根田踊の調査報告 2
2022/09/08 誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
「それで今日行う袋整理の袋ってその机に置いてあるものですか?」
私は気を取り直して机の上に置いてある大きな袋を指さした。
モデルと全く変わらない人物が出て来てビックリしたがまだまだ想定内である。
むしろ明らかに子供である魔王ことマオのような人物を働かせていたり晩酌配信などやらせている事の方が問題だろう。
その辺りを責めてみるのも面白いかもしれない。
「このネタで一気に有名になったりして・・・うへへ
」
自分で質問した事も忘れて妄想に耽っていると目の前を黒いものが行ったり来たりしているのが見える。
「うん?なにこれ?」
目の前で動く黒い物体を掴む。
すると、隣から
「ひゃっ!?」
という声が上がった。
掴んだものはその声のする方向に繋がっており、その先には先程妄想に耽っていた当人であるマオがいた。
「ほら、そうやって悪戯するから反撃されるでしょ」
「仕方ないであろう、何か考え事をしておったようで・・・っていつまで妾の尻尾を掴んでおるのじゃ!」
マオの叫びに咄嗟に掴んでいた物を放すとそれはシュルシュルと音を立てながらマオの後ろ、正確にはお尻の方に向かっていった。
「え?今のって・・・」
「いきなり尻尾なんて出すから驚いてるじゃん。
ごめんね」
「いや〜どんな反応をするのか見てみたくなってのう。
すまなかったのじゃ」
そう謝るマオの後ろではヒラヒラと黒い尻尾が揺れている。
(あれって、どう見ても本物な気がするんですけど・・・いやいや、そんなわけないでしょ!)
一瞬心が流されてはいけない所に流されそうになるがそんなのは認めない。
これにだって何かのトリックがある筈なのだ。
自分を奮い立たせてる間にユウが何やら袋を持ってゴソゴソと漁り始めた。
「とりあえず今日紹介しようと思うアイテムを出してみるね」
「!!??」
私はその光景を見て驚きのあまり声にならない声をあげていた。
袋から取り出されたのは、明らかに袋よりも大きなもの。
よく物語で屋敷に飾ってある騎士の全身鎧が出て来たのだ。
「のう・・・妾、これに見覚えがあるんじゃが」
「あはは、倒したら動かなくなっちゃったから高く売れるかなって袋に入れてみたんだよね。
でも、その事をすっかり忘れて今に至るという」
「これは魔力が切れておるのかのう・・・どれ」
マオが鎧に手をかざすとそこから光が溢れて鎧に吸い込まれていく。
すると鎧はカタカタと震え始めた。
「えっ?ええっ!?」
目の前で繰り広げられている光景がまるで信じられない。
私の中の常識が崩れていって驚くことしか出来なかった。
と、その時!
鎧は突然こちらに向かって一直線に向かってきた。
「ひいっ!?」
私は思わず頭を抱え込んでしゃがみ込んでしまった。
あんな大きくて硬いものがぶつかったらどうなるのだろうか?
自分の身に降りかかるであろう衝撃に備えていたのだが幾ら待てども何も起こらない。
「ええええ!?」
そっと顔を上げると何とユウが動く鎧と両手を掴み合い、がっぷり四つになって対峙していた。
「マオが変なことするから暴走してるじゃないか!」
「うーむ、どうもこの姿のせいで制御が上手くいっていないようじゃ。
ちょっと待っておれ」
マオがそう言うと同時に彼女が光に包まれる。
そしてその光が収まると中からマオを大人にした美女・・・晩酌配信で見た大人バージョンのマオが現れた。
「もう手を離してよいぞ、ユウ。
その鎧は完全に妾の制御下に入った」
その言葉を聞いたユウが手をゆっくりと放す。
すると鎧は私の前までやって来てぺこぺこと土下座をし始めた。
「本当にすまんかったのう」
「全くだよ。
怖がらせてごめんね」
「い、いえいえ。
全く問題ないですよ・・・改めてコラボ放送よろしくお願いしますね」
ユウとマオが差し伸べる手を持って立ち上がりながら私が考えていたのはこの2人は本物だったという事。
そして、何とか今日の放送を無事に終わらせて家に帰ろうという事であった。