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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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魔王の娘は平和を願う

「これも作ってみたいのう」


 クッキーをもっと食べたいのか、エクレアは名残惜しそうにクッキーの入っていた箱を見つめる。


「クッキーだったら、砂糖があれば簡単にできると思うわ。小麦粉があるのが一番だけど、こういう木の実をすり潰して土台にしてもいいしね。多分こっちの世界の人もクッキーくらい作ってるんじゃないかしら。馬みたいな動物もいるし、ミルクも何かから採ってるわよね」


「ほう、そんな簡単に作れるのじゃな。人間はちょっと前までは土をこねて遊んでいるだけじゃったと聞いていたが、あっという間に村を作り、街を作り、妾たちの文化を簡単に越えていきおった。人間の街中を実際に見たことはないが、レイナたちの世界と比べてどうじゃ? レイナたちの世界に近いのか?」


「うーん、どうだろ。私たちの世界には魔法ってないから、比べられるのかどうかはわからないけど、街の感じとかでいうと、私たちの時代より二、三百年前って感じたかなぁ。機械的な物が全然なかった気がしたし、武器で剣を寄越してくる辺り中世時代って感じよね」


「ふむ、では、こちらの人間も、二、三百年もあればレイナたちの世界に追いつけそうだと?」


「なんとも言えないけどね。可能性はあるんじゃないかしら。技術革新が起きれば一気に行くと思うわ」


 最後の焼き卵with干し肉を頂き、水を全部飲み干す。


「そうか。ならば尚のこと人間と張り合っても仕方なさそうじゃな」


 もう少し水が欲しいなと思っていたら、エクレアがさりげなく魔法で水を作ると、ペットボトルの中に器用に注いでくれた。


「便利っ! それよそれっ」


「な、なんじゃっ」


 突然大声を出してしまったせいで魔法が逸れて、水がテーブルの上を濡らす。


「私、その魔法って凄く便利な物だと思うわ。上手く使えばすぐにでも私たちの世界を越えられそうな気がする」


「そ、そうかの?」


「この世界の人たちは魔法を戦いの為にしか使ってないの?」


「詳しいことは知らぬが、概ね戦う為に使っておるじゃろうな。今出した水も、本来であれば敵に向かって撃ち出すものじゃ」


「勿体ないなぁ。生活を豊かにする為に使えばいいのに」


「まあ妾たちもそうじゃが、人間も全員が魔法を使えるというわけではないからのう」


「ああ、なるほど。限られた人しか使えないとなると、それはそれで不便になりそうね。機械だったら使い方さえ覚えちゃえば誰でも使えるからなぁ」


「いやしかし、レイナのアイデアは竜燐が剥がれる思いじゃ」


「何それ、こっちの世界の格言?」


 ぷぷぷっと、ちょっと笑ってしまう。


「レイナからアイデアを貰えば、妾の理想の世界を作れるのではないかと本当に思えてしまうのじゃ」


「まあ、アイデアだけならいくらでも出してあげるけどね」


 出して貰った卵も全て平らげ、ごちそうさまでしたと、エクレアにお礼を言う。


「レイナ、改めて言おう。妾に協力して欲しい。レイナの持つ知識が妾には必要じゃ。妾はこの街とも言えぬ街を、人間たちの街よりももっと発展させたい。争いだけの日々ではなく、もっと楽しく暮らせる世界にしたいのじゃ」


 エクレアが真剣な眼差しで私のことを見つめる。


 そんな真剣な目をされたら、茶化せなくなってしまう。


「エクレアは凄いね。私は自分の世界を自分で変えようなんて思ったことなかった。まあ、元々平和な世界だっていうのもあるけど。エクレアがこの世界を変えるって事は、平和な世界になるってことだし、そうなれば私も安全に暮らせるようになるってことよね。だったらもちろん協力するわよ」


「本当か?」


「うん。まあ女子高生の私に出来る事なんてたかがしれてると思うけど」


「そんなことはないぞ。レイナの世界の話を聞けるだけでも、妾にとっては何よりも有益なことじゃ」


「ま、そう言って貰えると私も楽でいいんだけど」


「無論、妾もレイナの為に力を貸すのじゃ。レイナが自分の世界に戻れる術を探すし、それまでこちらで不自由なく暮らせるように尽力しよう。おお、そうじゃ明日は早速エルフの元へ行きレイナのパンツを作ってくれるよう頼んでみよう。そうすればレイナのパンツは妾のものじゃ」


「それ、まだ諦めてなかったのね」


「当たり前じゃ」


 新しいパンツが貰えたらもちろん嬉しいけど、エクレアに渡す前にしっかり洗わないと……。


「レイナも他に何か欲しいものがあれば遠慮なく言うのじゃぞ」


「ありがと。とりあえず、欲しいものじゃないんだけど」


「なんじゃ?」


「ごめん、今日はちょっと限界だわ。もー眠くて」


 思えば昨日から重い物を持って歩いたり、神経尖らせながら野宿したりで、全然休めていない。それでも気を張っていたから大丈夫だったけど、エクレアのお城へ来て、ご飯を食べて、危険が無いとわかって緊張の糸が切れてしまったようだ。疲労が一気に押し寄せてきて、まぶたが自然と降りてきてしまう。


「それならば寝床へ案内しよう」


 そう言って、エクレアが再び私をお姫様抱っこする。


「あの、さすがに自分で歩いて行けるけど」


「気にするでない。妾がレイナを抱きたいのじゃ」


「ちょっ、それ変な意味に聞こえるんだけど」


「何がじゃ?」


「いや、何でも無い」


 まあ楽なことは楽だし、お姫様抱っこされるのは悪い気分じゃないからいいんだけどね。魔王の娘なのに、意外と優しくて反応に困ってしまう。


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