川崎の狂犬を愛でる 4
「最初とラストのライブパフォーマンスとか見ても分かるけど、やっぱり心境の変化が齎した物を描いてたりするのかな?」
「そうだと思うっすよ。
実際、狂犬ちゃんは負の感情を感じた時に黒いトゲが出る演出があるっすけど、後半は前半ほどは出てないっすからね」
「家庭の問題が解決したり、メンバー内での理解が深まったこと。
後は……ギターと最愛のパートナーと言っていいくらいの関係性を築けたこと。
そういう点から、かなり安定した環境に置かれているのは間違いなく関係あるでしょうね」
実際のところ、狂犬と呼ばれるような行動の主な部分は前半に集約している。
後半も突拍子も無いことをするにはするのだが、前半ほどでは無い。
「あと、ネットで見かけた意見を集めていると、主人公が暴れている時の行動を無茶苦茶と言いつつも共感している人が多い気がするね。
下手するとドン引かれたり、面倒くさい性格が嫌われてもおかしく無いと思うんだけど」
「狂犬ちゃんって怒りのボルテージが上がるのが早いのと、それでキレた時に行う行動にブレーキが無さすぎるってだけなんすよね。
怒りは誰しも感じるし、それで暴れたくなることもある。
あの子はその視聴者が思っていてもやれないことの代弁者なんすよ」
「誰もが心に狂犬を飼っているなんて言われ方もしていましたね。
だからこそ、共感を得て人を惹きつける魅力のあるキャラクターになっているのでしょうね」
「そう言えば思ってたけど、キレる前に周りに配慮する部分もあるから、割と理性的なキレ方するよね。
あの暴言のところも、汚い言葉吐き出しそうだから一旦無意味な叫びをするって言ってからのアレだし」
「そうなんすよね。
放送室ジャックの前も一礼して去っていくとか、キレてるんすけど、それはそれとして冷静な部分もしっかりあるっていう。
そういうところで見ている側も印象が緩和されて受け入れやすいってのはあると思うっすよ」
「まぁ、この子のフィギュアは10割が怒りしかない珍しい作りになっていますけどね」
満を持して発売された狂犬ちゃんのフィギュアであるが、その表情は怒りに満ちており、この手の美少女フィギュアとしては他に例の無い作りとなっている。
人によっては魔除けになるとか、中指や小指を立てているパーツを欲しがっている人もいるのだとか。
「そんな訳で前のガールズバンドアニメとも比較してきたっすけど……結論としては本当によく出来ていて面白いアニメっすよ」
「ストーリーとしてもライブパフォーマンスとしても、もっと評価されていい作品だと思いますね」
「そうなんだ……因みに二人はこのアニメの曲って出来る?」
「出来るっすよ。
今度配信でやりましょうか?」
「あ、それいいかも。
ユウ先輩のリクエストっていうのは最後に明かす感じでやろっか」
こうして、2人の次回配信の予定が決まり、セットリストを話し合いながら3人の時間は楽しく過ぎていったのであった。




