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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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レイナ覚醒?2

「よかった」


 街は、酷い有様だけど、崩れ落ちるようなことはなさそうだ。


「これ、火傷とかも治ったりするの?」


「そこまでの性能は組み込んでいない。治療が必要な者がいたら、どこか一カ所に集めておいて。まとめて治してあげる」


「ありがとう、ミレーヌちゃん」


 治療魔法ってやっぱり便利よね。


「下の方はこれでいいとして、エクレア、あれはどうするの?」


 ミレーヌちゃんが、虫の息になっているメリジューヌさんに視線を向ける。

「そうじゃな……」


 エクレアはレプリカントを鞘に仕舞って「ふむ」と呟いた。


「妾の街を焼いた罪は重い。いっそここで首を刎ねてもよいのじゃが」


「ダメよそんなの」


 慌ててエクレアとメリジューヌさんの間に入る。


「メリジューヌさんのしたことは許せないかもしれないけど、それはダメ。そんなことをしたらエクレアの敵が増えちゃうわ。もちろんなんらかの形で怪我をした人への罪は償って欲しいけど、それだけはダメよ」


「レイナは優しいのう。仕方ない。首を刎ねるのは無しにしてやるのじゃ」


 エクレアは初めから本気で言っていたわけではなかったようで、あっさりと私の言うことを聞いてくれた。


「首は刎ねぬがこのままにするわけにもいかぬ。レイナは罪は償わなければならぬと言ったな。では、レイナにこの者の処分を一任するのじゃ」


「ええっ?」


「こやつを止めたのはレイナじゃ。あのとき、レイナが何かをした。そうじゃろう?」


「そ、それはそうな気がするんだけど……」


 それは間違いないと思う。自分でも不思議だったけど、あのとき、確かに私が何かをしたのだ。内側から言葉が溢れて――


「ならば、勝ったのはレイナじゃ。レイナがこの者を好きに扱えばいいのじゃ」


「そんな物みたいに……」


「そもそも、こやつは昔から何かと妾に噛みついてきおってのう。ことあるごとに勝負をふっかけてきて鬱陶しかったのじゃ。父上の……ザッハディールの侍従なのにやたらと妾を敵視しておってのう」


「侍従って、使用人とかメイドとかそういう感じのアレ?」


「うむ、それじゃな」


「えーっ、じゃあ五冥竜とか言っていたのは?」


「ザッハディールの身の回りの世話をする、五人の竜人という意味じゃな」


「五人のドラゴンメイドじゃんっ!」


 なんだそりゃ。全然戦闘要員でもなんでもないじゃん。


「それじゃあ四魔天爪は?」


「それは魔王軍の幹部じゃな。ザッハディールの爪となり得る者たちという意味じゃ」


「そっちはちゃんと強い人たちなんだ」


 さすがにメイドさんから、幹部クラスに下克上は無理があるだろうに。


「話しをするのもいいけど、そろそろ呼吸が止まりそうだけどどうする?」


 メリジューヌさんを仰向けに転がして、ミレーヌちゃんが至極冷静に言う。


「ダメダメ、早く治してあげて」


「わかった」


 ミレーヌちゃんが回復魔法を使っている間に、メリジューヌさんの扱いを考えないと。……このまま返してもいいんだけど、また襲ってこないともかぎらないしなぁ。できれば、エクレアのやろうとしていることを理解して欲しいんだけど。


 そう考えている間に治癒は終わったようで、メリジューヌさんが小さなうめき声と共に薄目を開けた。


「メリジューヌよ、気がついたか?」


「うう……え、エレクトゥリアス……」


「うむ、意識はちゃんとしておるようじゃな。ならば、自分が負けたことも分かっておるであろうな」


「くっ」


 メリジューヌさんが悔しそうに唇を噛みしめる。


「くっくっくっ。悔しかろう。さらに良いことを教えてやろう。お主は妾に負けたのではない。妾の最愛の友であるレイナに負けたのじゃ。自分が何をされたのか覚えておるか?」


「な、何?」


 メリジューヌさんが私を見上げる。


「なっ、こいつ、やはり人間か? し、しかも普通の人間ではないっ」


「そうじゃ、レイナは人間の召喚した勇者じゃ。お主は勇者レイナの剣でも魔法でもなく、言葉をかけられただけで負けたのじゃ」


「言葉……だと?」


「レイナよ、先ほどのをもう一度やることは出来るかの?」


「ええっ、もう一度? うーん……」


 あれは正直どうやったか自分でもあまり分からないのだけど……。ただ、街のみんなを守らないといけないと思って――いや、違う。そうじゃなくて、その原因となったメリジューヌさんに直接働きかけたかったんだ。


 とにかくメリジューヌさんを止めたくて――私の言うことを聞かせたくて――命令したんだ。


 そう――こんな感じだっただろうか。意識を集中して言葉を紡ぐ――


「メリジューヌさん――」


「な、なんだ」


 メリジューヌさんの瞳を見つめる。メリジューヌさんの視線が、私と交錯する。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ぐうっ」


 突然、メリジューヌさんが胸のあたりを抑えて体を丸める。


「お、お前、あたしに何をした」


「ほう、なるほどのう」


 エクレアがニヤリと笑みを浮かべた。


「妾の真竜の(ドラゴニツク)命令(オーダー)に似ているのじゃ」


「何それ?」


「他者に自分の命令を効かせるための力じゃ」


「魔法なの?」


「魔法……とは少し違うのう。妾の雷撃器官のように、元々が持つ素質の類いじゃ。魔王たちが魔物を従えることが出来るのも、この力のおかげじゃな」


「ああ、前にそんなことを言っていたわね」


 魔物たちに命令して戦っているけど、いちいち指示を出さないといけないから効率が悪いとかなんとか。


「に、人間があたしに命令できるだとっ? そ、そんなばかなことがあってたまるか」


「そうは言っても、お主はレイナの命令に逆らうことが出来ないのじゃろう? 妾に攻撃してみるがいい」


「くっ、そ、それくらい」


 メリジューヌさんが爪を立てて、エクレアに振り下ろそうとするが、小刻みに痙攣するばかりで動くことが出来ないでいた。


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