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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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目指せ! 魔法都市国家!

 ウィールさんはしばらく戻ってくる気配がなかったので、仕方なく私とエクレアは巣を後にして、お城へ戻ることにした。


 帰る途中で果物を採って、それを食べながら今後の相談を始める。


「城下町はどうじゃった。どこから手を付ければ良くなりそうかのう」


「そうねぇ」


 城下町の様子や、住んでいた人たち? のことを思い出す。


「まずは、荒れ果てた感じをなくすために、雑草を刈って見た目を綺麗にすることから始めた方がいいわね。あれじゃまるで廃墟だもの。それから、街に住み着いている人たちに、どうしてここにいるのか聞いてみたらいいんじゃないかしら。安全だからって理由かもしれないし、住みやすいからって理由かもしれない。その理由によっては、街をもっと住みやすくするために、協力してもらうことができるんじゃないかしら」


「ふむ、あやつらの考えていることか。適当に好き勝手すごしているだけかと思っておったが、何か考えていることがあるかもしれぬということか」

「あとは、サイクロプスの人たちが壺とか作っていたけど、あーいう生産が出来る人が他にいないかも確かめた方がいいわね。街の為に働いてもらうことになっちゃうんだけど、エクレア一人じゃどうしたって人手が足りないのだから、街を発展させるために仕事の分担が必要だと思うわ。この街に住みたいのなら、街の為になることを何かやってもらうの。その代わりにエクレアは街の人の安全を保証したり、何か対価をあげたりして働いてもらうことに納得して貰うの」


「ううむ、なにやら難しい話になってきたのう」


 エクレアは眉間に皺を寄せて低く唸った。


「私の勝手な希望を言ってみていい?」


「むろん。その為にレイナに居て貰っているのじゃ。好きに言ってみて欲しいのじゃ」


「うん、ありがと。えっとね。私は、エクレアやミレーヌちゃんが魔法を自分たちで作っているのを見て、凄いって思ったの。さすが異世界ってね。だけど、その魔法をあまり生活の為に使っていないのが勿体ないとも思ったわ。戦いのためだけに使っているのが――まあ、こっちの人と戦っているんだから、戦いのための魔法が発達するのはわかるけど――それだけじゃ絶対に勿体ないって思うの。エクレアがこの世界で一番の文化を誇る世界を作りたいのなら、一歩先を行く必要があるんじゃないかしら」


「うむ、うむっ」


 エクレアが興奮してきたのか、尻尾をフリフリしながら身を乗り出してくる。


「私たちの世界でも、まずは軍事技術が発達して、それから一般家庭でも使えるような技術があれば、それを平和利用するってことがあるわ。つまりはその平和利用するっていう部分をいち早く行った方がいいと思うのよ。火は料理に使えるし、水は飲み水からお風呂まで幅広く使える。エクレアの雷は一番凄いわよ。これがあれば何でも出来るっていうくらい。スマホの充電だけじゃなく、街を照らす光を作ることが出来るわ。今は蝋燭とか使っているみたいだけど、電気に反応して光り輝く仕組みに変えていくの。いえ、もっと言うなら、魔法そのもので蝋燭の代わりになるようなものを作りたいわね。魔法って誰かの体内に刻むしか使う方法はないのかしら」


「術式を唱えるか、刻み込むか、今のところはそれが基本じゃな」


「うーん、例えば道具に魔法を刻むっていうのは出来ないの?」


「道具か。道具といっていいかわからぬが、宝石であれば出来ぬ事はない。宝石には大量のマナを貯える性質のものがあるのじゃ。それであれば、術者の体内に刻む代わりに宝石へ刻むことができるのじゃ。ただし、魔法を発動させるためには術者のマナが必要になってくるから、あまり使うことはないのじゃ」


「そっか、マナがないとダメなのね。まあそれくらいの条件はしょうがないか。結局そのマナってみんなが持っているわけじゃないのよね?」


「そうじゃな。妾たち竜族は生まれながらに大量のマナを持っておるが、他の者たちはそうではない。少量しか持たぬものもいれば、まったくマナを持たぬ者もいる。種族によっても違うし、個体差もかなりあるのじゃ」


「うーん、そうなると、誰でも簡単に魔法が使える街っていうのは作れないのかなぁ。なんか上手い方法がありそうな気がするんだけど」


「その辺りの事は、ミレーヌに聞けば何かわかるやもしれぬ」


「そうだね。まだ最初も最初だし、いきなり上手く行く方法なんてないわよね。また今度ミレーヌちゃんに相談しにいきましょ」


「うむ、うむっ。妾は興奮してきたのじゃ。妾の目指す世界が本当に実現するやもしれぬのじゃな」


「そうね、私も魔法都市国家って見てみたいわ」


「おおっ、なんじゃその格好いい響きは。魔法都市国家! くぅー、聞いているだけで鱗が逆立ってくるのじゃ」


 鳥肌が立つ、みたいな感じなんだろうか。エクレアの肌を触って確かめたくなってしまう。


「それじゃあ、もう少し整理してみましょう。まずは、誰でも使えるインフラを整えるのが最初の目標ね」


「インフラ?」


「要はさっき言っていた、火と水と電気を誰でも家庭で自由に使えるようにするってことね。多分、水が一番大変で、綺麗な水だけじゃなくて、料理で使った汁を捨てたり、ぶっちゃけトイレなんかの汚水を流したりするために、下水道を作らないといけないと思うのよ」


「下水道?」


「うん、地面の下に穴を掘って、各家庭と繋げて、海か――処理場があれば一番なんだけど、そこへ全部流せるようにするの。魔法でそういった汚水を簡単に処理できるのなら下水を作る必要もなくて、家庭でそのまま処理するっていうのができるんだけど。例えば水を消し去る魔法ってあるのかしら」


「ううむ、汚水の処理か。どうすればいいのか皆目見当もつかぬが、消し去るというのは難しいと思うのじゃ。水分を飛ばすということは出来ると思う。しかし、それ以外の物は残るじゃろう。その辺りに捨て置くというのは――」


「だーめ。それをやっちゃうと病気がはびこる元になるわ。エクレアは体が丈夫そうだから平気かもしれないけど、私や他の種族の人たちが感染症にかかって、みんな倒れるなんてことになるかもしれないんだから」


「それは困るのう」


「だからやっぱり一カ所に集めて、一気に処理する方法にしたほうがいいと思う。そのほうが効率もいいし、結局は手間が掛からなくなると思う。穴を掘るのが得意な人たちがいたら、お願いしてみましょう」


「うむ。ドワーフらに頼めばやってくれるやもしれぬ」


「下水道はなんとしてでも欲しいから、念入りに計画を立てましょう」


 なんだか考え出すと、あれもやりたいこれもやりたいとアイデアがあふれ出てきてしまう。私一人の力で出来る事なんて、そのうちの一つあるかないかだろうけど、魔法が私に夢を見させるのだ。


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