#蝶子の部屋 〜ナコゲスト回 3〜
「自分の所のトラブルは色々あったっスけどね。
その中でも印象に残ってるのはアレっすかねぇ。
ライブハウスやバーは自分たちでイベントを行う以外にホール貸しってのもやってるんスよ。
何時間幾らで貸しますって感じっスね」
・あるある
・大型ホールとかと同じだよな
「そういうのよく聞くわね。
確か私の所のお客さんもイベント関係のお仕事しててあの場所を押さえたことがあるとか自慢してたわ」
「自分の所は規模が小さいっスけどね。
それで各ホール借りる時のプランってのがあるんスよ。
店の機材を使うか持ち込むか?
店のスタッフを雇うか雇わないか?
そういうのが料金に関わってくるんスね」
・ふむふむ
・なるほどなるほど
「見張りとして店員が1人導入される場合はドリンク出しに回る事が多いっス。
この場合はワンドリンク制を導入しており、ドリンク・・・だいたい一杯500円分は店の取り分になるっス。
追加のドリンクもっスね」
「そんなシステムになってるのね。
内側に入る事が無かったから知らなかったわ」
「店が主催するイベントなら常連しか来ないなぁなぁなイベントが多いんでPA・・・要は音響機材の操作なんスけど、お店側がやる事が多いっス。
それとドリンクの係合わせても常連さんだからタイミングとか分かってくれるんスよ」
「ふむふむ。
知らない世界の話だから面白いわね」
「さっきも話した通りに自分の所は小さいライブバーなんで機材も最低限しか無かったんスよ。
だから地域でもかなり格安で貸してたんスよね。
そのままで良い人もいれば自分たちで機材持ってきてご自由にってパターンっス。
但しスタッフを自分達で用意できずに店側に用意させるなら追加料金がかかるって感じっスね」
・うんうん
・何となく嫌な予感はしてきた
「そのトラブルの日は自称かなり音に拘りを持つイベンターさんだったんスよ。
更に東京から自分が目をつけてお願いしたアーティストもお呼びしますってぐらいに気合が入ってたっス」
「私のお客のイベンターさんみたいな感じかしら?」
「多分本質は全くの別物っスね。
最低限の料金しか払わなかったんで自分1人、ドリンク出しのみというスタッフプランだったんス。
更に機材は自分は持っていないから店にあるものを使わせて欲しいと。
この時点で自分の中では怪しさがあったんスよ」
「確かに前の話通りに音に拘っているなら自分で音響機材を持ってきそうなものよね?
店の物を確認してなかったとか?」
「いや、自分のライブを開くと言う事で前もって他のライブを見に来てたりしてたっスよ。
それで当日になってから自分達は音楽しかやらないから、他の細々とした事は全部お願いしますって言ってきたんスよ。
自分は店のイベントで確かに機材を扱っていたけど素人に毛が生えたレベルの人間っスよ。
東京から来た二人組の音が割れて何で何だろうとか言われても、自分達で持ってきた機材をギターの間に挟んでるから分からんのでスよ」
・いやいやいやいや
・それは主催者バカだろ?
・ありえん
「その日打ち上げまで予約してたんでスタッフいなくてライブ失敗ってのも困ったんで最後まで自分はやったっスよ。
受付やってドリンク出してPAやって新規のイベント何で、店の場所が分からない人の電話がしょっちゅうかかってきてその度に電話に出たっスよ」
「それは地獄のような忙しさね」
「当然進行スケジュール通りにはいかないっスし、音響もながらなんで全然上手くいかないっス。
結果、イベントは観客が望んだようなクオリティには全く届かなかったっスよ」
「それは本当にご苦労様ね。
でも、ナコちゃんが悪いわけじゃないんだから」
「ところが主催者はその責任を自分1人に押し付けてきたっス。
挙句にこんな失敗したライブバーで打ち上げなんて出来ないって客連れて帰っちゃったっスよ。
こっちは事前に料理も用意してたのが全部パーっス」
「なにそれ?
あまりにも酷い話じゃない」
・最悪だろ
・ヤバくない?
・予約ブッチはよく聞くけど、それより酷いな
「主催者が大言吐くような人物だったんで客は信者が多かったんスよ。
それで誰一人としてその人の言う事に疑いも持たずに・・・」
「本当に酷い話ね。
同情してしまうわ」
「話がこれで終われば良かったんスけどね。
その人は自身のブログなどでライブの失敗を謝罪する内容を書いたんスけど、さっき話した通りに私に全責任を押し付ける形で報告したっす。
その結果、店に文句言いにきたり、不満を言う電話がかかってくる事が増えたっス。
結局話し合いの末に別のライブハウスを借りて合同でイベントをすると言う形で和解すると言う案になったんスけど、そのライブ会場を借りる料金は全部私が支払うことになったんスよ。
結果的に働いたのに大損こいたっスね」
「え?
それ本当の話なの?」
・そいつヤバくない
・やり方が詐欺師じゃん
「まぁ、自分から見たら詐欺師ッスね。
それ以来その人とは関わらないようにしてたっスけど、あれが店をやってて1番のトラブルだったっスよ」
「本当によく頑張ったわね・・・何か涙が出てきちゃったわ」
「もう終わった事だし、その仕事もやってないんで気にしないでいいっスよ。
流れ変えるためにも次の質問にいくっスよ!」
五万円払わされたのでこの仕事辞めようと決意した瞬間です。