私はだれ?
彼は腕を組んで1つの事を考えていた。
自分がいったい誰なんだろうか。
マイネーム、イズ…………むぅ?
彼は頭を捻るが出てこない。自分が誰なのかまっったく!!思い出せない。うーーーむ思い出せないと頭を悩ませる。
此処もどこだろうか。
なんの建物なのだろう。
宗教的な場所には見える。彼の目の前には神聖そうな祭壇があり、祭壇には割れた石と優しげな微笑みを浮かべた豊満な胸をした美しい女神らしき像。ん??……女神の像に違和感を感じた。とても大きな間違いが有るような気がした。
女神像が何か気になるがモヤモヤしたまま改めて周りを見回した。この建物は教会か神殿だろうか?彼にとっては随分と狭苦しい。それに薄汚れていていると感じる。長い間掃除されてない様に見えた。
自分が誰なのかもわからない。
此所が何処かもわからない。
記憶喪失としか考えられない。
どうしようか。とりあえず、彼は視界の端でコソコソと何処かに行こうとしている誰かに聞く事にした。
声を掛けた、
「……ヒェ」
声を掛けると逃げようとした。
え、なんで?と思いながらも逃げようとしたので咄嗟に指で摘まむ様に捕まえた。
「ひゃぁああ!!?」
服を指で摘まんでぶら下げて観察する。そんな事をするから服が脱ぎかけになり上半身の下着まで見えた。ジックリ見て……恐らく…たぶん…少女……なのか?悩んだ末にそう彼は判断した。
少女だろうと認識した理由の九割九分ほどはスカートを履いていてるのを見て。
しかし少女とすると随分と小さいなと思った。全体のサイズも小さいがソコでない。少女の名誉のために具体的にどこがとは言わないが。
少女はどう見ても子供、彼は子供を摘まんでぶら下げてるのはどうかと思い降ろす事にした。
降ろされてへたりこんだ少女は言った。
「わ、私、食べても美味しくないですよ!!」
失礼なと彼は思う。
さっき半脱ぎに拘束したからと言って(性的に)喰われると思うとはなんてマセタ少女。言われた方が恥ずかしい。まったく、そう言う行為はキチンとお付き合いしてからだろうと純情な彼は思う。
彼は不本意な誤解を否定。
それから少女が誰かたずねた。
逃げようとした理由も
「ゆ、ユキナと言います。近くの村の人間です。に、逃げようとしました理由は、ですね。と…突然声を掛けられて驚きまして反射的に!お、驚いたら逃げるのは普通ですよね!?」
声を掛けられたら驚くか?そうなのかと普通に信じ自分の事を知っているかもと期待し少女、ユキナに自分が誰か訊ねた。
「ま……ご、ごめんなさい。あなた様が誰か知らないです」
うーむ。知らないのかと露骨に目が泳いでいるユキナの言葉をアッサリと信じる。知らないなら仕方ないと質問を代えて此所が何処か訊ねた。
「……此所は、村では禁断の山と呼ばれている所にある神殿です」
禁断……立ち入り禁止にでもされてる山?
それともキンダンという名前の山?
ユキナにどちらか聞いた。
「き……危険で立ち入り禁止にされてる山です」
立ち入り禁止、彼はそれなら自分とこのユキナは何故ここに居るのかと思う。立ち入り禁止の地に居る理由。立ち入り禁止なんて知ったこっちゃねぇ!!みたいな感じで入ってきた。
お互いにヤンチャな性格なのだろうか。
自分の性格も気になるが立ち入り禁止にされると言うことは相応の理由があるはず。理由が判らないと言うのはもどかしい。立ち入り禁止の理由を聞いた。
「理由、理由ですか!?えーー、それは…そ、その…禁断の山にある神殿には……遥か昔に女神さまによって封印された魔神、さまと魔神さまの封印を守護される天使さまが居ると……言い伝えられています。だから入ってはいけないと」
え、天使とか魔神とかマジかよとばかりに彼は驚いた。それに神殿、言い伝え通りなら魔神の封印された神殿とは彼のいまいる此処の事だろう。この神殿には魔神が封印されてる。そんな場所に居て記憶喪失の自分は……我は……
我は!!
…なんだろう?
