした。
何故勇者として旅をしたのか。
何故魔王として人類に戦いを挑んだのか。
2人で話し合うに連れて彼女達の間の誤解は解けていき、2人はどんどん仲良くなっていた。
「そう言えば魔王って名前はあるの?」
「無いな。
産まれた時から1人だった妾にはそのようなものを付けてくれる者はいなかった」
「じゃあ、僕が付けてあげる。
魔王だからマオちゃんでいいかな?
「単純だが悪くは無いな・・・ならば勇者はユウちゃんかの?」
「え、でも僕はちゃんと名前があるよ」
「よいではないか・・・元よりこの場でそれを知る者は誰もおらぬ。
ならばお互いに名前を付け合うのも一興とは思わぬか?」
この時コロコロと笑いながら話しているマオだったが、僅かに頰が赤くなっていた。
「そっか〜それもそうだね。
じゃあ、勇者と魔王のユウマオコンビだ!」
ユウはそう言って楽しそうに笑った。
「ユウマオコンビか・・・勇者と魔王が揃ったなら何にでも勝てそうじゃな」
「そうだね〜正に無敵だ!」
こうした会話を続けながら二人は次元に裂け目がないか探し続けて歩いていた。
長い時間が流れても二人でいるなら平気だった。
いつしかお互いに必要としあう関係になっていた。
もし、離れてしまったらどうしようか?
そんな不安からいつしか2人は手を繋いで行動するようになっていた。
そうしてどれだけの時間が経ったのだろうか・・・長い旅路の果てに彼女達は次元に空いた穴を見つける。
「やっと見つかったね」
「そうじゃな」
「これで終わりだと思うと寂しくなるかも」
「そうじゃな」
「でも、向こうに行っても一緒にいてくれるよね?」
「ああ、もちろんじゃとも」
「せーので飛び込んで・・・絶対に手を離さないでね」
「ああ、絶対にユウの手を離したりせぬよ」
「ねぇ、僕ここに一緒に来たのがマオで良かったよ」
「妾もユウと一緒で良かった、ありがとう」
「僕の方こそありがとう・・・もうそろそろ行かないとね」
「そうじゃな・・・行くとするか」
名残惜しげに会話を繰り返していた2人だが遂に覚悟を決めた。
『せーの!!』
2人で一緒に次元の穴に飛び込んだ。
前後左右の感覚も分からず、でも何処かに落ちていく感覚はした。
自分たちはどうなるのか不安もあった。
それでも二人を繋ぐ手の温もりは彼女達に希望を与え続けていくのだった。
ここで明かさなかった2人の会話やマオのある行動の理由はネット配信のお便りコーナー辺りで明かしていく予定です。