夢の国は人でいっぱい……だった
「あれ?」
グリーティングから出てスマホを確認したユウが疑問の声を上げる。
その画面には今までとは違った明らかな変化が起きていた。
「どうしたのですか?」
「人気アトラクションの待ち時間が軒並み1時間切ってる」
「ふむ……言われてみればお客の数も少なくなったように思えるな」
お昼の時には道いっぱいに人が広がっていたものであるが、現在は疎にしかいない。
どう見ても空いているという状態であった。
「お客さん、帰っちゃったのかな?」
「ふむ……考えてみれば外国人の旅行客が主だった訳じゃからな。
その者達は東京観光に来ておる訳じゃから、1日を夢の国で費やすという事はしないのかもしれぬのう」
「確かに……私たちなら一日遊び尽くそうとなりますが、観光客ならば夜は別の場所に行って東京名物の料理を食べたいとかなりそうですね」
外国人観光客の量は明らかに減っているように見える。
また、ベビーカーを押していた家族連れの姿も少なくなっているため、この辺りの人達が帰っていった影響によるものであろう。
何にしても閉園まで遊ぶと決めていたユウ達にとっては渡りに船というやつである。
「よし、こうなったら避けてたデッカいのに乗ろう!」
という事で、ユウの音頭と共に先ずは大きな山のアトラクションへと向かい、トロッコ型のコースターへと向かった。
昼に時間を確認した時には100分前後だった記憶があるが、今はその半分以下の40分まで短縮されていた。
それも少し多めに見繕ってあるため、実際に並ぶと30分を少し超えたくらいでアトラクションを楽しむことが出来たのである。
とはいえ、もう間もなく閉園時間である。
最後は一番新しいアトラクションである美女と呪われた王子の物語を追体験できるアトラクションへと向かう。
着いた時には200分待ちであったのだが、こちらも大幅に短縮されて1時間経ちとなっていた。
「私、今日はこのアトラクションは諦めてましたよ」
「それは僕もだよ。
何ならこっちもお金の力で解決しようか悩んだくらい」
「流石にショーに使ってこちらもとなると贅沢じゃからな」
ショーの時と同じように、人気アトラクションの優先権はお金で購入することができる。
しかし、一回の料金が割高であるので使うのは一回くらいにしておきたい……出来るならば使いたくないというのは誰もが思う事であろう。
1時間くらいであれば三人で話をしていたらあっという間である。
こうして一番目玉のアトラクションに乗った三人はホクホク顔で帰路へとついた。
閉園時間までいると混みやすい駅でも、思ったよりは人はおらず、思いの外快適に帰ることが出来たのだった。