何度も思い出そうとするがまるで思い出せないなと今は思い出す事を諦める。ユキナに聞いたが現在地の情報だけで自分の事はまるでわからなかった
わからないと言えば……このユキナという娘は魔神が封印されたと口に出すだけで随分と怯えた様子に見えた。口に出すだけでこれなら、ヤンチャで好き好んで立ち入り禁止の魔神が封印された神殿に来たとは思えない。気になりここに居る理由を聞いた。
「こ、此所にきた理由ですか…私の住んでいます村なのですが、盗賊に襲われまして……偶然村の外にいた私は難を逃れて……言い伝え通りなら天使さまがこの神殿に居ると思い……天使さまに助けを求めて来たんです…が」
ユキナは目を逸らした。救いを求めた天使は見つからなかったのだろうな。天使が神殿に居れば掃除ぐらいはする筈、此処の様子を見ると天使がずいぶん前から居たとは思えない。救いを求めた相手が居ないとは気の毒にと彼は思う。思うのみ。
「……お願いします。どうか村をお救いください!」
??
何故、自分に頼むのだろう。藁にもすがる思いという事だろうか。天使が居ないからと言って……天使?
彼はハッと何か気付いた。
ユキナはこの神殿に天使に助けを求めてきた。そして居たのは自分。禁断の山の神殿とすれば居るのは誰かと考えれば天使ぐらいしかない。なるほど、ユキナは自分が天使と認識したのかと彼は考えたのだ。
天使。自分は天使なのか?
彼は考えてみた。
天使……彼は自分の種族はなんだろうかと考えるが不明。鏡がないから自分の姿の全体は見えないが確認できる手足を見ると、このユキナ、人とはだいぶ違う姿なことはわかる。少なくとも人ではないとは思える。なら天使なんだろうか?
彼の記憶にある天使は無駄に輝いていていた。
彼も体の表面が赤白く輝いていている。
天使な様な気がした。
天使とは羽があるモノだったような記憶がある。
彼の背中には立派な羽がある。
とても天使な様な気がした。
天使な様な気がしてきた。
しかし違うと言う気も同時にしていた。
第三者、ユキナに思いきって聞いてみた。
「え"、自分が天使なのか、ですか???…その質問は……それにさっきからの質問も……あのまさか、記憶が無いのですか??」
彼は頷いた。
「ヒェ………そ…そうですね。あなた様は……あなたさままは……ええ、はい!…て、天使さまですよ!!私天使さまなんて見たこと無いですがきっと天使さまですね!!」(真顔)
ユキナは決して目線を合わせずにそう言った。
彼は大きく頷いた。第三者に肯定されて彼は自分が天使なんだと確信できた。そうか天使だったのか……と呟いた彼にユキナは尋常でない冷や汗を掻いてるがサイズ差から気づけない。
は!待てと何かに気付いた
天使は此処で魔神の封印を守護してきたのだろう。その天使が自身だとして、天使が記憶喪失になっていた……更に言えばこの神殿に魔神が封印されているなら相応になにか有りそうな筈なのに何もない。魔神が封印されていると思えない。
「え、はい……魔神さまの封印ですか!?……そ、そ、そうですね。えーと、はい、確実に封印からは出てそうですね」
意見が一致したとなると……やはり魔神とやらの封印が解けて解放されている、封印から解放されたあとに魔神が封印の怨みに天使の記憶を喪失させたと考えれば辻褄があう。一辺の矛盾もない名推理により事実が判明したのだ。彼の中では。
記憶喪失は魔神の仕業。
おのれ魔神め。
彼はまだ見ぬ封印から解放されて何処かに行った魔神に対して怒りをもった。
魔神のことはさて置き、なぜか頭を抱えて震えているユキナを放置したままな事に気付いた。
盗賊に襲われている話に関わる気はついさっきまで彼には無かったが、彼は天使、天使であるなら少女を助けるのが普通なのかと彼は考える。記憶が無いから天使の常識というのがわからないが、恐らく助けるのが普通だろうと思えた。それにユキナには色々と教えてもらった恩もある。
村を盗賊から助けるとして自分が盗賊相手に戦えるのだろうかと、試しに神殿の壁を軽く殴ってみた。
ゴガァァアン!!!
