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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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女勇者レイナは水回りをなんとかしたいっ!

「ううむ、酷い目にあったのじゃ」


 エクレアがむくりと上半身を起こして、ボロボロの上着を破り捨てる。鎧も何もかも吹き飛んで、上半身にはもはや何も身につけていなかった。


「ちょっと、着替えとかあるの?」


「そのようなものはない。城へ戻るまではこのままじゃ」


 まあエクレアはそういうことに頓着しないとは思っていたけど、胸が露わな状態で平然としないで欲しい。


「ほら、タオルでも巻いておきなさいよ」


 バッグの中からフィエスタオルを取り出してエクレアの体に巻いてあげる。エクレアは意外と胸はある方だけど、華奢だからタオルだけでも余裕がある。巻いてあげながら、翼が肩甲骨あたりから生えているのを見れたのがちょっと新鮮だった。


 羽ってあーいう生え方してるのねぇ。面白いから今度じっくり触らせて貰おう。


「ふむ、悪くない」


 エクレアは羽を動かしながら、タオルだけ巻かれた状態に満足していた。


 ああっ、そんなに激しく動かしたら外れちゃう。なんて私の心配をよそに、エクレアは立ち上がる。


「最後の爆発は予定外であったが、当初の目的は果たせたし良しとするかのう。傷は回復したが、体力はごっそり削られたままじゃ。今日はこのまま城へ戻って休むことにするのじゃ」


「そうね、それがいいと思うわ。エクレアは大事な体(充電用)なんだから、無理をしちゃダメよ」


「レイナよ。妾のことを心配してくれるのじゃな。感激じゃ」


 エクレアが抱きついてくるのを受け止めて、頭をよしよしと撫でてあげる。


「ミレーヌよ。今日は助かったのじゃ」


「私も色々と魔法に対して見方が変わったから来てくれて良かった。またレイナにも話を聞いてみたいから、近いうちにエクレアの城へ行くことにする」


「うむ、いつでも歓迎するのじゃ。レイナよ。荷物は持ったかの」


「ええ、大丈夫よ」


「では帰るのじゃ」


 エクレアが私をお姫様抱っこして、翼をはためかせた。もうこうされるのも慣れたものである。


「またな、ミレーヌよ」


「ええ、また――」


 ミレーヌちゃんの返事を聞き終える前に、エクレアはどんどん上昇していった。


    ****


 空はすでに夕闇に覆われようとしていた。


 高層建造物のない世界では、空から地上が良く見渡せる。きっと、アマゾンとかを空から見たらこんな感じなのかなと思う。


 初めは、この何も生物のいなさそうな景色が怖かった。でも、今は少し違う。


 あの森の中に、エルフの里があって、水辺にはミレーヌちゃんが居て、何も無いと思っていた場所にも、ちゃんと誰かが居たりする。そう思うと、この景色がとても綺麗なものに思えてくるのだ。


「エクレア、今日は私がご飯作ってあげよっか」


「それは嬉しいのじゃが、干し肉と木の実と、あとは何があったかのう。たいした物はもう何もないから、明日あたり仕入れに行かねばと思っていた所じゃ」


「ええー、卵はないの?」


「ないのう」


「お芋とかは?」


「芋か。どこかにあった気がするのう」


「もう、食材はちゃんと管理しておかないと。冷蔵庫なんてないんでしょ?」


「冷蔵庫?」


「箱の中に入れておくと冷やしてくれる機械よ。それがあれば食材が腐りにくくなるの。ミレーヌちゃんは氷の部屋で保管しているみたいだけど、まあ、あんな感じの物を小さくして、各ご家庭でも使えるようにしたものよ」


