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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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ミレーヌちゃんは324歳です

 その予感は非常に正しかった。


「ごばぼばおぼあっぼば」


 水が、素っ裸の私とエクレアを包んで竜巻のごとく回転していた。しかも二つ。水竜巻(みずたつまき)は前後に行ったり来たり、周囲をぐるぐる回ったりしながら私たちをその水流に飲み込んで縦横無尽に動き回る。


 イメージ的には洗車機だと思う。自分で使ったことはないけど、あの左右からぐるぐるモップが回転して車を挟み込む。あんな感じ。


 なぜか水竜巻に巻き込まれても息は出来るけど、それでも時折水を飲み込んではむせ返す。


 ミレーヌちゃんがエクレアに言われて開発した魔法らしいけど、人間の身にはきつい。


「はい終わり」


 ミレーヌちゃんが指をパチンと鳴らすと、ようやく水竜巻が消える。


「がはぁっ」


 地面に膝を付き、荒く息を吐いた。


「し、死ぬわっ」


 確かに綺麗になったとは思うけど、いくらなんでも雑過ぎる。


「だ、大丈夫か? レイナ。妾はこれでいつも綺麗にしているのじゃが」


「……いや、技術は凄いと思う。ただ、これは体の丈夫な人用で、普通の女子高生の私にはきついわ」


 エクレアに支えられながら立ち上がる。


「元々は、人間が召喚したゴーレムなんかを削り飛ばす用に開発した魔法なの」


 ミレーヌちゃんが、立ち上がった私の膝を洗い流してくれる。


「そんなもの使われたら死ぬわっ」


 再び言い放った。


「レイナたちの世界では水浴びはどうしているのじゃ? エルフたちみたいにしておるのか?」


 エクレアが羽を羽ばたかせ風を巻き起こす。私のことを乾かそうとしてくれているらしい。なかなか快適だ。


「いやいや、私たちはね、シャワーかお風呂に入るのよ。シャワーは頭の上からお湯が適量降り注ぐ感じで、お風呂は箱の中にお湯を満たして、その中に入ってのんびり足を伸ばすの」


「お、お湯の中に入るのか? 熱湯か? 熱々なのか?」


 エクレアが顔を引きつらせた。


「何? エクレアはお湯が苦手なの?」


「苦手も何も、熱した湯に入ったら身が焼けてしまうではないか」


「あー」


 エクレアの体はひんやりしてたからなぁ。トカゲみたいな変温動物なのかしら。でも、別にお湯に入ったってなんともないと思うのだけど。


「多分、エクレアが想像しているような熱湯じゃないわ。私の体温と同じくらいの温度よ」


「レイナの体温と同じ?」


 エクレアは「ほう」っと呟いて、私の体に手を伸ばして胸を一掴みした。


「暖かいのじゃ」


「やると思ったわ」


 ビシッとエクレアの額にチョップをかまして下着を穿く。


「エレクトゥリアスに攻撃を加えるなんて、レイナ凄い」


「これは攻撃じゃなくてツッコミよ。敵意なんてないわ。それくらいエクレアだってわかっているわよ。っていうか、今のなんて叩かれる前提の行為でしょうに」


「エレクトゥリアス……エクレアはこういうことがしたかったの?」


「どういうことかはわからぬが、実に平和なやりとりじゃろう? 魔王の傍にいるあやつらにやってみよ、その場で殺し合いでも始まってしまう。いつも戦ってばかりおるから心に余裕がないのじゃ」


「わかるようでわからない」


 知り合いにもあまり理解されていないということは、エクレアのやろうとしていることは、結構大変なことなのかもしれない。まあ、これが戦国時代で、お殿様にチョップをしたらと思うと、ミレーヌちゃんの気持ちもなんとなくわかるかも……。


「よい、今はわからずとも、妾のやることを見ていればいずれ理解できるはずじゃ。ミレーヌであればそれを考えるだけの頭脳もあるじゃろう」


「当然。誰がエクレアに教育したと思っているの」


「えっ、もしかして、ミレーヌちゃんがエクレアの先生的なやつなの? 魔法の先生っていうだけじゃなくて、子供の頃からの?」


「そうじゃ。母上は教育なぞまったくしなかったからのう」


「仮にも竜族の姫君がアホのままじゃダメだと思ったから、私が色々教えて上げた」


「へぇ……。って、ミレーヌちゃんって何歳なのかなぁ……」


 聞くのが怖かったけど、興味の方が勝ってしまった。


「私は324歳くらい」


「ええーっ!」


 さすが竜族というところだった。


    ****


 ミレーヌちゃんの住んでいるという祠は、家具というのはほとんど無く、石を切り出してテーブルや椅子の形にしていた。藁を敷き詰めた場所が寝床で、食料は祠の奥に氷の部屋を作ってそこで保存しているらしかった。


「ミレーヌもいつまでもこのような場所で暮らさず、妾の城に移ってくれば良いものを」


「水がない場所は落ち着かない」


 水竜らしいミレーヌちゃんのこだわりがあるようだ。


「それで、なんの相談だったかしら」


 石の椅子に座り、ミレーヌちゃんがエクレアをジッと見つめる。


「うむ、それじゃ」


 ようやく本題に入れる。


「妾の出す雷撃があるじゃろう。あれの威力というか出力を極限まで落とす術式を作る手伝いをして欲しいのじゃ」


「出力を極限まで落とす? そんなことをしてどうするの?」


「レイナ、あれを見せてやるのじゃ」


「はいはい、スマホね」


 鞄からスマホと充電器を取り出し、ミレーヌちゃんに見せる。


「何これ。凄い綺麗に加工してある」


 興味津々と言った感じでミレーヌちゃんはスマホを凝視した。


「これが、今私たちの世界で一番便利で一番普及してるアイテムかな。電話したり、写真を撮ったり、ネットをしたり、音楽を聴いたり、漫画を読んだり。まあ色々と出来るんだけど、動かすためには電気の力が必要なの」


「電話? 写真? 初めて聞く言葉……」


「電話は無理だけど、写真はこの前エクレアと撮ったのがあるから見せて上げられるわよ」


 スマホを操作して、エクレアと撮った写真を呼び出す。


「ふあー、何これ。凄い……。えっ? これはどういう魔法?」


 ミレーヌちゃんがまるで幼女のように可愛らしい声をあげた。


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