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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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充電用魔法を開発しましょう

「それじゃ、さくさく術の作成に取りかかる」


 ミレーヌちゃんが、部屋の隅にあった壺を一つ持ち上げると、その中身を一掴みして、少しずつ地面に落としていく。どうやら砂で地面に絵か文字を描こうとしているみたいだ。


「エクレアはちゃんと術式の勉強は続けている?」


「むろんじゃ。といいたいが、最近は新たに開発する魔法もなかったからのう。やや停滞気味じゃ」


「まあ仕方ないの。魔王軍の中じゃエクレアは異端だし、色々大変なのはわかる。魔王の説得も上手く行っていないみたいだし」


「あれはまったく妾の話を聞かぬ。もはやどうしていいか分からぬ」


「そうね。魔王軍の中にももう少し知恵のある者がいるといいのだけど、あれが魔王でいるうちは難しそう」


 ミレーヌちゃんがぶつぶつと言いながら、砂で魔方陣を描いていく。


「ま、あれのことはいいの。どうせ人間を制圧することなんて出来ないし、人間もわたしたちを滅ぼすことも出来ない。一進一退が続くだけ」


「うむ、なんと無意味な戦いじゃ」


 エクレアは、だいぶ魔王――お父さんに不満を持ってるなぁ。まあ実際にはエクレアの方が異端だから、お父さんにしてみれば娘が言うことを聞いてくれないって感じなんだろうけど。そう考えると普通の家庭っぽいけど、相手は人類全てを相手に戦っている魔王である。別世界の人間である私には、どっちが正しいかなんて判断が出来ない。ただエクレアと息が合うからエクレアと行動しようと決めただけだ。


「年がら年中戦ってばかりなのも不毛だけど、負けるのもそれはそれで私たちの命に関わるから難しいところ。ま、私も魔王の傍を離れた身だから手出しはしない」


 話しながらもミレーヌちゃんの手は止まらない。綺麗な六芒星を描いたところで一度手が止まる。


「さて、基本的には肉体制御系だけど、必要なのは何?」


「体内マナのコントロールじゃな」


「そう。真竜族の雷撃は使用者が意識を集中することで雷撃器官が反応して、雷を起こすもの。このあたりは感覚的なものだから制御は難しい。でも、実際には雷撃器官が反応すると同時に体内のマナも反応して雷撃の威力を上げているというのが私の研究結果。つまり、マナの反応度合いを制御すれば威力を抑えることが出来る。マナの反応を抑えるのは魔法の応用で簡単に出来る」


「ということは、単純にマナの活性を抑制する術式を加えれば良いのじゃな」


 エクレアが砂を手にして、魔方陣の一カ所に何かを描いていく。


「それでいいはずなのだけど、スマホのなんとかってのは、どれくらいの出力が必要なの?」


 ミレーヌちゃんが私の顔を見る。


「スマホの充電ねぇ。どのくらいって言われると、まぁ規格を見ればわかるんだけど……」


 バッグの中から充電器を取りだして、そこに書いてある仕様を見てみる。


「AC100V、5V/2.4A。って言ってわかる?」


 ふるふると、ミレーヌちゃんとエクレアが首を振る。


「なんだったかなぁ。とにかく100ボルトの――で、電圧だったかな。それが流れてくれればこの機械で充電出来る出力にしてくれるようなそうでないような」


「むむむ、つまりは特定の力じゃないとダメと」


「まあそうなるのかなぁ。とにかく大出力の電気が流れるのはNGなのよ」


「となると、抑制度合いを細かく変えた術をいくつか作ってみないとダメっぽい」


 ミレーヌちゃんが難しい顔をする。


「エクレア、さっき雷撃を抑えていた力はどれくらい?」


「どれくらいと言われても、全力の百分の一かもしれぬし、千分の一かもしれぬし、わからぬ」


「むー」


 正解が分かっていれば簡単なんだろうけど、エクレア自身でさえどれくらい力を抑えていたのか正確に判断出来ていないみたいなので、これは難航しそうだ。


 でも、別にこれって数字にする必要ってない気がするんだけどな。


「あのー、アイデアだけ言ってみていい?」


 魔法でそういうことが出来るのかどうかわからないので、控えめに手を上げる。


「なんでも言ってみるの」


「それじゃあ遠慮なく言っちゃうと、別にある一定の威力に限定して出力を抑えるっていうのじゃなくて、0%から100%までマナっていうやつの反応度合いを自由に変えられるようにすればいいんじゃないかな」


