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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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MLC発動

「終わった?」


 声を掛けると、エクレアがゆっくりとまぶたを上げた。


「うむ、妾の体内にまた一つの魔法が刻まれた。いつでも使えるぞ」


 ニヤリと、エクレアが笑みを浮かべる。


「じゃあ、じゃあ、早速!」


 これで充電が出来る。スマホが、私の心の拠り所が完全復活すれば、しばらくこの世界でも暮らしていける自信が付く。


「エクレア、お願い」


 スマホに充電器を差し、コンセントの部分をサッと差し出すと、エクレアが「うむ」と言って受け取った。


 そして、コンセントを左手で握りながら、空いた右手を宙に差し出す。


「マナよマナよ、妾の呼びかけに応えて発現せよ――MLC!」


 刹那、差し出していた手の平の先に、小さな魔方陣が現れた。その魔方陣の縁を、見たこともない文字がくるりと回っている。


「おおー、それがMLCね」


「うむ、してここからどうすれば良いのじゃ?」


 エクレアがミレーヌちゃんに視線を送る。


「そのまま手の平を回すように動かせば、エクレアの雷撃器官が徐々に解放されて、マナと反応していく」


「ほう、こうじゃな」


「あっ、ゆっくりお願いね。どれくらいの威力で充電出来るのかわからないんだから」


「心得ておる」


 心配は杞憂だったようだ。エクレアは充電にはたいした力は必要ないと学んでくれていた。


 ゆっくりとエクレアが右手を動かす。と同時に、エクレアの体からパチパチと音が鳴り始めた。エクレアの雷撃器官が解放されてマナと反応しているのだ。


 ほんのわずかに手を動かしたところで、エクレアは動きを止めた。


「これくらいが昨夜やって見せた程度の力じゃと思う」


「おおっー!」


 エクレアの言うとおり、スマホに充電のマークが点灯していた。


「きたわぁ。やったわエクレアっ」


 思わず抱きつくと、


「いたっ、いたたたたっ」


 エクレアの放つ電撃が私を痺れさせた。


「痛いぃっ。でも嬉しいわっ」


 やったわ。これでもう私に怖い物はなし。文明の利器をいつでも使えるのよっ。


「ありがとうエクレア。ありがとうミレーヌちゃん。私はこの世界で元気に生きるわ」


「うむ、レイナが満足してくれて妾も嬉しいぞ」


「帰ったらいっぱい触らせてあげるからね」


 イヤー良かった良かった。これはエクレアの方に付いてきて正解だったわ。こっちの人たちはまだ電気なんて使ってなかったし、雷の魔法は使えるのかもしれないけど、自前発電じゃないと調整難しそうだしなぁ。


「ちなみに、最大まで解放すると割と凄いことになると思う」


 ふいにミレーヌちゃんが物騒なことを呟く。


「よし、やってみよう」


 それに、躊躇無くエクレアは応えた。


「レイナは私の後ろに隠れていて」


「わ、わかったわ」


 スマホと充電器をエクレアから受け取って、ミレーヌちゃんの背後でしゃがみ込んだ。


「我が内に秘められしマナよ。我が呼びかけに応えよ。アクアシルト!」


 ミレーヌちゃんが魔法を使うと、私たちの目の前に分厚い水の壁が出現した。こんな防護壁を出さないとダメなくらいとんでもないことが起きるのだろうか……。


「いいの」


「うむ、ではゆくのじゃ」


 エクレアがMLCの魔方陣を躊躇いもなく一気にひねり回した。瞬間っ――

 耳をつんざく凄まじい爆発音と共に、全てが吹き飛んだ。部屋の壁も天上も、なにもかも――


「なんっ――」


 水の壁越しにでも爆発音と衝撃波がビリビリと伝わってくる。


 私は見ていた。エクレアがまるで光りの塊のようになった瞬間を。雷どころではなく、光りそのものになっていたように思える。


 ボトボトと、吹き飛んだ祠の外壁やらの残骸が空から落ちてくるが、ミレーヌちゃんの水の壁によってそれらは防がれて私に当たることはなかった。


 砂煙が収まり視界が開けてくると――目の前でエクレアが地面に突っ伏して倒れ込んでいたのだった。


「わ、妾の体が吹き飛ぶかと思ったぞ」


 掠れ声でエクレアが呟く。


「普段は自分で力を無意識に抑えているけど、魔法で無理矢理限界まで使い切れるようになったから、それがエクレアの雷撃の最大値ね。外壁もろとも吹き飛ぶとは思わなかったけど、なかなかの威力だったわ」


「ぐぅ、嬉しいが、嬉しくない。はよう、回復魔法を掛けてくれ」


 エクレアは言葉は発することが出来るみたいだけど、指一本動かせないようだった。


「これ、ほぼほぼ自爆技ね」


 私は気の毒そうに呟く。


「充電から自爆まで、複数の効果が発動する魔法になったの」


「そんな解説いらぬから、はよう」


 うめくように言うエクレアの声がだんだんと小さくなってくる。


 割と本気で危ないようだ。


「ミレーヌちゃん、早く助けてあげて」


 もしエクレアが死にでもしたら、この世界で私を護ってくれる人がいなくなってしまう。さらにはスマホの充電も出来なくなったってなことになったら、もう生きていけないっ。


「竜族はこれくらいじゃ死なないから、焦らなくて良いの」


 そう言いつつも、ミレーヌちゃんは魔法を使い始めた。


「世界に満ちたる神秘たるマナよ、我が呼びかけに応えよ――アクアムース」


 ミレーヌちゃんのかざした両手の先に巨大な魔方陣が浮かび上がり、その中心から消化剤のような泡が吹き出した。泡は即座にエクレアの体を包み込むと、青い光りを放ち始めた。


 おおー、なんか消火訓練を思い出すわ。もしくはお皿洗いかしら。


 見ている間に、泡はすぐにシュワシュワと音を立てながら消えていく。


 泡が消えた後には、服こそボロボロになっているけど、肌には傷一つ無い姿のエクレアが居たのだった。


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