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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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私のパンツを作って!

 サリアさんに案内され、エルフの里を歩いて行く。


 エルフの里は「自然と共に生きる」、を全力でやっている感じだけど、一応露天のような物はいくつか出ていた。ただ、どうやら物々交換で商売しているらしく、お金は使っていないようだった。


「ねえ、エルフの里は、エクレアの領地ってわけではないの?」


「領地の中にはあるが、妾には従っておらぬ、という感じじゃの」


「敵対しているってわけではないのよね?」


「わたしは敵だと思っているぞっ!」


「うむ、必要があればお互いを利用する関係じゃな」


 ティアの言葉は黙殺するとして、エルフの人たちは知性も美貌もあるし、エクレアの目指す街作りに協力して貰った方がいいと思う。お城へ戻ったらそのあたりのことも言ってみよう。


 私とエクレアは、エルフの人たちにジロジロと見られはするが、エクレアは何度も来ているみたいだし、危険を感じるということはなかった。


「ジャニス、入るわよ」


 サリアさんがとある一軒家の前で立ち止まり、中に向かって声を掛ける。そして返事も待たないまま勝手に入っていった。


 この辺りがエルフ流なのだろうか。田舎のおばあちゃんの家で、いつの間にか近所の人が入ってきて、野菜を置いていったりしていたのを思い出したのは内緒だ。


「あら、サリア。お客さんを引き連れてどうしたの?」


 ジャニスと呼ばれたエルフの女性も、これまた美人だ。長い前髪が左目を覆って、ちょっとアンニュイな雰囲気を醸し出している。エルフは本当に美人しかいないなぁ。ついでにスタイルもいい。ちょっとナルシスト入ってる系な気がしないでもないけど、それを差し引いても魅力的だ。


「エレクトゥリアスがパンツを作って欲しいそうよ」


「あら?」


「妾の物ではない。レイナのパンツを作って欲しいのじゃ」


「パンツって下半身に付けるアレでしょう?」


 少し嬉しそうにしながらジャニスさんは前髪をかき上げた。


「アレじゃ」


 なんか凄い会話してるな。自然主義のエルフにとってパンツはアレ扱いか。

「そっちの女の子はもしかして人間かしら? それにしては違和感が……んんっ? 耳がまん丸じゃない」


 ジャニスさんが目を輝かせて私の耳に熱い視線を送ってくる。この世界の住人は丸い耳に興奮する遺伝子でも持ってるのかしら。よっぽど丸い耳が珍しいみたいだ。


「どうじゃ、可愛いじゃろう。おまけに尻尾も生えておらぬのじゃぞ」


「あら、本当じゃない。素晴らしいわ」


 エクレアとジャニスさんが私のお尻を――


「って、勝手にスカートめくるなぁっ」


 慌ててスカートを押さえつける。こいつら自由だな。


「どうじゃ珍しいじゃろう」


「ええ、もの凄く珍しいわ。この子一体何なの? この世界の人間? 新種の生物?」


 ジャニスさんが首をひねる。


「まあ、正解じゃな。レイナは人間達が異世界から召喚した勇者じゃ」


「ゆ、ゆう……しゃ……?」


 ジャニスさんの顔が一瞬で引きつった。


 どうやらこの世界では、エルフは人間とあまり仲が良くなさそうだ。


「心配いらぬ。レイナは我らと戦ったりせぬ。その証拠に見よ、こんなにも愛らしい姿をしておるし、耳は丸いし、尻尾も生えておらぬ。武器の一つも持っておらぬじゃろう」


「た、確かにそうみたいね」


 最後の一文以外まったく関係なかったけど、まあいい。


「レイナは凄いぞ。妾たちの世界の遙か先を行く文明の世界から来たのじゃ。しばらくは妾の元に居て、妾の理想を実現する為に力を貸してくれると約束したのじゃ。じゃから、レイナのパンツを是が非にでも作って貰わねばならぬ」


