デビュー決定の日〜過去編4〜
誤字報告受け付けました。
いつもありがとうございます。
里中は再びパソコンを操作して天照子の配信に戻す。
画面の中の女性は色々なことを喋っていた。
「これ、右側で流れていく文字がわかるかしら?」
「えーっと、このどんどん流れていく言葉かな?」
「これは・・・この女性に対するリアクションかの?
これを見ている者たちと会話しているのかえ?」
マオの言葉に里中は驚く。
「マオちゃんって本当に飲み込み早いわね。
というか、今更気が付いたけど言葉が通じるし読めるのね」
「そう言えばそうだね。
珍妙な文字だけど何でか読めるし話せるや。
マオは分かる?」
「ふむ・・・そもそも、魔族である妾と人間であるユウも元々は言語に違いがあるはずじゃが問題なく通じておるからの。
こればかりは妾達の世界の加護としか言いようがないのではないか?
まぁ、通じたから困るという話は無いし気にする必要もなかろう」
「確かに!こうやってマオや里中さんとしっかりコミュニケーション取れるんだからもんだいないか!」
そうお気楽に考えていた2人に里中はあることを思いつき、コメントを拡大してスクロールさせる。
「貴方達、これは読める?」
「え?全然わかんないや」
「妾も分からんな」
「英語はダメなのね。
これはこの国とは別の言語なんだけど」
「ええ?じゃあ、ちゃんとした言葉なんだ?
何で読めないか分かる?」
ユウの問いかけにマオは考えながら話す。
「あくまでも仮定の話じゃぞ。
恐らくじゃが、元の世界から離れたことで加護が殆ど働いてないのじゃろう。
そこで最初に話しかけてきた里中の言語を翻訳することで力を使い切ったのではないかと思う」
「あら、じゃあ私が英語で話しかけていたらか英語が理解できていたのかしら」
「確証はないがの。
現状、分析できるケースが少なすぎてそうじゃないかな?
という程度の話よ」
「海外市場はまだまだ無理かしら。
まぁ、足場が固まっていない今の状況で無理しても仕方ないし、国内での定着を目指しましょうかね。
話がかなり逸れてしまったけど、こうやって絵の皮を被って見ている人たちと会話するのが私達の仕事ってわけ。
それで見てちょうだい。
ここに色で塗られたコメントと数字があるでしょ?」
「うんうん、こういうコメントって目立って見えていいね」
「これはこの人がお金を出して色を塗ってるの。
それで出したお金は全部ではないけれど、配信者・・・今なら天照子の物になるのね。
これを投げ銭システムっていうのよ」
「ふむふむ、つまりこうして配信してお金を投げてもらうことで稼いでいると」
「もちろん、最低限は給料も出るわ。
他にも有名になれば別会社から仕事が来ることもあるんだけど・・・それはもうすこしこの世界のことを勉強してからね」
里中はそう言ってウインクする。
ゴツい男のウインクだが何故か茶目っ気があるようにも感じられた。
「しかし、このような設備を整えるのにお金がかかるのではないか?
住むところや食事など、他にもお金がかかるであろう」
「最初の初期投資は私が受け持つわ。
貴方達の住まいと機材を用意して、絵の準備もしないとね。
その間にこの世界のお勉強をしましょう!
その間も給料もちゃんと出すからそこから生活してくれればいいわ。
それで貴女達が活動し始めたらこの投げ銭からお金を返してくれればいいわよ」
「へぇ〜楽しそうかも?
それに全部やってくれてこの世界のお勉強までさせてくれるなんて最高じゃない」
「確かに良い話じゃがこの話でお主に何のメリットがある?
妾達を取り込んだ先に何を見る?」
マオの言葉に里中はクスリと笑った。
「別に大それたことは考えてないわ。
貴女達みたいなの面白すぎるじゃない!
本物の勇者と魔王をV化してデビューさせるなんて誰も考えたことないわ。
私は世の中をどんどん面白くしていきたいの。
だから貴女達の力を貸してちょうだい!!」
改めて里中は2人に頭を下げて懇願した。
その姿を見た2人の中に断るという選択肢がなくなっていたのを感じた。
「そういうことなら」
「こちらこそよろしく頼むのじゃ」
こうしてこの現代社会に新たなVtuberが誕生した。
異様に仲の良い勇者と魔王というコンビが人気を博するのはもう少し後の話である。