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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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竜族は卵生です

「レイナ―、持ってきたのじゃ」


 椅子に座ってうとうとしながらしばらく待っていると、エクレアが大きな木のお皿に、焼き卵(あえて目玉焼きと言わない)と、木の実と干し肉を満載させて戻って来た。


「おおー、ありがとうって、卵大きいわね」


 エクレアが持ってきた木のお皿は、両手で抱えるほどに大きく、そこに入れられていた焼き卵は、お皿全体に広がる程大きく、そして見るからに黄身が一つだけだった。どんだけでかい卵を使ったらこれだけの大きさになるのやら。ダチョウの卵とかそういうレベルだろうか。


 そのお皿をドンと木製のテーブルの上に置いて、エクレアは満足げに胸を反らす。


 木の実はそのままでも食べられそうだし、干し肉もベーコンみたいな感じで美味しそう。焼き卵は、かなり焦げてはいるけど、贅沢は言えない。エクレアが頑張って焼いてみた感がもの凄く伝わってくるのだ。


 ただ――


「あの、お箸は……ないか。フォーク辺りはないの? さすがにこの世界にもお皿があるくらいだから、そういう食器類があると思うのだけど」


「ああ、あれかのう」


 エクレアも、ちゃんとそれらに思い当たる節はあるらしい。


「やはり、あれらを使わないとダメかの?」


「うーん、木の実とかはいいけど、卵はねぇ。文化的な生活を目指しているなら、そういうことにも気を使った方がいいと思うわ。テーブルマナーというのがあるのよ。私も詳しくは知らないけど、さすがに全部手づかみはダメだと思うわ」


「ふむぅ。レイナが言うのなら明日にでも揃えてみるのじゃ」


「どこかに売ってるの? お店があるとか」


「そのようなものはここにはない。エルフたちに作らせるのじゃ」


「エルフ万能ね。その人たちを参考にしたらいいんじゃないの?」


「ううぬ、エルフは気難しいやつらが多いからのう。それにエルフも人間に比べればたいして発展しておらぬ。あやつらは森から滅多に出ぬからのう。妾の目指す世界は人間たちよりも上の世界じゃ」


「まああれよ、千里の道も一歩からってね。一気にやろうとしても無理でしょ。少しずつ改善していかなきゃ」


「わかってはおるがもどかしい。何より妾と志が同じ者がまったくおらぬ。魔王も幹部どもも、欲しければ奪えばいいという短絡的な思考しか出来ぬ。多少話の通じる者もいるが、自ら今を変えようとはせぬ」