盛大な音と共に壁が吹き飛び大きく外が見えた。
これなら何とかなりそうだと大胆リフォームから目を逸らした。
そして盗賊の討伐に行くことをユキナに伝えた。
天使としてそれが当然だと
「うわぁ……ありがとうございます」
ユキナは嬉しいのか半泣きでお礼を言った
彼は破壊した壁から神殿から出た。
そとに出ると空は黒く曇った雲に雷がゴロゴロと鳴っていた。まるで危険な何かが外に出てしまったかの様に不吉な空模様、彼は天使なので不吉や危険とはまるで関係ない。
封印から解かれた魔神が出ていった影響だろう。
ユキナの発言から村はこの山の近く下を見れば村が見つかりそうだと思ったが見えない、遠くはともかく真下は霧のような雲で覆われ見えない。
空に黒い雲の空があるが眼下にも灰色の雲がある。雲が掛かる程にこの神殿は随分と高い山の上にあるようだ。
彼はよくユキナは登ってこれたなと何故か建物の奥に行こうとしているユキナを呼び止める。重い足取りで戻ってきたユキナを改めてみた。
ユキナの顔色は良くない。震えてもいる。此処までくるのに相当に疲れているのだろう。
此れからユキナの村に行く。
ならちょうどいい。
彼は純粋な善意から……ユキナを摘まんだ。
「な、なんですか!?」
ベロンと上着が大胆に捲れた事に顔を赤くしたユキナを手のひらの上に乗せた。
さて降りようと思う。
ユキナに降りる道を聞いた
「道はそこです、けど……」
ユキナの指差す方に山道らしいのはあるが、確りした道に見えるが通れる道でとても彼の通れる道幅はない。なら道を通らない方法で行くしかない……彼はなんとなしに、道でない断崖を見つめた。
「おおおおおおろ!おろ!お、降ろしてください!?下に降ろしてください!?」
ユキナが叫んだ。
ユキナの命の危機に直面した様な必死な叫び。
思いは伝わった。
そんなに山の下にそんなに早く降りたいのだろうか。盗賊に襲われている村の為に……ユキナの叫びはしっかりと彼に思いが伝わった。ほんの少し間違った風に伝わってるかもしれないが少なくとも降りたいと言う思いは伝わった。
ユキナが叫ぶ前は羽でどうにか飛んで行こうと思ったが彼はユキナの叫びに答えた。少しでも早く降りようと足を前に踏み出す。
「うそ!まって!まってえぇ!!!」
ユキナは涙目でさらに大きく叫んだ。
叫んでる内に視点はほぼ真下に。
当然だが重力は仕事をする。
安全装置なんて有るわけのない彼の手の上にいる少女は富士○山頂より高い所から……
落ちる
「ふぎゃぁぁああああああ!!!!!!!???」
私は地球のぬくぬくした二次文化の満喫できる素晴らしい現代社会から、文明力よわよわなド田舎の村に生まれ変わったんです。
ド田舎で可愛いだけの村長の娘に転生なんて不幸な転生です。村長の娘だからって特に特別な待遇とかも無いですし。というか前の知識があるせいで可笑しい扱いでハブられてむしろマイナスですよ。両親や弟とか家族からすら若干疎外されてますし。美少女やぞチヤホヤしろや、って思いますよね!
村一番の美少女(不人気)
なんでや。
折角転生したのになんのチート(特別)もない
体力だけは無駄にある
なんて不幸と思った下には更なる不幸はあったんです。私はなんで気付かなかったんでしょうね。巨大な証拠が村の目の前にあったのに、いやお爺ちゃんが教えるの遅かったせいですよ。
生まれ変わって13年にして気づきました。
なんで気付かなかったのか自分の目の節穴具合が恐ろしい。
えぇ私の生まれ変わったド田舎の村なんですが、傍に大きな山があったんです。とても切り立っていて険しそうな山で天辺が雲に掛かってぐらい高いんです。村での呼び名は……禁断の山でした。
禁断の山……結構有りそうな名称ですよね。
名前も考えてない手抜きみたいな
まぁそれは置いとくとして、セリフィア国、女神セリフィアさまの名前を冠した国。実は……それが私が生まれ変わる前にやってたゲームの国名と同じ。
ゲームでのその女神さまの名前を冠した町なんですが、ゲームの冒険初期の国なんです。
まぁ初期で勿論序盤で一番難易度が低いところなんですが、初期の場所に最強の敵がいるみたいなお約束がゲームだと結構ありますよね。
裏ボスとして居る最強無敵な魔神の封印された山があったんです。公式で最強設定の魔神の封印された山がです。そして魔神が封印された山が……禁断の山と呼ばれてました。
ゲームだとその山の近くには湖ぐらいでフウサの村は無かったですが……湖の底に廃村はありました。
主人公が湖の底の村に行くと、魔神の力の影響かこの世から離れられない魂だけが漂う不気味な廃村。廃村になった理由は魂が魔神を崇拝する邪教の仕業だったと語るんです。邪教が魔神の力を高める生け贄にするのに盗賊を村に呼び寄せて滅んだと
どう考えてもこの村としか思えませんね!!
