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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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女勇者と魔王の娘はエルフの里へ行く

 あっという間にお城が小さくなり離れていく。お城は昨日はよく観察できなかったけど、周囲を雑木林に覆われ、まるで廃墟のようでもあった。手入れをする人がいないのだろう。お城の外で何か魔物のようなものが動いていたけど、もうその形は判別できなかった。街としての機能はまったくしていなさそうだし、エクレアの目指す世界というのは前途多難そうだ。


「ねえ、エルフの居る街? って遠いの?」


「なに、すぐに着く。あの森がそうじゃ」


 エクレアに促されて先のほうに視線を向けると、森の中から巨大な一本の木が突出している場所が見えた。あの場所がそうらしい。空を飛べば一直線。離れた場所でも意外なほど早く着いてしまう。


「そうよね、エルフって森に住んでいるイメージだったわ」


「あの木はエルフが長年掛けて育ててきた護り木じゃ。魔獣やエルフの加護のない者の侵入を防ぐ役割がある。エルフの森は現界と妖精界の中間に位置するよくわからぬ場所じゃな」


「それじゃあ、私たちも簡単には入れないんじゃないの?」


「うむ、エルフの番人に導いて貰わなくてはならぬな」


    ****


 エクレアが高度を落とし、巨大な木から少し離れた場所に降り立った。


「この辺りをうろうろしておれば、番人がこちらを見つけて接触してくるはずじゃ」


 と言い終わらないうちに、ヒュッという鋭い音と共に、エクレアの足下に矢が突き刺さった。


「ほれ来たのじゃ。これが番人じゃ」


――魔王の娘よ、一体何用だ。ついに我らが森を焼き払いに来たのか。


 森の番人のものと思われる言葉が、虚空に響き渡る。


 しかし、殷々(いんいん)と森に音が反射して、どこに言葉の主がいるのかわからない。


「そのようなことはせぬと言っておるじゃろう。今日はまたお主らに頼みたいことがあってやってきたのじゃ」


 エクレアはまったく動じていない。もう慣れっこということなのだろう。


――魔王の娘の言うことなど信用できない。そちらに連れている人間のようなものはなんだ。二人居れば私に勝てると思っているのか。


「レイナは妾の客人じゃ。そもそも妾一人のときですら勝てたことがなかろう」


――うるさいっ!


 エクレアが呆れたように言うと、複数の矢が再び降り注いだ。


「そこじゃな」


 エクレアがニヤリと笑みを浮かべる。


「レイナよそこで待っておれ。すぐにあやつを引きずり出してくれる」


 言い終わらないうちにエクレアが空へ駆けた。


「さあ、今日も遊んでやるのじゃ。負けを認めたら大人しくエルフの里へ案内するのじゃぞ」


「今日こそは貴様を地面に叩き落としてくれる!」


 エクレアが向かった先、巨大な木の陰に誰かの姿が一瞬見えた。木の枝から木の枝へ、曲芸師のような見事な体捌きで器用に渡り歩いていく。空中でくるりと回転したかと思うと、二度、三度と矢を放つ。


「おおー、凄い」


 思わず感嘆の声が出る。


 しかし――


「甘いのじゃ」


 エクレアはいとも簡単に矢をかわして、番人に迫っていく。


「甘いのはそっちだ。ドライアードよ、わたしに力を貸してくれっ」


 番人が枝の上で足を止め、叫びながら無数の矢を放つ。と、同時に地面から茨の蔦がエクレアめがけて襲い掛かった。


「ほう、ようやく精霊魔法を覚えたか。しかし、こちらも今日は素手ではないのじゃっ」


 エクレアが飛びながら背中の聖剣(レプリカ)を抜きはなった。


「レプリカントの試し斬りにしてくれようぞ」


 勝手に名付けられたレプリカントが、頭上から差し込む光を受け、ギラリと輝きを放つ。


 エクレアは空中で体勢を変えると、空中を蹴るようにして茨の蔦へと狙いを変えて急降下する。きりもみ状に回転を加えながら、レプリカントを目にも留まらぬ速さで振るった。


 襲い掛かろうとしていた茨の蔦の動きが一瞬で止まる。


 そして、茨の蔦から無数の光があふれ出したかと思った刹那――


 茨の蔦はバラバラに切り刻まれ、地面に力なく舞い落ちた。


 凄い。あの一瞬で何回斬ったのだろう。


「なかなか良い剣じゃ」


 地面に降り立ったエクレアは満足げに笑みを浮かべ、すぐさま番人のいる枝を目掛けて地面を蹴った。


「くっ」


 番人がやけくそ気味に矢を放つ。しかし、それら全てをエクレアはレプリカントで叩き落とし、すれ違いざまに番人の足場の枝を切り払った。


「くそっ」


 番人が枝を蹴るが、時既に遅し。


 落下を始めた枝から飛び上がることが出来ずに、空中に体を投げ出しただけだった。


「妾の勝ちじゃな」


 戻って来たエクレアが、落下を始めた番人の襟を掴むと、ゆっくりと降りてきたのだった。


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