夢の国は人でいっぱい 3
結果的な話をすると、ユウ達は抽選が外れた筈のショーの観客席にいた。
それも前から7番目というほぼ最前列と言っていい距離である。
「なんか罪悪感がありますね」
響子はそう言いながら申し訳なさそうに席に座った。
「使える機能を使っておるだけじゃから、ドンと構えておけば良いのじゃよ」
「そうそう、その分お金を積んでるんだから」
恐縮する響子とは対照的にユウとマオは堂々と席に座る。
そう、裏技とは何でことはない話で……単純にお金を出して席を買ったのである。
勿論、転売のようなルール違反の方法ではなく、公式のルールに則った方法である。
最近の夢の国では、お金を追加して払うことで人気のアトラクションやショーの優先権を購入できるというサービスが始まっていた。
ショーに関しては一人2500円と高額ではあったものの、そもそもこのクオリティのショーが無料で観られていたことがおかしいという考えから、お金を払うことに抵抗はなかったのであった。
「そもそも、お金を出した僕たちがこの席になったってことは周りの人も同じな可能性はあるよ」
「うむ、この前の席自体が課金席なのであろうよ」
「……言われてみたらそうですね」
席は全てがぎっしりと埋まっているのだが、課金席を販売している以上、その席の枠は抽選とは別に空けてあるはずだ。
ならば、この前の席に座る人たちはそういう事なのであろう。
「アトラクションは最悪待てば乗れるんだけどね。
ショーはそうはいかないから」
「お金を払ってでも観たいクオリティじゃから仕方ないのう」
「そう考えると課金席も悪いことばかりじゃないですよね。
確実にショーが観られる手段があるのは嬉しいことですから」
一部ではこの課金制について否定的な意見もある。
しかし、何度も来れる都心在住ならばともかく、地方から遠征に来たお客さんなどは、多少お金を出してでも効率よく回りたいものであろう。
事実、大阪にあるもう一つの巨大テーマパークでは早くからこの方式が採用されている。
そして、夢の国でもこの方式を採用して欲しいという意見も少なく無かったのであった。
結局のところ、夢の国でもお金の話を持ち込みたくない人間と、夢の国だからこそ貴重な時間をお金で解決したい人間の平行線の争いなのであろう。
三人の話はそんな難しい問題に発展…….することはなく、間もなく始まるショーに集中する構えを取るのであった。