異世界で流行る遊び
ユウとマオが元いた異世界。
長い間続いていた戦争は終わり、人族と魔族は和解しあい互いを尊重する良きパートナーへと変貌していた。
その最大の功績は毎夜、窓や鏡、汲んだ水などに映る2人の配信であった。
更に最近はその配信に自分たちの崇める女神様まで加わっていた。
女神様は各教会の司祭に本日の配信予定を御告げし、教会は大々的にそれを発表する。
時間になると女神像の目から光が飛び出し、壁に配信を映し出す。
それは女神の使徒として祀られることになった勇者と魔王の像も同様であった。
この為に映像出力用に新たな像が作られ、各像を配信が映しやすい壁で囲んで一つの部屋にするという工夫が取られた。
部屋の中には椅子があり、その部屋は人々に向けて無料で開放された。
それは宛らプロジェクターを備えた視聴覚室と言って良いだろう。
更に女神、勇者、魔王の像として教会から祝福を受けた像は同様の機能を持つことから望むものに教会で販売されることになった。
教会として無料で配りたいところであったのだが、数を確保するのが難しいため、欲しい人間がかち合ってしまった時にどちらが多額の寄付を納めれるかというオークション形式になってしまうことがあった為の苦渋の決断であった。
最も教会がお金を徴収しようとも、その集めたお金を戦争で疲弊した者たちへの慰撫に使っていた為に人々から反発の声は一切上がらなかったが。
この女神たちの配信で一番変わったことは人々の文化のレベルが上がったことであろう。
ユウがよくやっているテレビゲームというものはよく分からないが子供達に非常に好まれていた。
崇高な絵画が描かれる一方で三人のアバターを参考に漫画調の絵を描く者も現れ始める。
これらの支援に教会はかなり乗り気であり、数々の漫画絵が聖絵として祀られることになった。
そして、この世界でいま最も人気があるゲーム・・・それは麻雀であった。
マオの配信で麻雀のルールや打ち方、理論の基礎を教えた配信は大変に人気があり、それらをまとめて麻雀のルールを伝える本が発売したところ大ヒットしてベストセラーとなった。
教会でも女神が嗜むゲームのルールを解説しているということで聖書として認定されるほどであった。
木工職人達は麻雀の台と牌を製作することに尽力する。
麻雀は貴族から庶民まで嗜むゲームとして知られ、教会が主催で大会まで開かれるほどの盛り上がりようであった。
大会では貴族や平民、人族や魔族に関係なく誰もが平等に楽しんだ。
そう、人々は麻雀というゲームを通じてまた一つ強固な絆を得ていったのである。
「・・・それで麻雀を覚えようと思ったのですか?」
「私が返り咲いて民衆に誰が一番上に立つに相応しいかを思い知らしめる良い機会であろう」
「まぁ、大会は誰でも自由に参加できるらしいですから監視付きでならば参加できるかもしれませんね」
「必ず優勝して人々に誰が王か思い出させてやろうぞ」
「どうぞご自由に・・・あ、それロンです」
「なんじゃと!?」
懲りない人もいるようではあるが。