「一人でやるのは無理よねぇ」


 ため息を付いて、そろそろ空腹の我慢も限界だったので、食事を頂くことにした。


 まずは木の実を数粒食べてみる。


「あら、結構いけるわね。味は付いてないけど、少し甘みを感じるわ」


「それはストレットの実とデックスの実じゃな。妾の好物じゃ」


 エクレアも木の実に手を伸ばしてポリポリと頬張る。


「この干し肉はなんの動物のなの?」


 見た目、燻製ベーコンの干し肉を手に取り持ち上げる。美味しそうではあるけど、変な動物の肉だったらいやだなぁ。


「それはユニコンの肉じゃな。妾が捕えてエルフの所へ持っていき、角は薬に肉はこうして加工して貰っておるのじゃ」


「エルフ有能すぎない? ってか、ユニコンってユニコーン? 処女好きな馬――いやウッマみたいな?」


「処女好き? そうなのかの? なるほど、じゃから簡単に仕留められるのか」


「ふうん」


 ついにやけてエクレアを見てしまう。


「なんじゃ、妾に見惚れておるのか」


「えぇ、いや別に。そうなんだって思って。ちょっと親近感湧くわ」


「処女であることに何かあるのかの?」


「いや、全然いいことだと思うわ。こっちの世界にも貞操観念があるみたいでちょっと安心しただけ」


「人間のように年がら年中発情しているわけではないからの」


「えっ、エクレアあれで発情してなかったの? 私のパンツの匂い嗅いで喜んでたのに」


「あれくらい普通の反応じゃろう。良い匂いを嗅いで惚けるくらい良くある事じゃ」


「良くあるのかなぁ。や、ご飯食べてるときにそういう話は止めましょう。お肉頂くわね」


 さすがに自分のパンツの匂いの話をされながら食べる気にはなれない。


「ユニコンの肉を食べた人って、私の世界にはいないだろうなぁ」


 気を取り直してユニコンの干し肉にかじりつく。


「あっ、ちゃんと味が付いてる。塩味だー」


 これは非情に美味しかった。噛み応えもあるし、味がぎゅっと凝縮されているような感じで食べていて満足度が高い。体に力が戻ってくる感じだ。


「エルフは良い仕事をする。レイナの世界の食事はどうなのじゃ?」


「そうねぇ。こういう木の実とかお肉をそのまま食べることもあるけど、もっとちゃんと料理するかな。単品で食べるんじゃなくて、他の食材と組み合わせて調理をするの」


「ほう、その辺りの事もいずれ聞きたいものじゃ。なんなら妾にも料理を教えてもらえると嬉しいのじゃ」


「私も美味しい料理が食べられるのなら歓迎するけど、こっちの世界の食材とか調味料とかそういうのがわからないとなんとも言えないけどね。まあ、たっしょーは料理に自信はあるから、そのうちやってみましょう」


「うむ」


 さてお次は焼き卵か。


「ねえ、この卵って直で焼いただけっぽい? 味とかついているのかしら」


「熱しただけじゃから味は付いておらぬのう」


「そっか、私目玉焼きには醤油派なのよね」


「醤油?」


「うん、まあそういう味を付けられる調味料があるのよ」


「どうやって作るのじゃ?」


「う……それはちょっとわからない。大豆……豆を使って何かするんだろうけど」


 ネットが繋がれば簡単に調べられるんだけど、この世界では無理だからなぁ。あっ、でも辞書は入ってるからそっちで調べられるかな。


「豆か。ノームが豆の扱いに長けていたような気はするのじゃが、今度聞いてみよう」


「調味料が増えるとご飯を食べる楽しみが増えるから、そういうのも欲しいところよね。まあお肉に味が付いているし、一緒に食べればいいのかな」


「うむ、妾はその卵は食べぬゆえ、レイナが全部食べておくれ」


「あら、そうなの?」


「それは苦手なのじゃ」


「へぇ」


 卵の種類で苦手とかあるのかしら。あー、でも鶏以外の卵だとうずらくらいしか食べたことないからなぁ。卵によってだいぶ味が違うなんていうこともあるのだろう。


「ところでこれ、なんの卵なの?」


「それか? それは珍しい種族の卵じゃ。かなりレアなはずじゃ。しかも滅多に採れぬ」


「へー?」


 少し違和感のあった答えだったけど、まあ何の卵でも見た目は普通だし、お腹はぺこぺこだからとりあえずは食べてみるのだけど。


 試しに白身の部分を手でちぎって少し食べると、いつも食べている鶏の卵とは確かに味が違った。ちょっとアクが強い感じだろうか。力強さを感じさせる味とも言える。醤油はもちろん、塩胡椒でもあれば美味しく頂けそう。


 今度はもう少し大きめにちぎって、干し肉で巻いて食べてみると、これがなかなかイケる。


「うん、美味しいわ。お肉と一緒に食べるとかなりイケるわよ。エクレアも食べたら?」


「いやいや、それほど気に入ってくれたのなら尚のことレイナに全部食べて欲しいのじゃ」


 エクレアは何故か嬉しそうにニコニコと微笑んだ。


「それなら遠慮なく頂くけど。あ、そうだわ」


 干し肉の塩味が意外と濃いのでそろそろ喉が渇いてきてしまう。何か飲み物が欲しいなと考えたところで、昼間に泉で水をペットボトルに入れていたことを思い出した。バッグの中から水を取りだし、ついでにクッキーの残りも取り出した。


「エクレアにこれあげる。残り数枚しかないけど、私たちの世界のお菓子よ」

「ほう?」


 エクレアは私のあげたクッキーを珍しそうに手に取ると、クンクンと匂いをかぎ始めた。


 エクレアはどうもすぐに匂いを嗅ぐ癖があるみたいだ。


 真竜族と言っていたから、人間にはない本能みたいなものなのだろうか。


「甘い匂いがするのう。この匂いも妾をトキメかせるのじゃ」


 エクレアは大口を開けて、クッキーを一枚放り込む。


「ほう、これは美味い」


「でっしょー」


 私のお気に入りのクッキーを気に入って貰えてちょっと嬉しい。


 エクレアは続けて残りのクッキーも全部ほおばり、満足げに目を細めたのだった。


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