第一章エピローグ2
翌日――
街の片付けをあらかた終えた私たちは、お城の屋上へ集まっていた。
「ふむ、すっきりしたのう。悪くない感じじゃ」
エクレアが街を見下ろしながら、うんうんと頷く。
「どう、メリーさん。自分で街を綺麗にした気分は」
「……良くわからん。綺麗にして何がしたいんだ」
「住人たちが住みやすい街を作る為の下準備よ。メリーさんだって、自分の部屋にでっかい岩が置いてあったらどかすでしょう」
「それは……まあそうだな」
よしよし、ちょっと大げさに例えた方が伝わるみたいだ。
それでもメリーさんは不思議そうに街に目を向けている。今まで自分で何かを作る、なんてことをしてこなかっただろうから、まだ理解するのに時間がかかるのかもしれない。でも、言葉が通じて、一応考えてくれてはいるみたいだから、少しずつ理解してくれるようになると信じたい。
「してレイナよ。次は何をしたらよいかのう」
「うん、それなんだけど、何をするにしても、まずはマナを溜め込んだ宝石ってのが必要だから、それを発掘しないとダメよね。それで、そっちをやっている間に、一度王都に行こうかと思っているの。せっかくウィールさんに鱗を貰ったし、あれがあれば王都へ入れると思うから、色々と情報収集をしたいなって」
「ううむ、そうじゃな。レイナを人間の街へ行かせるのは不安なのじゃが」
「何言ってるの。元々こっちの人たちに召喚されたんだから、危険は何もないでしょ」
「そうではなくてじゃな」
エクレアが私の服の裾をぎゅっと掴む。
「エクレアは、レイナが人間の街へ行ったきり戻ってこないんじゃないかと心配している」
「ああ――」
ミレーヌちゃんの言う言葉に、エクレアは小さく頷く。
「あらあら、エクレアって寂しがり屋さんだったのね」
「何を言うのじゃ」
サリアさんがからかうと、エクレアは頬を膨らませた。
「大丈夫だって。正直あっちもこっちも大して変わらないし。スマホの充電が出来る分こっちの方が私にとってはいい環境だから」
「うむうむそうじゃろう、そうじゃろう」
電化製品が一切無いのだから、住みやすいかどうかがとても重要になってくる。そりゃ王都は多少の娯楽があるのかもしれないけど、私を勇者として働かせようとしている以上、ずっと居続けるなんてことはできないし、それだったらエクレアの所に居た方が楽に決まっている。
「あっ、そうだ。折角だから、みんなで写真撮ろう」
「あれじゃな」
エクレアはもう既に知っているからしたり顔だ。
ミレーヌちゃんには写真を見せただけで、一緒に撮ったことはなかった。
サリアさんとティアとメリーさんはスマホの存在も知らなかったか。
ふっふっふ。それならばいっちょ驚かせてあげますか。
「みんなー、ちょっとこの辺りに集まって」
スマホのカメラを起動させながら、エクレアを中心に全員を呼び寄せる。
「一体何をするつもりだ」
「いいからいいから」
あからさまに警戒するティアやメリーさんの言うことは無視して、カメラを壁の上に石を使って固定する。角度はこれくらいでいいかな。
「いい? 私がはいチーズっていうと撮影できるから、私がいいわよって言うまで動かないでね」
「あれでエクレアたちの姿を取り込んだのね」
「そうよー、はい、集まれー」
ミレーヌちゃんとエクレアに腕を絡めて引っ張り寄せる。
わけもわからず他の三人が身を寄せてきた時に――
「はいチーズ」
カシャっと、音声認識でシャッターが下りる。
「はーい、いいわよー」
撮れた写真を確認すると、私以外はどこを見ているのって視線だし、みんな口は半開き出しで酷かったけど、いい記念になると思う。
みんなに写真を見せてあげると、それはもう驚いた表情をしてくれたのだった。
ひとまず第一章分はここまでです。
第二章は少し書き溜めてから投稿したいと思います。
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