第3話
今!俺はテロリストの剣を遠くに蹴り飛ばし、油断しているテロリストの首を締め上げた。よし、落ちた。しかし、気絶しただけだ。すぐこの場を離れなければ。
蹴飛ばした剣を取り戻し、奴隷の料理人に逃げるよう促す。
はぁ、はぁ。ここまでくれば目覚めて、追ってくることはないだろう。そもそもどこに行ったかもわからないだろうし。
で、この奴隷の料理人は一体、何者なんだろうか。流れで一緒に逃げてきたが。
とりあえず英語だろうか。と思っていたら。
「お前一体何者だ。なぜ助けてくれた?」
まさかの奴隷の方からの一言。まぁそうか。急に現れて、テロリスト締めたら、そうなるわ。
うん?ってかこいつ今普通に日本語だったよな。
「安心してほしい、まさか日本人だとは思わなかったが、それなら話ははやい、俺は佐々木グループ第25代総帥、佐々木景だ」
「助けたのは、そうだな、君は一流の料理人だとお見受けする。今、私はおそらく誘拐されここに連れてこられているんだが、帰った時何も成果がなければ、全くの損だし、掘り出し物の人材を見つけたから是非我がグループに誘おうと思ってね」
まぁ、本当は誘う気は無かったが、これだけの逸材だ、佐々木グループ傘下にはチェーン店から、高級割烹まで、いくらでも食品関係の仕事はある。彼なら、手からも分かるように、かなりの実務歴もありそうだ。最初から店舗を任せることもできるだろう。いい手土産だ。
がしかし、彼から飛び出てきたのは予想の斜め上をいく答えだった。
「日本人...?何を言っているんだお前は。俺は誇りあるサキア人だ。怪しいなお前。その服装、盗賊の類ではなさそうだが、見たことがない。これでも元宮廷料理人。いろんな文化圏の人間を見た事があるが、あまりにも変わっている」
サ、サキア?おかしい。そんな事はありえない。俺は日本が承認している195カ国はもちろん、地球上のほぼ全ての国の名前は頭に入ってる。が、サキアなんて聞いたことない。
と言うかこのスーツは見た目は一般的なスーツだぞ。かなり高いけど!これを見た事がないって、今の世でありえないだろ。
そういえばこいつ、ひどい服装だな。奴隷だからと思っていたが、よくよく見れば明らかに文化レベルの違いを感じる。
ま、まさか地球ではない?
いやそんなまさか。
とりあえず、落ち着いて状況を話してこの国の中枢まで行き着くしかないな。
「なるほど、それは失礼したよ。だが、本当に怪しいものではないんだ。とにかく俺はは自国では大きい組織の長でね、優秀な君をスカウトしたいと思っていただけなんだ、さらに言うと日本という母国に帰りたいんだ」
「そこで、この国の事、サキアと言ったかな?それと、中枢にはどうやっていくか教えてくれないか。もちろん、必ずお礼はしよう。こう見えても、お金は持っている。
それに、君が俺の部下になってくれたら、好待遇も約束しよう」
「サキアは滅んだのだ!憎きソーマ王国によって!奴らは大国だ。突然宣戦布告され、なす術なくサキアは踏みにじられた。王と王妃様は公開処刑に...さらに奴らは、まだ8歳であった王子すらも手にかけ、あろうことか5歳の王女様を売り飛ばしたのだ!
そして、我らサキア人はことごとく奴隷になり、毎日ひどい扱いを受けている」
だいぶ興奮して早口に言う。彼にとっては母国の事だ。本当の話なら気持ちはわかる。戦争か。世の中がどこまでいっても争いは消えないんだろうな。
「で、お前の部下に?ふ。笑わせるな。腕っ節と俺を一流と見極める目は持っているようだ、能力はあるのかも知れん。だが、信用はできん、得体も知れん国から来たやつの部下になぞなるか。まぁ助けてもらった礼に、この国の事と王都への行き方は教えてやるさ」
ソーマ王国。また訳の分からん国家じゃないか。まずいぞ。どうする。本当に地球じゃ無かったら。ってか地球じゃないって一体それはどこなんだ。
まぁいい、考えても仕方ないか。にしてもこの料理人、やっぱりかなりいいな。こいつの話が本当なら、口ぶりからするにかなり忠義に厚そうだ。まさに漢、職人っていう感じでまさに俺の好きなタイプだ。
やはりどうしても部下にしたいな。
勝負をかけるか。
俺は服の胸の部分のボタンを外し、見えた胸の中心にさっきのテロリストの剣の刃の先をそっと当てた....