違うなんて希望?
禁断の山としか呼ばれてなくて村では魔神の事とか一言も聞いたことがなかったんです。だから違うと思ってました。思いたかったですよ。
お爺ちゃんは私が13になると禁断の山に魔神が封印されている事を教えてくれやがりましたよ。村長一族だけ言い伝えられてるとか言って
その情報で完全に点と点が繋がりましたよ……
私の産まれたのはゲームであった廃村。とんでもない偶然なんて事がない限り。
つまり……この村滅んじゃうんです!と、思いましたが、所詮はゲームの設定です。もし仮にゲームと同じでも盗賊が村を滅ぼした時期が不明で自分が話じゃ死んだ後の話かもしれませんよね!
はいはい現実逃避ですよ。
ここまで偶然が揃ってて最悪な所だけ違うなんてあったほうが驚きですよね。
一月後に村に怪しげな人達が入って来ました。こんな村に来る初めて見た人たち、特産品とか観光するような場所なんて有りませんよ?あるのは禁断の山ぐらい。
どう考えてもゲームの(廃)村になる兆しとしか思えませんねぇ。
危険だと襲われるとお爺ちゃんに伝えましたが……アホを見る目で宥められました。何度も言いましたが無駄でした。信頼度が低いの悲しい。
聞けば怪しい人たちは魔法協会の学者さんたち、危険な実験をするから辺境に来ただけ……魔法協会とか最悪じゃないですかーー!!
と、ゲームの知識でそう断言できるぐらいに魔法協会はアウトでした。余計にヤバイとしか思えません。
けどおじいちゃんとか村の人は私の話を聞いてくれません。
仕方ないので保存が効く食料などを持てるだけ持って村を離れましたよ。え?他の人を見捨てた?ちゃんと忠告しました。私悪くない。
ギリギリでした……盗賊の人達らしいのが来たのを遠くから目撃したんです。
それから、私だけ逃げようか真剣に悩みましたが、逃げるなんて真似はできませんね!!……後で魂に私だけ逃げたと言われる廃村とか残るのは嫌ですし。冷静に考えると一人で逃げても行き先が有りませんし。
助けようにも、私に助けるなんて力はありません。救援を求めようにもダメですし。
なので意を決して山に入り登りました。魔神が復活する前ならゲームでは居ない守護をしている天使も居て、魔神復活の阻止に盗賊を倒してくれると思いましたので。ゲームでの天使はあれでしたが、理由が理由なので助けてくれますよね。
遥か天辺の見えない山を見て早速諦める気分になりましたが。山を登りました。
山は険しいですが魔物とか出ません。
ゲームでも同じでした。魔物エンカウトの無いゲームだと塩な道中。ゲームだとくそつまらない所でしたが、戦闘力とか皆無なので助かりました。しかしゲームだと探索しても頂上まで一時間もしない距離でしたが、長い。
まぁ山を一時間で登れるとかありませんよね。これでも無駄に体力だけはあるんでサクサク登ったのに頂上が高すぎです。
暗くなって流石に登るのは危険だと一晩山で野宿、夜に山から離れる彗星みたいな流れ星を見ました。一晩あけて頑張って登りまして、ようやく辿り着くと……其処には山に埋め込まれた様な神殿がありました。
ゲームでありがちですけど現実だと違和感が酷い。よくこんな山の上にビルみたいなのを建てられましたよね。
とにかく、ゲームでは半分が残骸に成ってた神殿が無事に有るんです。神殿の中には天使さまが居ると安堵しました!
天候はいつの間にか黒く澱んでいて雷も鳴っていて、神殿に近づくと寒気がしたのになんで安堵してたんでしょうね。
疲労のせいですね。それと天使さまに会えるという興奮のせいですか。
山に埋め込まれた門。
どう考えても普通に開けられたらダメな感じの門でしたが、半分ぐらい開いてました。
なんで戸締まりしてないのと疑問に思いましたが、神殿の中にはいると……
居ました。
とても天井が高い神殿なのに窮屈な感じですね。
全長はウン十メートル。
全身が金と黒の鎧を着てるよう。
背中には折り畳まれたドラゴンの様な羽。
角の生えた黄金の兜の様な頭部。
額には第三の目。
お顔は……鬼さん
首を傾げてなにかを考えてますね。
よし逃げましょう。
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