私の女子力お見せします
それから数日はエクレアとお城に籠もって、街をどう変えていくかひたすらアイデアを出し合っていた。
インフラに関しては、かなり現実的なアイデアが固まってきていて、水を出すのも火を出すのも、電気を出すのも設置魔法の応用で出来るんじゃないかというのがエクレアの見解だった。
マナを溜め込んだ宝石に、水を出す術式と、その量を調整する術式の二つを刻み、使用者のマナに反応して魔法が発動するようにすれば、自由に水を出せるということらしい。ただし、使用者がマナを持っていることが前提なので、私のような普通の人が使えるようにするのは難しそうだ。
問題はそれだけではなく、各家庭でそれらを使えるようにするためには、マナを溜め込んだ宝石が大量に必要になってくるので、まずは宝石を掘らなくてはダメだった。
下水道を作ることと、宝石を掘ること、その二つを最優先にしてやらないと、魔法都市国家の第一歩が踏み出せない。細かい部分はミレーヌちゃんの意見も参考にしたほうがいいだろうけど、まずは下準備からというところだ。
その作業を誰にやって貰うのか、というようなことを考えていた時――
「エクレア、スマホの充電は上手く行っている?」
ミレーヌちゃんがエクレアのお城にやってきてくれた。
なんていいタイミング。
「おお、ミレーヌ。本当に来てくれるとは思わなかったぞ」
扉の前で出迎えて、エクレアはミレーヌちゃんに抱きつかんばかりに歓迎する。
「吹き飛んだ祠の再生も終わったし、新しい魔法を作ってきたから見せに来た」
「ほう、それは楽しみじゃな。妾たちもそろそろまたミレーヌに魔法のことで相談しに行こうと思っていたところだから、ちょうどよかったのじゃ」
「そう、随分と楽しそうね。何か進展があったということかしら?」
「まだ、具体的にどうというところまでは行っていないのじゃが、見通しは立ってきた感じじゃな。その為には人手もいるし、マナを溜め込んだ宝石を掘らねばならぬし、それに術式を刻まねばならぬしで、まあ大変じゃ」
「ふうん、その辺りの事、もっと詳しく聞きたいわ」
「むろん、聞いて貰わねば困るくらいじゃ。まずはインフラというのを整備せねばならぬらしくて――」
エクレアは、言葉が止まらないといった感じでミレーヌちゃんに熱く語りかけていた。だけど、扉の前で話し続けるのもあまりよろしくない。
「エクレア、エクレアっ。ミレーヌちゃんに座って貰ってから話したら? お茶菓子持ってきてあげるから」
私が呆れたように言うと、エクレアも気がついたようで、慌ててミレーヌちゃんを部屋の中に招き入れる。
「すまぬな、つい夢中になってしまったのじゃ。椅子に座ってくれ。家具も新調してみたのじゃ。この椅子などいいじゃろう? オークたちが木材の加工に長けておってな、今までは人間たちの使っていた物をそのまま使っておったが、妾が使うのに不便な物もあったのでな。まさかオークたちにあのような技術があるとは思わなかったのじゃ」
エクレアが今まで使っていた椅子というのは、かなり古い時代からあったもので、金属と木で作られていたから形は保っていたけど、かなりボロボロなのに加えて、エクレアみたいに立派な尻尾がある種族が座るのにはあまり適していなかったのだ。人間用なのかどうなのかわからないけど、背もたれと座面の間に数センチ程度の隙間があって、それがこちらの人が尻尾を垂らすスペースになっていたんじゃないかと思われた。
まあ、エクレアは自分の座る椅子の背もたれは壊して取っ払っていたのだけど。
そして、エクレアが新しく作らせた椅子というのは、初めから背もたれのないタイプのもので、尻尾を地面に付けて自重は支えられるし、羽は伸ばせるしで、こちらの形の方が快適ということだった。ついでに幅も広めで大型の種族の人が座っても大丈夫なくらいに余裕を持たせてある。
「ふうん、いいじゃない」
ミレーヌちゃんも気に入ったようで、椅子に座ると子供のように足をぶらぶらとさせていた。
そんな様子を見ながら私は台所へ向かい、ミレーヌちゃんにお茶とお菓子を用意しに行く。
お菓子なんて無いでしょ? なんて思ったら大間違い。
もうすでに作れるようになっているのよね、これが。
果物を乾燥させたのと、木の実と蜂蜜、油、塩、そして卵があればグラノーラクッキーもどきが出来てしまうのですよ。
どうよ、私って意外と女子力高いのよ。
お茶も、調味料の瓶を色々確かめていたら、お茶っ葉のようなものがあったので、布で漉してみたら意外と美味しく出来てしまったのだ。誰が持ってきてくれたのかはしらないけど、グッジョブである。
そういえば、卵は一番最初に食べたサイズの物じゃなくて、エクレアが近くに巣を作っている鳥から失敬してきたものを用意してくれた。最初の卵は美味しかったけど、もうしばらくは手に入らないらしい。
そんなわけで、お菓子はもう出来上がったのがあるので、お茶を用意してミレーヌちゃんの所へ持っていく。