「パンツとの繋がりが良くわからないけど、交換条件を出されたって事でいいのかしら」


「うむ。その通りじゃ」


 ジャニスさんの理解は早かった。


「あ、一応パンツ以外にも服も作って貰えると嬉しいなって」


 エクレアに任せたままにしておくと、パンツしか出来てこなさそうなので、すかさずフォーローを入れる。


「そぉねぇ」


 ジャニスさんは顎に手を当てて、小さく唸る。私のことを――主に制服に鋭い視線を送ってくる。


「それって、素材はなんでもいいのかしら」


「出来れば、肌触りがいい物だと嬉しいかな」


「うーん、ちょっといいかしら」


 そう言って、ジャニスさんが私の制服に触れて、素材を確かめ始めた。


「さっきもちょっと思ったのだけど、随分と繊細な布を使っているわよね。あのパンツ、なんというか、素材からして何か違う気がしたわ。――ほらやっぱり!」


 唐突にジャニスさんが私のスカートをめくり上げる。


「って、またかいっ」


 完全に油断してた。


「何これ、もの凄く触り心地がいいわ。これ、何から糸を作っているのかしら。いくら何でも細すぎないかしら」


「やめっ、やめえっ」


 押さえつけることなどお構いなしに、ジャニスさんがパンツをサワサワと触りまくってくる。


「こ、こりゃっ、それは妾の物じゃぞ、勝手に触るでない。妾もまだ一度しか触れておらぬというのに」


 エクレアまで参戦して、私の下半身は大惨事だ。


「やめいっ」


 容赦なく二人の頭に鉄拳を振り下ろす。まったくこいつらはっ。人のパンツをなんだと思っているのよ。


「ほら、しっしっ。元に戻る」


 手で振り払うと、ようやく大人しく離れてくれた。


「さすが勇者ね。魔王の娘にいともあっさり一発を入れるなんて」


 サリアさんがブルッと身震いをする。いや、こんなの二人とも叩かれること前提の行為だろうに。


「んで、出来るんですか?」


 もう疲れてきたのでちょっと投げヤリ気味に聞いた。


「品質が少し悪いのだったら出来るわ。私たちは植物から糸を作っているけど、あそこまで細かく編む技術はないから。あと、少し時間が掛かるわね。動物の皮を使えば縫い合わせるだけだから、今からでも出来るのだけど」


「うーん……まあ、履き心地が良ければなんでもいいです」


 同じ物っていうのはやっぱり無理か。代わりがあるだけマシと思うしかない。


「それじゃあ先ずは採寸しましょう。スカートをめくってくれるかしら」


「えっ?」


「だって、サイズが分からないと履き心地のいい物なんて作れないでしょう?」


「それはまあ、そうなんですけど」


「はいっ」


 ジャニスさんがメジャーのような物を手にして迫ってくる。


「いや、さすがにこれだけ人が居るとちょっと……」


「あー残念。せっかく腕によりを掛けて作ろうと思っていたのに、本人が協力してくれないんじゃ作るのなんて無理だわぁ」


「いやいや、みんなが居る前でスカートをめくり上げるのが嫌なのであって、エクレア達が外に行ってくれればいいんだけど」


「やだぁ、ジャニスこわあい。人間の勇者と二人きりになったら何をされるかわからないわ」


「うわー」


 このエルフの美人さん、なかなかいい性格をしている。


「うむ、その通りじゃのう。レイナが何かをするとは思わぬが、逆にジャニスに何かされるやもしれぬ。妾もこの場に居た方がよかろう」


「そうよね、エレクトゥリアスの知り合いだからって、人間の勇者とジャニスを二人にするのは不安だわ。私も残っていないと」


 サリアさんまで乗ってきた。


「そうだ! 森の番人として村に入った者を監視する役目がある」


 ティアまで参戦してきてしまった。


「って、あんた私にそこまで興味示してなかったでしょ」


「……いや、割と尻尾の生えていないお尻は良かった」


「……」


 この世界の住人はみんな性癖歪んでるのかしら。


「いいから出て行って。すぐ終わるんだから、何かあればその時入ってくればいいでしょう」


 かなり強引にジャニスさん以外を追い出すと、渋々とスカートをめくり上げたのだった。


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