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ある日のルーナの一日

2022/09/08 誤字報告受け付けました。

いつもありがとうございます。

とある日、ルーナは配信をお休みして出掛けていた。


出掛けたと言っても普通のお出掛けとは違う。


彼女は特別仲が良くなった神様に招かれてお茶会に誘われていたのだ。


神界の一角にある屋敷に向かうと、その屋敷の主人であり自分を招いた神の一柱が出迎えてくれる。


「よく来てくださいましたね、異世界の女神よ。

いえ、今はルーナさんでしたね」


一見すると人当たりの良い翁にしか見えない。


しかし、身体の奥から溢れる神気は彼が只の一柱でないことを雄弁に告げている。


彼の周りでは巫女服を着た多数の女性が忙しそうに仕事をしている。


「お招きいただきありがとうございます。

・・・大変に忙しそうに見えますが宜しかったのでしょうか?」


「これはお恥ずかしい。

しかし、今は繁忙期を過ぎて日常が戻りつつありますのでどうぞお気になさらずに」


「そうなのですね。

それではお言葉に甘えさせていただきますわ」


翁に案内された先は屋敷の庭の軒先であった。


この庭には年中問わずに常に立派な梅の木が咲いており、その梅を見るのに最高のスポットである。


ルーナも何度か招かれる中で一番気に入っている場所だ。


軒先には座布団が用意されており翁はその場所に座るように促す。


ルーナがその場所に座り正面を向くと、そこが一番梅の木を見るのに相応しい場所だという事がはっきり分かった。


「ふふ、素晴らしいですわね」


「おや?何か愉快な事でもありましたかな?」


「日本の神々のこのように奥ゆかしい所は非常に好感が持てますわ。

決して前に出る事なく、それでいて陰ながら最高のおもてなしを提供する。

それを話しても驕るでも謙遜するでもなく極自然に対応する姿は同じ神として見習いたいものです」


「はっはっはっ、我々は極当たり前のことを当たり前にしているだけですからな」


ルーナの言葉も自然に受け止める。


この最上の持て成しを受けながら何一つとして気遣う必要のない空間は彼女がこの世界に来てから最も好むものの一つであった。


ふと気配を感じて翁のいる方向と逆の方向を見ると、そこにはお茶と和菓子が置いてあった。


それを運んできた女性と目が合うと、彼女は焦るでも気負うでもなく自然と頭を下げ一礼をしてから去っていく。


「ありがたく頂きますわね」


「どうぞ、ご遠慮なさらずに」


ルーナが湯呑みを持ち口に運ぶ。


お茶は熱すぎず、さりとて温くもない。


彼女がいま一番欲している温度に調整されていた。


湯呑みを置き横にあるお茶菓子を見る。


白い餅に梅の木が添えられたお菓子。


口に含むと中の餡子の甘さが程よく、彼女に満足感を与えてくれる。


次いで先ほどのお茶を口に含むとその甘さを消してスッキリとさせてくれる。


もし、これが招かれた場所でなくお土産品としてこの餅を買っていたら餅とお茶で無限に食べれそうである。


「大変美味しく頂きましたわ」


「満足頂けて何よりです」


その後、庭の木を見ながら翁と様々な話をする。


と言っても神々の特別な話と言うわけでもなく、最近はこう言ったものが流行りだとか、神界ではこのようなものが好まれているといった実に他愛のない話である。


「おや、もうこのような時間ですか」


翁が壁に掛けられている時計を見る。


この時計は下界の時間に合わせてあるがその針は西を真っ直ぐに指していた。


「あら、それでは今日はこれでお暇させて頂きますわね。

あ、それとこれは頼まれていたものです」


ルーナは何処からか紙袋を取り出すと翁に手渡した。


「これはこれは、いつもありがとうございます」


「いえ、こちらこそいつもお招き頂きありがとうございます。

それではまた時間が合いましたら」


別れの挨拶を告げ屋敷を後にする。


下界に続く門の前には翁の使いが立っていた。


「主人からこれをお渡しするようにと。

ご家族、同僚の方の分も用意させていただいております」


彼女はそう言って紙袋を手渡してきた。


「これはこれは、最後までお気遣いありがとうございます。

とても喜び礼を言っていたとお伝えください」


ルーナは深々とお辞儀をすると門を潜り下界の自分の部屋に戻った。


このお土産の中を家族とワイワイ話しながら食するのを想像して笑顔になりながら。




〜おまけ〜


「これはどちらに飾りましょうか」


「そのタペストリーは其方側に。

このタペストリーは彼女とセットなのであの女性の横にお願いします」


ここは翁の趣味の部屋。


そこには様々なVのグッズが飾られていた。


人から神の身になった彼は下界の流行りにとても敏感であった。


「最近はあの放送で勉強するというものもいるという事で覗いてみましたが想像以上に面白いものでしたね」


部屋の中央に腰掛けてちゃぶ台の上に置かれた湯呑みを取り一口含む。


そうしてから目の前のモニターを映すと彼のお気に入りの配信が始まり出した。


「まさかこのような知り合いが出来てグッズが手に入るとは、神としての生も何が起こるか分かりませんね。

この縁は大切にしなくては」


そう言って手元にある餅を口に入れる。


モニターには田中家が楽しそうに遊んでいる様子が映し出されていた。

翁の正体はご想像にお任せします。

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[一言] どこの右大臣なんだ…
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