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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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白炎のメリジューヌ

 エクレアの後を付いて屋上へ――


 扉を開けて外へ出ると、叫んでいた人の声がより一層耳に届いてくる。


「エレクトゥリアスーーー、エレっ」


 屋上へ出たその人が、エクレアの姿を見つけて舞い降りて来た。


 まあ、声の聞こえ方からだいたい分かっていたけど、その人は空を飛べる種族の少女だった。


「ようやく見つけたぞエレクトゥリアス」


 細く長い翼をはためかせて、その少女はエクレアの正面に降りてきた。


 この子も、なんだか竜族のように見える。


 角は細く短く、ねじれるようにして耳の上辺りから二本生えている。翼はエクレアの半分くらいの幅だろうか。長さは多分エクレアと同じくらいだと思うけど、幅がないせいで短く見える。節々がなんか刺々しい感じで、ちょっとあの羽の上では寝たくないな、なんて思ってしまう。


 尻尾もかなり細い。あれを見ていると、何故か寒気がするというか、失礼ながらうわーってなってしまう。うわーって。


 うん、なんか、蛇の尻尾をイメージしてしまうのよね。蛇苦手なのよねぇ。蜥蜴は何故か平気なんだけど。手足が付いてる差なのかしらね。


 服はやや露出の多い感じ、羽や尻尾があるからなのか、それとも自分の竜鱗に自信があるのか最低限の部位のみを革の鎧で覆っているだけだ。


 って、そんなことはどうでもよくて――


「何が見つけたじゃ。妾はずっとここにおるじゃろう」


「嘘だっ、この間来たときは貴様いなかったぞ」


「ああ、エルフの里へ行っていたときじゃな」


「ほらみろ、あたしの言うことが正しい」


「だからなんだというのじゃ」


「ふん、あたしの方が上だということだ」


 あの子、やたらとエクレアに突っかかるなぁ。


「それで、何用じゃメリジューヌよ」


 エクレアが翼をはためかせ、メリジューヌさんとやらの所まで浮いた。なんか、あまり浮かない表情、というかうんざりとした表情をしているように見えるのは気のせいだろうか。


「何用もくそもない。貴様ザッハディール様からの命はどうした。いつまで経っても報告にこないではないか。偵察程度の任務もこなせないのか」


「ああ」


 思い当たる節があるのか。エクレアはポンと手を叩いた。


「あれか。初めは一応人間の街でも見に行こうかと思っていたのじゃが、途中でどうでも良くなって忘れておったのじゃ。なにせ運命の出会いをしてしまったからのう」


 ちらりとエクレアが私に視線を向ける。


 ああ、あの泉で会ったときか。あのとき、エクレアは人間の街へ行こうとしていたのか。


「何をわからぬことを言っている。つまりは任務を放棄したということだな」


「ううむ、結果的にそうなるのう」


「ハハッ」


 メリジューヌさんが、嬉しそうに歪んだ微笑みを浮かべた。


「認めたな。それならば。五冥竜の名において貴様を処罰する。いかにザッハディール様の娘といえども、命に背いてただで済むと思うなよっ」


「命に背くも何も、別段魔王からの勅命と言うわけではなく、妾を大人しくさせるために言ってきたことじゃが、まあよい。それで、お主がただで済まさぬというわけじゃな?」


「そうだ。貴様を叩きつぶす大義名分が出来たのだ。ボロ布のようにしてザッハディール様の元へ連れ帰ってくれるわ。そうすれば、その功績を認められて、あたしが――あたしが四魔天爪となり、ザッハディール様の側近として働き、そして貴様よりも上の立場となって、今度はあたしが貴様に命令出来るようになるのだっ!」


 メリジューヌさんは感極まったのか、やや海老反りになりながら自分の世界に入り込んでいた。いやー、エクレアの傍にいる人たちって、基本みんな優しいからあそこまでイっちゃってる人は新鮮だわぁ。


「相変わらずお主はアホじゃのう。妾を連れ戻した程度で立場が上がるわけもなかろう。じゃがどうせ言っても聞かぬのじゃろう? いい加減お主らの戯れ言に付き合うのも飽きていた所じゃ。二度と妾の前に現れようなどと思わぬようにしてくれようぞ」


 エクレアの体から、パチパチという音と共に、青白い雷光がほとばしり始めた。雷撃器官が開いている状態になってるんだ。でもMLCは使っていない。


「お、面白い、受けて立ってやるっ。白炎のメリジューヌの力見せてやる」


 すでに、気圧されているように見えるけど、メリジューヌさんの周囲にも、自分で名乗ったとおりの白い炎が現れていた。あれも魔法じゃなくて、メリジューヌさんの特性なのだろう。


 多分メリジューヌさんも相当強いのだとは思う。でも、エクレアのあの余裕を見ていると力の差はかなりあるように思えるのだけど――


「では行くのじゃっ――と、レプリカントを持ってくるのを忘れてしまったのじゃ」


「隙ありっ!」


 エクレアが視線を外して、右手をにぎにぎした瞬間をメリジューヌさんは見逃さなかった。白炎を纏いながら、エクレアに襲い掛かる。


 鋭い爪がさらに伸びて、エクレアの首目掛けて振り下ろす。


 当たる寸前――エクレアは体を回転させてひらりと躱す。完全にメリジューヌさんの攻撃を見切っている気がする。やっぱりエクレアの方が強そうだ。


「レイナよ、すまぬがレプリカントを持ってきてくれぬか。あれを使って倒したいのじゃ」


「わ、わかったわ」


 レプリカントはエクレアのベッドの脇にあったはず。


「よそ見をするとは余裕があるじゃないかっ! って……んんっ?」


 お城の中へと戻るわたしの姿を見て、メリジューヌさんが大口を開けて目を見開いた気がしたのは気のせいだろうか。


「エレクトゥリアスっ、あれっ、あれっ――」


 メリジューヌさんがキーキーわめいていたけど、私が人間だってバレてしまったかな。まあ、エクレアが相手してくれるだろう。


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