新たな新人V登場
「この子が今度ウチからデビューする事になった新人ちゃんよ」
社長の里中に言われて紹介された女性はショートカットで如何にも活発というイメージの女性であった。
何処となくここにきた頃のユウを思い出すかもしれない。
「新人の白船ナコっス!
よろしくお願いするっスよ、先輩方!!」
そう言ってナコと名乗った女性は二人に元気よく頭を下げた。
「僕は田中ユウ。こっちは」
「田中マオじゃ。よろしくのう」
「この子はちょっと特殊な環境でいま週6でコンビニの夜間のバイトしてるの。
それで配信時間は帰ってきてからの朝から昼がメインになる予定よ」
「休みの日なら1日配信出来るっスけどね」
「そんなに忙しいのに配信の仕事大丈夫なの?」
「うむ、本業だけでも忙しそうじゃのう」
ユウとマオが尋ねるとナコは胸をドンと叩いた。
「任せてほしいっス!
自分、多い時は仕事を4つ掛け持ちして40時間くらい寝ずに仕事しっぱなしでも割と平気だったんで」
ナコの言葉を聞いて里中はため息をつく。
「嘘みたいな話しだけど偶にいるのよ、こういう子が。
それで知り合いの親御さんから相談されてウチで預かるようになったのよ」
里中の言葉に2人は首を傾げた。
「え?そんなに無茶するなら配信やらせないほうがいいんじゃないの?」
「うむ、仕事を掛け持ちするのと同じじゃからの」
「逆よ逆。
この子、仕事している間は連絡が全くつかなくて様子が分からないのよ。
でも、配信してたら様子が分かるし連絡も取りやすいでしょ?
あまりに長引きそうならこちらでストップをかければいいわけだしね」
「自分は平気だって言ってるんスけど周りが心配するんスよねぇ」
「貴女みたいなタイプは急に電池が切れてポックリ逝くのよ。
その若さで死にたくはないでしょ?」
「確かにそれは嫌っス。
社長、先輩方!
お世話になるっス!!」
ナコはそう言ってその場にいる全員に頭を下げた。
「見ての通り悪い子じゃない・・・どころか寧ろ良い子なのよ。
でも、他人に尽くしすぎて自分の限界が分かってないのよ。
貴方達も注意して面倒を見てくれると助かるわ」
「他人に尽くしすぎるって?」
「掛け持ちしていた仕事の内3つは頼まれて引き受けたから。
奇跡的に全部の仕事時間が被っていなかった代わりに本人の寝る時間が殆ど無かったらしいわ」
「なるほど、そう言うタイプじゃったか」
全員がジトっとした目でナコを見つめるが本人は全く気にした様子がない。
「何だかよく分からないけどこれからよろしくっス!」