七転八起子の調査報告書 2
目の前で盛大に顔から転倒した女神にどうすれば良いのか分からずに呆然としてしまう。
その様子を見ていたユウ先輩とマオ先輩はスッと横について立ち上がる補助をし始めた。
「ほら、お婆ちゃん無理しちゃダメだよ」
「最近ポンコツぶりに磨きがかかっておらぬか?」
「うう・・・全く言い返せない」
顔を押さえながら立ち上がるルーナ先輩には先ほどのような神々しい威厳は全くと言っていい程に無くなっていた。
「ええっと、大丈夫ですか?」
「ええ、全く問題はありません。
それよりも今日は聞きたいことがあったのでは無いのですか?」
私はルーナ先輩の言葉に衝撃を受けた。
まだ何も話していないにも関わらず、私が何故ここにきたのか分かっている口ぶり。
先ほど消えかかっていたオーラが戻ってくるのを感じる。
「まぁ、普通に考えれば分かるじゃろう。
チャンネルの事じゃよな?」
「あれだけ普通じゃ無いことが起こってたら分かるよね」
「貴女達は少し黙っていてくれますか?
あまり難しいことを言ってもしょうがないので簡単に説明しますが、それは神の奇跡です。
八起子さんのチャンネル・・・というよりも私達、全体に悪意あるものが認識できなくなる阻害魔法がかかっているのです」
・・・なるほど。
簡単に説明してくれると言った割には全く分からない!
「お主は説明が下手じゃのう・・・見よ、八起子の顔を。
全く分かっていない表情をしておるでは無いか」
「もっと噛み砕いて説明すると八起子を踊と認識できない魔法がかかってるんだよ。
後、悪意のある人達が僕達のチャンネルを閲覧しようとしても見つからないようになってるんだ」
「え!?そんなこと出来るんですか?
さすが女神様!!」
「ふふふ、もっと褒め称えて良いのですよ」
私が尊敬の眼差しで褒め称えていると、横からマオ先輩が冷たい眼差しでルーナ先輩に向ける。
「お主は何もしてないであろうに」
「このコネクションは私から繋いだのですから私のおかげですよ!」
「どういうことなんです?」
2人のやりとりが分からずに首を傾げる。
「簡単に言うと、浮気性の神様がしょっちゅう下界に降りて女性にちょっかいをかけるんだ。
で、その人は今度はV業界に目をつけて自らデビューして色んな女性にコナをかけてたんだよね。
私達のところにも来たんだけど、その時点でその神様を知っているルーナが奥さんに通報。
そのお礼にって私達に変な悪意が来ないようにブロックする加護が与えられたんだよ」
「まぁ、またちょっかいをかけてきた時にすぐ分かるようにする為の策だと言っておったようじゃがのう」
「全ては奥さんに報告した私の手柄というわけです」
ルーナ先輩はそう言って胸を張るのだが何故だろう?
完全にこの人が凄い人に見えなくなってしまった。
「なるほど、そういうことだったんですね」
口ではそう言いながら超常現象すぎてサッパリ分からない。
分からないがそう返答するしかないだろう。
「さ、疑問も解消したところで折角だし何かコラボ放送でもやりますか」
「うむ、会社にいるわけじゃしのう。
ゲリラ配信というのも悪くない」
「ほら、ボーッとしてないで八起子も行きますよ」
流れについていけずにいた私の手をルーナ先輩が掴んで引っ張る。
最初は女神様だと思ってたのにオーラがあったり無かったりよく分からない人だけど・・・
「ふふ」
思わず笑いが込み上げてくる。
一人で配信している時には絶対に出来なかった仲間達。
その存在を強く感じた私はこの会社に入って良かったと心から思う。
・・・ちなみにこの後行ったゲリラ配信で麻雀をやったのだが、私は運が良くトップになった。
最後はルーナ先輩に数え役満を出してしまったのは本当に申し訳なかった。
あの神様の浮気癖が出たので、多分ヴァーチャル座とかいう星座が増えていると思います。