「そのようなものがあるのか。それがあるとレイナは嬉しいか?」


「そうねぇ。もちろんあったほうがいいし、嬉しいわ。飲み物とか冷やしておけると最高よね」


「ふむぅ、ならばそれも魔法で再現できぬか、今度ミレーヌと相談してみることにしよう」


「いいわね。魔法を日常生活にどんどん使っていって欲しいわ。ただ――冷蔵庫もいいけど、本当はもっと先にやって欲しいこともあるのよね」


「ほう、それはなんじゃ?」


「それはね……」


 私は溜めに溜める。これは、ある意味スマホの充電よりも重要なことだと思っている。


 あれは……あれには慣れたくないのよ。


「あのね……トイレを――トイレをもっと快適にして欲しいのよーーーっ!」


 どうせエクレア以外聞いていないだろうから、大声で叫んだ。


「と、トイレ?」


「そうよ。だって、エクレアのお城にあるトイレって、元はこっちの人が作ったものかもしれないけど、酷いじゃない」


「酷い……のか?」


「だって、だって、あのトイレ。トイレっていうか、ただ小部屋の床に穴を空けて下に落としてるだけじゃないっ」


 そう、エクレアのお城のトイレは、なんと二階の端にある部屋に穴が空いているだけの物なのだ。穴の下はお城の外で、地面をかなり深く掘っていて、一応誰も入れなさそうな造りになっていたけど、そこへ落とすだけ! つまりはもの凄いボットン便所なのよっ!


 いやだ、大自然に自分の排泄物を空からダイブさせるなんて耐えられない。

 拭く物はなんか柔らかい葉っぱが用意されていて、それはぎりぎり我慢出来る。でも、出来れば水洗がいいのよ。


「あとね、あとね。お風呂もちゃんとしたものを作って欲しいわ」


「お風呂か、前に言っておったな」


「そう。水浴びもいいんだけど、寒くなってくるときつそうじゃない? 私たちの世界ではね、こう大きいお鍋みたいな湯船を作って、言葉通りお湯を入れてそこに浸かるのよ。温かいお湯に浸かると体の汚れも落ちやすくなるし、何より気持ちいいのよ」


「ううむ、温かい湯か。熱いのは苦手なのじゃが」


 エクレアはげんなりとした表情をする。爆発には耐えられるのに、お湯が苦手なんて面白い。こっちの世界ではまだお風呂の文化が根付いていないみたいだけど、これは絶対に実現させたいものだ。


「さすがにそこまで温度は上げないわよ。あくまでも適温ね。お風呂があれば外に水浴びに出かける手間も省けるし、何より裸を誰とも知らない人に見られる心配もなくなるのよ」


「妾も水浴びは嫌いではないし、城の中で似たようなことが出来るのであれば一考する価値はあるじゃろうな。しかし、レイナと一緒に水浴びできなくなるのは寂しいのじゃ。レイナの水浴びするあの姿は、妾にとって至高の価値のある芸術品のようなもの。あの美しい肉体に妾は魅了されたのじゃ。出来れば毎日でも見たいと思っているくらいじゃ」


「エクレアのスケベ」


 嘘偽りのないエクレアの欲望丸出しの言葉だったが、悪い気はしない。


「言っておくけど、お風呂だって別に一人だけで入ると決まっているわけじゃないわよ。二人で入れるくらいの物を作ってくれたらエクレアと一緒に入ってあげてもいいわ。そうすれば私の裸くらい、いつでも独占して見られるわよ」


 ちょっと餌をあげすぎているかなと思ったけど、お風呂は絶対に欲しいところなのでこれくらいはいいかな。


「ほう、それは魅力的なことじゃな」


 エクレアの喉がゴクリと鳴った。


 エクレアに限ってそんなことはしないと思うけど、襲われたら逃げられなさそうだなと少しだけ身の危険を感じた。


 いや、多少の犠牲は覚悟の上だ。


「お願いだから水回りは真っ先に手を入れて欲しいわ」


「ううむ、レイナの願いとあれば叶えてやりたいが。急にいくつもは無理じゃのう。どこから変えてゆくのか一度方向性を決めねばならぬな」


「うん、うん。しばらくは我慢するから、その辺りは早く現代技術に追いつけるように頑張りましょう」


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