不穏なコラボお誘い
Vの世界に限らずであるがネットの世界にはわざと炎上するよう事をしたり、他人のスキャンダルをネタにして自分の名前を売ろうとするものがいる。
そのような人物は大抵、その瞬間は話題になっても本人の実力が伴わないので自然と消えていくものだが・・・
「ふーん、根田踊ちゃんねぇ」
ユウのスマホ画面を見ながら里中は興味無さげにつぶやいた。
「私達の袋整理企画の大ファンらしくて是非その企画を生で見てみたいってコラボの依頼が来たんだけど」
「調べたら出てきましたが、最近デビューしたVだそうです。
個人勢で他のVのスキャンダルを集めて発表し、独自の見解で茶化すスタイルみたいですね」
「予想通りとしか言いようがない活動してるわね」
「やっぱり断った方がいいのかな?」
先日、踊からコラボの誘いが来たユウ。
コラボに関しては全てマネージャーである唯に報告していた。
いつもは予定を見てこの日なら大丈夫ですよと返事をしてくれるのだが、今回に限っては少し待ってくださいとの事であった。
暫く待っていると事務所に呼び出しを食らって今に至るというわけである。
ずっと面白く無さそうな顔をしていた里中だが、唐突に悪い顔になるとポンッと手を叩いた。
「いいじゃない、やりましょう!」
「え?いいんですか?」
驚いたのは唯の方である。
通常このようなゴシップネタを扱うVは近付けない。
それはパパラッチをスターの家に招くようなものだからだ。
だが、里中は敢えて懐に入れようと提案しているのだ。
「ええ、もちろんよ。
彼女を中心としたアンチスレを見た結果は本物の勇者と魔王気取りとか、マオちゃんはロリを気取った成人とか色々書かれているもの。
挙句に中身は全く別物でブスとかバ美肉とか言ってる人達までいたのよ。
失礼しちゃうと思わない?」
「ええ、思いますけど・・・彼女とコラボするのはそこに火を注ぐことになるのでは?」
「逆よ、逆。
だってユウちゃんとマオちゃんは見た目通りなんだからこき下ろしようが無いわ。
それに期待って言ってるのは袋企画なんでしょ?
どうせ向こうはありもしないアイテムを妄想で語っているだけだと思ったんでしょうね。
ここに本物のアイテムが出てきてるなんて思わずに・・・」
里中の言葉に唯がハッとした顔をする。
「そう言えばそうでした!
他のVと違ってユウちゃんとマオちゃんは本物の勇者と魔王。
更にモデルもそのまま本人を使っているからその辺りの噂は全部払拭できる。
そして本物の勇者魔王グッズが出てくる袋企画なら・・・」
「ゴシップのつくり用が無いわよ。
それでもガタガタ抜かすならマオちゃんの変身でも見せてあげなさいな。
それで黙るなら良し。
まだイチャモン付けてくるなら正々堂々と論破してあげればいいわ。
何せこっちは何一つとして偽っていないんだから」
「うわっ!
悪い顔してますね、おじさん。
でも面白くなってきました!
そう言うわけでユウちゃん、コラボの件はオッケーだから2人のスケジュール調べて空いてる所送るわね」
そう言って唯はウキウキで事務所の奥に引っ込んでしまった。
「えーっと・・・つまりいつも通りにやればいいって事かな?」
「そういうことね。
存分に楽しんでらっしゃいな」