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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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第一章エピローグ1

「まったく、どうしてあたしがこんなことをしなければならないのだ」


 ぶつくさと文句を言いながら、メリーさんが雑草を引き抜いて放り投げた。


「文句言わないで手を動かしてよね」


 メリジューヌさんが襲来してから数日が経ち、メリジューヌというのはちょっと言いにくかったので、メリーさんと呼ぶようになっていた。


 メリーさんの残した爪痕は大きく、城下街は致命的な打撃を受けるというようなことはなかったけど、中途半端に焼けた家具や雑草の撤去にかなり時間がかかっていた。


 エクレアはこの機会にと、街に住んでいる亜人や魔物を集めて、この街をもっと発展させたいということを初めて伝えた。


 反応は様々だったけど、概ねエクレアの言うことに賛同してくれて、今は全住人で街の美化に取り組んでいるところだった。


 まずは緑に覆われてしまった街を綺麗にして、見た目を良くする。ついでに壊れた家具を――正直使える家具なんてほとんどなかったけど――雑草と一緒に一カ所に集めてまとめて処分することにしていた。


 雑草の引き抜きや、壊れた家具を家から出す作業はコボルトやウェアウルフといった小型の種族が担当し、サイクロプスや、ミノタウロスといった大型の種族がそれらを各地区の広場へ集める作業を担当していた。


 エクレアはお城で、サリアさんとおまけで付いてきたティアと一緒に、各種族たちの要望などを聞いている。


 そう、サリアさんたちエルフも、非公式ながら協力してくれることになったのだ。非公式というのは、まだエルフの長老さんたちを説得できていないからだ。街を発展させつつ、徐々に周辺にいるドワーフやノームたちにも街作りに協力を依頼していくというのが今後の予定だった。


「よし、この辺りはもう良さそうね。メリーさんやっちゃって」


「ちっ」


 舌打ちをしながらメリーさんは白炎を作り出し、集められた雑草等に向かって打ち出した。


 私たちはというと、ミレーヌちゃんとメリーさんの三人で街の見回りしながら、集められた雑草などを燃やしていくという作業をしていた。まあ、燃やすのはメリーさんの仕事で、私は都市計画というほどでもないけど、水路をどう張り巡らせたらいいのか、ミレーヌちゃんと相談しながら考えているのだけど。


「ほら、ここも燃やし尽くしたぞ」


 メリーさんがウンザリしたように言い放つ。


 朝からずっと移動と焼却を繰り返しているので、その気持ちはよくわかるけど、移動式焼却炉のメリーさんには頑張って貰わないといけないし、なにより街の住人たちに私の手足として働き、罪滅ぼしのようなことをしている姿を見せなければいけなかったので、申し訳ないけど「はい、ご苦労様」というわけにはいかない。


 ミレーヌちゃんは私の護衛とメリーさんのお目付役も兼ねていたけど、メリーさんはエクレアとミレーヌちゃんと、そして謎の力を使う私がいるところで暴れる気はないようで、大人しく従ってくれていた。


「一体後どれくらいあるんだ」


「うーん、そうねぇ。そこまで燃え広がっていない感じだから、明日くらいには終わるんじゃないかしら」


 ミレーヌちゃんの消火魔法のおかげで、火が付いた範囲は広かったものの、そこから燃え広がるということがあまりなかったので、想像していたよりも被害は少ない。


 怪我人も、さすがというかなんというか、亜人や魔物な人たちは、私の考えていたよりも丈夫なようで、酷い怪我をした、という人はほとんどいなかった。おかげで死者を出すこともなく、メリーさんに対しての恨みなんかも心配するほど向けられることはなかった。


「おまえたちのやろうとしていることが、全くもって分からん。こんな街捨て置いて、どこか人間の街でも奪えばいいだろう。何故自分たちで奴隷のようなことをしなければならない」


 メリーさんが後を付いてきながら不満を口にする。


「あのね、そんなことをしていったらますます人間に恨みを買うでしょう。一時的に奪えても、取り返しに来て戦いになったらどうするの」


「そうなったら、無論撃退すればいい」


「その結果街がぐちゃぐちゃになったら?」


「そうなったらまた別の街を奪えばいい」


「そんなことを何十回も繰り返して奪う街がなくなったら?」


「知らん」


 キッパリとメリーさんは言い放つ。


 聞いているこっちは頭が痛くなってくる。


「ちゃんとそこを考えないとダメよ。奪う街がなくなるってことは、全部の街がぐちゃぐちゃの状態ってことよ。じゃあそうなったら誰が街を直すのよ」


「知らん」


「はあああああぁっ」


 盛大にため息を付いた。


 何度か同じ議論をしたけど、ある一定の所までいくと「知らん」としか言わないのだ。


「無理無理。メリジューヌ程度じゃ先を見通す力なんてない」


 ミレーヌちゃんが無表情で言い放つ。もうミレーヌちゃんにとっては、メリーさんの言うことはわかりきっているのだろう。


「失礼な。あたしを馬鹿にして貰っては困る。五冥竜三番手のあたしを舐めるな」


「いや、舐めたくもなるわよ。ミレーヌちゃん、五冥竜の三番手ってのは賢い位置づけなの?」


「全然。たいした力はないけど、竜族の娘ならとりあえず入れて貰える程度のもの」


「コネってやつね」


 魔王軍にもそういうのがあるんだ。


「じゃあ、メリーさんいい?」


「なんだ?」


「世界中の街がめちゃくちゃになってます。人も魔物もメリーさん以外いなくなってしまいました。メリーさんはこの街を綺麗にしたいと思っています。メリーさん以外に街を綺麗に出来る人がいるでしょうか」


「あたしは別に綺麗にしなくていいぞ」


「はああああああああっ」


 これは重傷だ。意識を変えるところからはじめないとダメか。


「わかった。とりあえず今は私の言うこと聞いてくれる? 聞いてくれないとエクレアとミレーヌちゃんにお仕置きして貰って、さらに私が命令しちゃうわよ」


「くっ、卑怯だぞ」


「卑怯で結構。お返事は?」


「くっ、わかった」


「うん、よしよし」


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