表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
24/45

水竜・ミレーヌ登場

「ここじゃ」


 エクレアが空中で停止して、眼下を見下ろす。


 そこは、森の中に現れた広大な湖だった。恐ろしく透明度が高く、空中からでも湖底が見えるほどだった。


 エクレアがゆっくりと地上に降り立ち、湖畔で私のことを下ろすと辺りを見渡した。


「ミレーヌはおらぬか」


 エクレアが呼びかけてしばらく待つと、森の奥から一人の少女が姿を現わした。


「エレクトゥリアスじゃないの。また水浴びにでも来たのかしら?」


 少女というか。ほぼ幼女だった。見た目小学生くらいだけど、頭から細い巻き貝のような角を生やして、藍色の尻尾が背後に見え隠れしていた。背中の羽は綺麗な藍色にうっすらと紫色が所々に入っている。エクレアの羽が荒々しい感じを受けるのに対して、この子のは優雅な感じを受ける。


 見るからにエクレアと同じ竜族だ。


「それもあるが、他にも相談したいことがあるのじゃ」


「ふうん」


 ミレーヌちゃんがジト目で私のことを見る。


「人間だ。でも、この世界の人間じゃない。耳が丸い、角も尻尾も生えていない。ということは人間が召喚した勇者だ」


 突如、ミレーヌちゃんの周囲に水が現れ、激流のごとく周囲を回り始める。

 ミレーヌちゃんの瞳が赤く光り、水流がさらに速度を増し、まるでウォーターカッターのように細く鋭くなっていく。


「収めよ。レイナは確かに勇者じゃが妾の大切な人なのじゃ」


 エクレアが私の前に出て両手を広げる。


「エレクトゥリアス、操られている?」


「操られておらぬ。お主にも話したことがあるじゃろう。妾の理想とする世界を。それを実現するために、レイナは妾に力を貸してくれると言ってくれたのじゃ。見よ、このレプリカントを。レイナが人間の王から授けられた物を妾にくれたものじゃ。わざわざ自分の武器を敵にくれてやる勇者などおるまい」


「むぅー」


 ミレーヌちゃんはじーーーっと、私とエクレアを見比べて、そしてパチンと指を鳴らして水を霧散させた。


「一応信じる」


「全面的に信じて構わぬ」


「勇者――レイナはなぜエレクトゥリアスに協力するの?」


 ミレーヌちゃんが私にジト目を向ける。


「何故って言われても、勇者なんて興味ないし、戦うつもりもないし、エクレアが私が元の世界に帰れるように協力してくれるっていうから、その間私もエクレアに協力するってだけよ」


「変な勇者……」


「変かな」


「勇者は、竜族や魔物と戦い、人間の世界で崇められ、国を支配する存在。私たちと協力するメリットは何も無い」


「そんなことないよ。私はエクレアと会って数日程度だけど、エクレアは自分たちの世界を良くしたいって本気で思ってるのはよくわかったわ。ちょっと変態チックなところはあるけど、普通の女の子だし、お城に泊めてくれたし、食事も食べさせてくれたし、パンツも新しいの作って貰えるようにしてくれたし、正直こっちの世界の人よりもよっぽど話が通じるわよ。エクレア達って、別に異世界からこっちの世界を侵略しにきたとかそういうのじゃないんでしょ?」


「私たちは元からこの世界にいる」


「だったらどっちが正しいとか悪いとかないでしょ。ただの領土戦争してるってだけでしょ? ハッキリ言って、そんなのに巻き込まれて大迷惑なのよ。まったく、これっぽっちも興味ないの。だから、そういうことに興味が無いって公言するエクレアと一緒にいるのは自然なことだわ。幸い? エクレアは誰かが攻め込んできてもなんとか出来そうなくらい強そうだし、身の安全も確保できそうだもの。エクレアが私たちの文明に興味があって、そういう世界を目指したいって言うのなら協力してあげたくなるじゃない」


「ミレーヌよ、聞いたか? レイナは妾と同じで知性的で優しくて可愛いのじゃ。妾とレイナはもはや一心同体。切っても切れない仲なのじゃ」


 なんかほんのわずかな時間で、さらに私とエクレアの関係がランクアップしていた。


「じゃから、妾はレイナの為ならなんでもするのじゃ。ミレーヌのところへ来たのもその辺りの事で色々と聞きたいことがあったからなのじゃ」


「……わかったけど。人間の勇者がエレクトゥリアスと一緒にいるところを見る日が来るなんて思わなかった」


「妾の目指す世界に人も魔も竜もない。争いなど下らぬことはせず、ただひたすらに楽しき世界。それが理想じゃ」


「そんな世界を作るのは無理だと思う。でも、まあ、一人くらいそんなことを言う竜族がいてもいいと思う。今まではあまり本気にしてなかったけど、やれるところまでやってみたらいい」


「では、ミレーヌも協力してくれるのじゃな」


「可能な限りはしてあげる」


 ミレーヌちゃんは仕方ないと小さく微笑んだ。


「それじゃあ(ほこら)へ行きましょう。そこで話を聞いてあげる」


「ああ、その前に、あれをやって欲しいのじゃ。レイナはキレイ好きらしくての、せっかくじゃから、水浴びでキレイにしてやって欲しいのじゃ」


「わかった」


「えっ、何? 水浴びでキレイにって、その辺りの湖畔に入って自分で洗うってことじゃないの?」


「違うのじゃ」


 エクレアがニヤリと笑みを浮かべる。


「ミレーヌの水浴びは凄いのじゃ。全身キレイに丸洗い出来るのじゃ。エルフがやっていた水遊びとはわけが違うのじゃ」


「……なんか凄い嫌な予感がするんですけど」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