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女勇者として召喚されたけど、やる気がないので魔王の娘に聖剣と○○をあげました。  作者: なよ
第一章、女勇者レイナと魔王の娘エクレアの日常
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女勇者はお腹が空きました

 お城の中はひんやりとしていて、比較的過ごしやすそうな気温をしていた。


 窓がなく、風通しがいいので熱気がこもらないというのがあるのだろう。ちょっと埃っぽいのはご愛敬かな。


「あー屋根があって雨に濡れることもない。魔物にも襲われる心配が無いって最高よね」


 野宿をしていた昨日のことを思えば、天と地ほどの差がある。


 室内は壁も床も石造りで無骨な感じだけど、装飾を施された木製の家具がいくつかあり、割と居心地は悪くない。エクレアが文化人らしくしようと思って揃えたのだろう。自分で作ったわけではないと思うけど、なかなかいいセンスをしていると思った。


「レイナから見て妾の部屋はどうじゃ」


「いい感じだと思うわよ。電化製品がないのはしょうがないけど、旅行でこういう部屋に泊まるのは全然ありだわ」


「そうかそうか。電化製品とはスマホのようなものかの?」


「ま、そんな感じのものかな。冷たい空気をだしたり、遠くの映像を映したり、音楽を鳴らしたりっていうような機械があるのよ」


「ふうむ。レイナの世界は妾の世界とはまったく違うのじゃな。冷気を放つ物くらいなら出せるのじゃがなぁ……」


 ふいに、エクレアの周囲がわずかに光り出した気がした。


「マナよマナよ、妾の呼びかけに応えて発現せよ――アイス・シルト!」


 そう言って、エクレアは目の前に氷の盾を作り出した。すると盾が放つ冷気が部屋中を巡り、クーラーを付けたような涼しさを感じた。


 って――


「いやいや、それ魔法でしょ? こっちの世界の方が凄いと思うけどなあ。私たちの世界で魔法使える人なんて誰もないわよ」


「レイナは使えぬのか? こちらの世界に召喚された勇者は皆魔法を使うと聞くぞ?」


「えっ、そうなの? うーん、そんなこと聞いてないし、使える感覚もないけど」


 エクレアの真似をして手の平に氷が出てくるイメージをしてみたけど、当然なんの反応もなかった。


「妾も勇者のことなぞ全く知らぬからのう。妾の魔法も人間の使う物とは性質が違う物じゃ。異世界から来た者は何か特別な方法で使っているのかもしれぬ」


「使えるものなら使ってみたいけど、それはそのうち調べればいいとして」


 どのみち戦うことを放棄した私に、魔法を使えるかどうかは重要ではない。


「それよりもね、その何か食べるものないかなって」


 思い返せばこちらに来てからクッキーを少し食べただけで、もう丸一日まともな食事を摂っていない。


 今まではテンパっていた部分が大きく、空腹を感じる余裕もなかったけど、こうして落ち着いてくると空腹と、そして眠気が襲ってくる。


「食事か。そうじゃな、今食べられるのは何があったかの。確か、木の実の備蓄はある」


「ナッツ類? いいんじゃない。カシューナッツとかマカデミアナッツって好きよ?」


「それと同じような物かはわからぬが、まぁ種類はそれなりにある。あとは干し肉と……ああ、そうじゃな、卵が一つあるにはあるが?」


「卵? もちろん食べるわよ。ああ、でも焼いて欲しいかな」


 生卵が嫌いなわけではないけど、こちらの世界の衛生面のことがわからないので、火を通した物の方が安全だろう。


「ふむ、卵を焼くのか。確か森のエルフたちがそんなことをしていた気がするのう」


「エクレアは焼かずに生のまま食べるの?」


「生のまま割って飲むこともあるし、手の平の上で熱を加えて固めることもあるのじゃ」


「おおー、やっぱ魔法って便利ね。料理に使えるなら私も使ってみたいわねぇ」


 マジカルクッキングかぁ。元の世界に戻ったときに魔法が使えてたら動画投稿サイトで一稼ぎできそう、なんて思ってしまう。


「素質自体はおそらくあるじゃろう。魔法が使いたいのならその辺りの事も一緒に探してみるのじゃ。とにかく食べられるようにして持ってくるので少し待つのじゃ」


「うん、お願いー」


 手を振ってエクレアを見送る。っていうか、エクレアが料理してくれるのかな。魔王の娘が作った料理を食べられるって、なかなか贅沢な身分だわ。


 まあ、卵を焼くだけなんだろうけどね。


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