「というと?」


「つまりは、ボリュームみたいな感じで、こうねツマミをひねったり、ボリュームバーを上げ下げしたりして微調整出来るようにすればいいんじゃないかな」


「ボリュームバー……」


 ミレーヌちゃんの目が点になった。


「あああ、こういうやつよ」


 スマホの電源を入れて、音楽ソフトを立ち上げる。


「出たっ、スマホっ」


「あっ、妾も見るのじゃ」


 ミレーヌちゃんが素早く私の横にピタリと付くと同時に、エクレアも反対側に付いた。子供みたいに目を輝かせちゃって可愛らしいこと。


 私も初めてスマホを買って貰ったときは嬉しかったなぁ、なんてことを思い出してしまう。


「相変わらず不思議。なんでこんなに綺麗に絵が映るの? これだけでずっと見ていられる」


「難しいことは聞かないでっ。私はただの女子高生。最先端の技術は使いこなせるけど、仕組みまではわからないのよっ」


 くっ、少しは勉強しておけば良かった。でも、スマホの仕組み知ってる女子高生なんて1%以下でしょ。あー、説明して上げたい。ドヤ顔で説明出来たら、この二人の尊敬の眼差しは私が独り占め出来たのにぃ。


「まあ、詳しい仕組みは置いておいて、ボリュームというのはこれよ」


 の前に、ボリュームを変更して違いがわかるように、音楽の再生ボタンを押す。


 洞窟の中に突如として鳴り響くJPOP。自然の音響効果で嬉々とした高音ボイスがこだまする。


「はおっ」


「ピィっ」


 エクレアとミレーヌちゃんが、ビクンっと飛び跳ねた。


 さすがに、予告無しでJPOPを再生したのは意地悪だっただろうか。いや、正直ちょっとこういう反応を楽しみにしていた自分もいるのだけど。だって、この二人ってば、スマホだけであんなにもいい反応をしてくれるんだもの。もっと現代科学の粋を見せつけたくなるじゃない。


「あはは、ごめんごめん、驚かせちゃったかな」


 言いつつボリュームを下げて音を小さくする。


「な、なるほど」


「このなんかよくわからない歌がボリューム」


「いや、違うから。こっちよこっち」


 慌ててエクレアたちに見えるように、ちょっと大げさにボリュームを上げ下げする。


「分かる? 指を動かすと画面の中で青いバーが動いてるでしょ? それに合わせて歌が大きくなったり小さくなったりするじゃない? これがボリュームの効果よ」


『おおっ』


 二人が同時に感嘆する。


 エクレアの指がぷるぷる震えながらスマホの画面に近づいてくる。


「いいわよ、触っても。ほら、ここに指を置いて右にぐわって動かすと大きくなるし、左にシュパーっとやると歌が聞こえなくなるから」


 竜族の指ってスマホの操作できるのかしら、なんて思ったけど、どうやらそれは杞憂だったようだ。


 私がエクレアの手を握って使い方を教えて上げると、スマホはちゃんと反応してくれた。


「ほう、なんとっ。指一つで音を操れるとは。ううむ……」


「私も、私もやってみたいっ」


「はいはい、どうぞお好きに触って下さいな」


 スマホ大人気! さすが人類の叡智の結晶だ。


 ミレーヌちゃんにも手取り足取りスマホの触り方を教えて上げると、割とすぐに仕組みを理解してくれた。操作方法自体は単純な物ばかりだし、異世界の人でも直感的に理解できるようだ。すごいぞスマホ。


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